NPCじゃない少女(3)
いや、さっきまではそっちが『どうやってそのアイテムを!?』『その装備は!?』みたいに食いついて来ていただろう。
どうして俺がキモい奴扱いされねばならないのだ。
―――あ、しまった。転移当初に寝ぐらとしていた郊外の空き家の電気消してくるの忘れた。いやそんなのどうでもいいか。
「それで、おじさんはいつ転移して来たのですか?」
「お、おじさん言うなよ。これでもまだ24なんだぞ」
「老け顔ですね」
「うるさいな―――えぇと、月が沈んだのは今日で丁度10回目あたりだったかな」
俺がそう言うと、正面に座る少女は『わぁ』と軽くリアクションしてみせた。
「奇遇ですね。私も今日で10日なんですよ」
「へぇ。こりゃ、何か意味があるんじゃないか? 全く同じ日に……だなんて」
これ、異世界脱出のための重要なヒントになり得る気がする。とてつもなく。
今度はティアラからの質問ターンだ。
「一つお聞きしたいのですが」
「何だろう」
「貴方……『ジョブ』は何を選んだんです? 軽量さを意識した装備品から察するに、恐らく『小型剣使い』か『格闘家』なのではと思いましたが、前者関連の武具は持っていなさそうだし、後者にしても筋肉が足りないガリガリの身体では成り立たないでしょう」
「なんか酷くない?」
「事実ですから」
「……というか『ジョブ』って何だ? 俺、そんなもの登録した覚えなんてないぞ。あれか? ギルドとかクランとかで登録するのか」
暗雲渦巻く平原にスポーンさせられ、死を間近に感じた『チュートリアル』は、確かに体験した。この異世界がゲーム調の仕組みを有していることに気づいたのも、このチュートリアルによるところが大きい。
―――しかし、そこで『ジョブ』選択ポップアップ的なものが出現した記憶はない。あったなら、間違いなく気づいているはずで、見落としなどはしていないことは確かだ。
「え? 出ませんでした? 思い出してくださいよ、一番初めの転移させられる時のこと」
確か……俺は、自室でダラダラしてて、ふと思い立ってスクワットで筋トレを―――と始めた時に、ゲームの壁抜けバグみたいなのが発生して、宇宙を飛んで異世界へ……
「思い出しました? 私の場合、自室で漫画読んでたら女神様が出てきて『貴方は異世界の救世主となるのです』みたいなこと言われました。そして、次の瞬間には異世界にいたんですよ」
うーん。言われてないね。俺はそんなの言われてないし、女神も出てこなかったよ。しかもジョブ選択もさせてもらえてないぞ。




