NPCじゃない少女(2)
ミア・モア姉妹を置いて、俺とティアラは町から少し離れた郊外にある宿屋へ来ていた。
あのまま立ち話をしていても、一向に話は進まないわ、ミッション遂行で疲れた身体は悲鳴を上げるわで、良いこと無しだったので、有益な情報を交換し合うついでに、ここで夜を明かそうというティアラ発の案である。
「もちろん部屋は別ですから」
「そんなことは分かってらい」
「何ですか『分かってらい』って。何処かの方言で?」
「良いだろうそこにツッコまなくても……」
宿屋のロビーは、殺風景ながらも居心地上々。通貨だけはたんまりと持っていたので、ロビー備え付けのバーから幾つかの料理やら酒やらを調達して来た。というか、ティアラが俺の財布で勝手に購入して来た。
ローストチキンを美味そうに頬張るティアラは、先ほどまでの無表情をふんわり崩した別人の様相だ。酒も……飲んで問題無いはず。20歳発言が本当であれば、だが。
「んんまぁ〜い……!」
「チキン食べるのは良いけどさ、そろそろ情報交換しないか」
「ふぇ? ……うるさいですね。このひと時を邪魔しないでくださいよ誰の金だと思っているんですか!」
「俺の金だよ? ねえ、俺の金だよ」
「分かればよろしいのです……」
「何が?」
「このワイン、見てくださいよっ! 産地が日本じゃ見たこともないような変な名前ですよ!」
さっきからずっとこんな調子である。まあ、別に急ぎの用などは無いし、ゆっくり食べてもらってもいいのだが。
にしても、ティアラは本当にNPCとかの類ではなさそうだ。
初めに出会ったミアからは聞き出すことのできなかった日本という言葉に始まり、大学の講義がどうの、日本料理がどうのという話ばかりしてくる。
自身でも言っていた、転移者だと見てまず間違いないだろう。
俺がミアというNPCと出会い、そしてミッションをこなした一連の流れも、ミッションチャートという大きな枠組みの中で制御されていたに過ぎない、と考えるのが無難だろう。
ここらで、ティアラから話を聞きたい。というか話をしたい。これでも一週間以上は一人で過ごして来たわけだし、同じ故郷(というか星)の人間と話せる機会なんて久しぶりだ。なんか無性にワクワクするし。
気持ちは正直に伝えるのが良いと思う。では実践だ。
「ティアラ、俺は君と話したくて仕方ないんだが」
「何ですか急にキュンセリフ吐いて。気持ち悪いですね」




