なんだかおかしいぞ(2)
怪訝そうな顔をした、のじゃ神はこう言った。
「だから、お主は誰じゃ? マジで」
そんな馬鹿な。俺も転移者だと言うのに。
俺は、話に置いて行かれることを避けるべく、女神へ必死に説明した。
俺だってティアラと同じ日本から来た転移者であること。チュートリアル的なものをどうにかクリアしたこと。今着ているスケルトン・アーマーだって、ミッションクリア報酬で得たものであること。
全てを説明し終えた俺を待っていたのは、あまりにも無慈悲な回答であった。
女神は、俺の話を熱心に聞いてくれた。ティアラも一応『このおじさんも転移者らしいのです。話を聞いていた限り、NPCではなさそうです』と擁護してくれた(俺はおじさんじゃねえ)。
何かの端末を見ながら、表情をころころと変化させた女神は俺を一瞥。数秒置いてから、何とも言えない寂しげな表情を浮かべ、こう言った。
「お主は―――」
「マジのマジで、誰じゃ……?」
俺のアイデンティティが失われていくよぉ。
***
「つまり……お主は、手違いでこの異世界へやって来たと……?」
「『と……?』って聞かないでくださいよ。俺もびっくりですよ。何なんですかこれ」
「いや、わしも驚いてな……こんなこと2万年と少し生きて来た中で一度も無かったのじゃから……」
「2万!?」
―――とにかく。
どうやら俺は、本来この異世界へ来る予定の人間ではなかったらしい。
ここにいる『魔法使い』のティアラと、あと二人のゲームテスターが転移者として登録されており、それぞれが期間を開けて転移させられた……と。
なるほど、手違いで連れてこられた俺には、正規ゲームテスターならあるはずの『ジョブ』の概念がなかったのも頷ける。
―――ティアラには、このまま『ゲームテスター』としての冒険を続けてもらうらしい(ゲームクリアした時点で、日本にあるティアラの口座にとんでもない額を女神名義で振り込むことを条件としたティアラは、なかなかやり手だ)。
そして、不運にも巻き込まれる形で転移することとなった一般人の俺には、慈悲として二つの選択肢―――見知ったポップアップが表示された。
一つ、ここで全ての記憶を消去され、元の世界へ帰還する―――普通に考えれば、こっちを選ぶのが妥当だ。そうすれば、直ちに推しアイドルの綺羅羅ちゃんのもとへ帰れる。ライブにも間に合う。
二つ、女神から『無慈悲な強制異世界転移』に対して妥当とされる『アイテム』を譲り受け、異世界の攻略を続ける。この場合、ゲームをクリアした際にはティアラと同じく『物凄い額が日本にある俺の口座へ振り込まれる』。
さあ、どうするか。
いや、答えは決まっている。前者だ。
前者しかあり得ないっ……!
俺は微塵も迷わず、表示されたポップアップのうち前者に手をかざそうとした。
これでついに綺羅羅ちゃんに会えるぞぉ〜っ……
あはははっ……あははっ……
―――空中に浮かぶホログラム的ポップアップに指先が触れようとした……その時だった。
「と……ここでどーんっ。おりゃあああっ」
がら空きとなった俺の胴体に、ティアラが謎のタックル。
「ぐはあっ!!!!!!!!!!!」
勢い良く命中した魔法使いの一撃は、思ったよりも重かった。彼女がバーサーク魔法使いである可能性が格段に上がった瞬間であった。
タックルの被害は大きく、差し出した指先は軌道を変え、隣にある『異世界に残って攻略っ!』というポップアップに触れてしまった。あぁ残留決定。




