NPCじゃない少女(1)
……『取り乱しました』。
ティアラという名の、青い髪が特徴的な少女はそう言った。
「しかぁし。取り乱したということを報告したまでであって、別に貴方に『取り乱した』ことを謝ろうと思ったワケではないのです」
「面倒な子だな」
「面倒とは? それに、私は『子』ではありませんけども。れっきとした20歳なのですよ?」
「に……20? 君がか?」
「失礼ですよどう考えても」
ティアラは……どう見ても保育園……は言い過ぎか。小学生くらいにしか見えない。ただでさえ華奢で小柄な身体もそうだが、それに加えてぶっかぶかのローブ調の魔法使いみたいな服を着ていることも、小動物的印象に拍車を掛けている。
……というか、さっきめちゃくちゃに取り乱していたのは何なんだ? 俺が、ダンジョン『地下』をギリ攻略したことについての詳細を知りたがっていたようだったが。
それ以前に、青髪の……ティアラもNPCなのか? ミアやらモアと同じように? ……話の通じなさを考慮すれば、あり得るな。
―――こんな時は、きっぱりと質問してみるのが手っ取り早いだろう。
学生時代も、試験勉強で分からないことはすぐ質問するタイプだったぞ俺は。そして、ほんの少しだけ社会に出た時も……いや、このことを思い出すのはやめよう。なんか頭痛くなるから。
「ティアラ。聞くが……」
「彼氏がいるかいないかなら、答える気はありません」
「はい?」
ティアラは、青い瞳の色を微塵も変えずに言い切った。いや聞いてないけど。
「いや、違くてね」
「言い換えましょう。恋人がいるかいないかなら、答える気はありません」
「聞いてなくてね」
困ったな。俺がラブコメ系作品の主人公なら『聞いてねーよ! 何言ってんだ!』と、強めのツッコミ砲を撃ち出すことは容易だったろう。
しかし、俺はあくまでも冴えない24歳ニートである。そのような元気はない。大声を出す前に、せめてエナジードリンクでも摂取しておきたいところだ。24歳ニートという生き物は、高燃費なのである。
「ティアラ。悪いが、君の彼氏の有無に関する知識については……俺のアイテムストレージが要求するストレージ負荷許容範囲を超えているらしい。なので、それ以上話してもらっても時間の無駄だ……」
「何を言ってるんですか」
「今度はこちらから質問させてもらおう」
「私が貴方に質問をした覚えはないですけどね」
これを聞かねば、先に進めない。
「ティアラ、君は何者なんだろうか」
「……私は、ただの転移者ですよ―――」
ティアラは一呼吸置いてから、こう続けた。
「ま、貴方も何の手がかりも持っていないNPCみたいなものなんでしょうけどね」
NPCじゃない、って言ったか? 今。
いや、これだけじゃまだ確信が持てないぞ。
だってミアやモアも、初め見た時は人間としか思えなかった……し……
てんいしゃ?
転移者!?
俺は目を見開いた。ボーナスで口も。
「転移者って……まさか君も宇宙空間を壁抜けして……」
今度は、ティアラが目を見開く番だった。




