フジ
フジはどんどん発展している。
むしろ発展しすぎたので人の出入りも多くなってしまい、つまりはみんなを守らなければいけないので防衛体制も強化せざるを得なくなり、むしろ、アーメリより攻めるのが難しいのではないかと感じている。
これ本末転倒だよな。
そして今日もブラウたちがやってきて私は怒られていたりする。
「ウミ、これもう国だからな」
「いやそんなことはないだろ」
「人化できるモンスター何人になったんだよ」
「んー。なんか増えてるかもな」
「現時点で2万ですよ、ブラウ国王」
「おい、どうするんだよ。あとその話し方やめろルシル」
「しつこいな。無理だと言ってるだろ」
「それだよそれ」
あれから敵の攻撃は何もない。
そしてやはり元の世界への転移攻撃もピタリと収まっているらしい。
ルシルを失くして転移手段を失ったからなのは間違いなかったようだ。
ルシルが仲間になったからいつでも帰ろうと思えば帰れると思っていたがそんなに簡単な話ではなかった。
ルシルの異世界転移スキルは万能なものではなく、指定した異世界には行けないランダム転移だったのだ。
サタンはそれに特殊な工夫をして精度をあげていたらしい。
その手順は決して誰にも見せなかったそうだ。
「何の秘密があったんだろうな」
「ボクは強制発動させられてただけなのでわからないんです」
「まあこれで終わりならいいんじゃないか?」
「このまま終わるとは思えないよブラウ」
「そのとおりだよ。サタンがこんなことで手を引くなんてありえない」
そう、敵の正体はサタン。
いわゆる悪魔の総大将だ。
その存在は噂されながらもツバメ戦では一度も姿を現さなかった。
世界融合の危機を回避することが目的だったツバメたちはそもそもサタンという固有名詞を問題視していなかったそうだ。
「なんで今さらなんだろうな。しかも違う世界を狙うなんて」
「そりゃどうやってもこの世界を盗れないとわかっているからだろ」
「猛者が多すぎだもんな」
「少し違うと思いますよ」
「なんだよルシル。まだ話してないことがあるのか?」
「いえ、無いです。ただ知らないだけですよ。でもあいつがこんなに時間をかけてやろうとしてたんだ。このまま終わるはずもない」
「まあね。逃げるつもりだったのならチマチマやってないでさっさと自分が異世界に行けば良かった話だ」
「なにか狙いがあるんだろうな」
黙って聞いていた熊公がポツリとこぼした。
「世界の破壊かもしれない」
全員の動きが止まる。
「なにか聞いたのか?」
「その時はまだ言葉もそこまで理解できていなかったから。でもここで言葉を覚えてからあの時の意味がようやく分かった」
「どういうことだ?」
「オレが話せないのを知っていたからヤツは隠そうともしないで手下と話してた」
みんな息をのみながら静かに続きを待つ。
「世界を無理やりつなげはどちらの世界も吹き飛ばせると言っていたんだと思う」
「なんだと!?」
「!」
「強制転移による空間崩壊を狙ってるのか?」
「なんだよギル。そのヤバそうなのは」
「理屈じゃできるけどそんなの自爆行為だぜ」
「過去にも交じりは起きたんだろ? その都度両方が壊れてたってのか?」
「違う。この世界はもうツバメ世界と融合してる。それは本来どちらか片方の世界に吸収されるはずだったんだ。それをツバメが両方残すっていう奇跡を起こしたんだ」
「どういうことだ?」
「そこにまた同規模の世界が加わるなんてとてもじゃないけど世界が壊れる。器が持たないぜ」
全員が静まり返った。
「明らかな自爆行為だが……サタンなら喜んでやるかもしれんな」
「もうそれしかないって気がしてたよ」
あとは元の世界に帰れればいいと思っていたがそうではなくなった。
攻撃手段を封じた今となってはみんなのことは心配ない。
こちらでサタンを封じ込めなければ。
「サタンを探す方法はないのか」
「向こうからルシルを取り返しに来るはずだ」
「だけどもうずいぶん何の動きもないぞ」
「ブラウ、サタンがこのまま引き下がるはずはないですよ。必ずボクを盗りにきます」
「待つしかないか。ウミ、少し緩めるか?」
「バリアを外すのか?」
「外したとて我の軍団に気づかれず侵入するのは不可能だ。安心していいぞ主」
リュカの言葉が決め手となり、翌日からバリアを外すことにした。
もともと目に見えるものではない。
マップと神眼とのリンクで敵が弾かれるだけだ。
これまでに弾かれたのはすべて下位モンスターだけ。
まだここに現れてはいないのは間違いない。
もちろん下位モンスターを囮に下調べをしている可能性はあるが、だとしたらバリアが外れたこのタイミングになにかを仕掛けてくるかもしれない。
―――――――
それから3日ほどして事態は急展開を迎えた。
「なんだって?」
「スタンピードだ」
「わかりやすい陽動だな」
「いよいよサタンか」
「とりあえずバリアを戻すか」
私はバリアを再発動する、
青と緑以外の侵入不可でセット完了。
「もう潜入してるのか」
「既に中にいる相手を弾けるかはわからない」
「なら入っている前提で対応だな」
「姿形は変えられると思ってろよ」
「そりゃそうか」
「人とは限らない。むしろこの国ならワシならモンスターに擬態して紛れ込む」
「確かにな。人のほうが気づける気もするよ」
そこにリュカがやって来る。
「スタンピードの第一波がまもなく視界にはいるそうだ」
「ウミ、準備はできてるのか?」
「大丈夫だ」
「事が起きるならこのあとだな」
「我が軍団の目は欺けんよ」
やがて轟音が鳴り響く。
「おー、とんでもない数だな」
「こんな規模のスタンピードは聞いたことがないな」
「よし、そろそろ起動するぞ」
フジの町がモンスターの群れに飲み込まれそうになった瞬間、スタンピードは次々と消え去っていく。
「よし。成功だ」
「見事だな」
「すごいなボス」
「熊公、ボスはやめようか」
スタンピードの方向はわかったのでそこに転移ポイントを用意しておいたのだ。
落とし穴みたいなもんだな。
スタンピードのモンスターたちはこの世界に新しく作った新天地に送られた。
もちろん果樹園がわんさか作られている。
「外は大丈夫だ」
「内側はどうなったかな」
町の中は魔狼ちゃん軍団が警戒にあたっている。
とそこに魔狼ちゃんからの緊急コールが届く。
リュカの言う通り、すぐに怪しいモンスターが見つかったのだった。




