ブラックドラゴン
ブラックドラゴンと話し込む。
こうなれば勝機もある。
「とりあえずメシでもどう?」
「お、ええんか?!」
「もちろんだ。肉でいいんだよな?」
「嬉しいなあ。ここに連れてこられてからなんも食うてへんのや」
む。気になるな。
肉の塊を準備する手が止まる。
あれこれ聞き出してみるか。
「連れてこられたってのは?」
「ひとりで遊んでたらいきなりここに飛ばされたんや。訳がわからんねん」
「なんだそれ」
「なにやっても出られへんし、こりゃダンジョンやなってわかったんや」
「そういうことか。ここに人が来るのは久しぶりっていうのは?」
「閉じ込められてから1回だけエサ持ったヤツが来たんやけどな」
「へえ。そいつはどうしたんだ?」
「とりあえず食うといた」
「食ったんかい。なんか聞き出したか?」
「ここがダンジョンの最下層のボス部屋やゆうてたな。100人倒したら出してもらえるように頼んでやるって言われた」
「なんだそれ。黒幕はほかにいたってことか」
「そやろな。でも10年で誰か来たんは自分らが初めてやったんや」
「それで問答無用ってことね」
「すまんかったな」
このダンジョンが何者かに加工されて10年か。
それなりに準備してきたってことだな。
「それは寂しかったな。……とりあえずメシだな!」
肉の塊をどんっと置く。
ブラックドラゴンは目を輝かせて肉に食らいついた。
「むひょーーーーーー!!!! たまらん!!!!!」
ブラックドラゴンは次々に平らげていく。
「たんまりコピーしてあるから遠慮すんなよ」
「こりゃ美味いで!」
10年ぶりの食事は延々と続いたのだった。
「美味すぎたわ。ほんまにありがとう。こんなん食べてしもて明日からどうしたらええねん」
「いつでも食わせてやるよ」
「はあ、久しぶりにメシ食うたらいろいろ思い出してしもたなあ。おとんとおかん心配しとるやろなあ」
「ん、お前何歳よ」
「200歳や」
「おじいちゃんじゃん」
「アホ言え。ドラゴンで言うたら赤ちゃんやぞ」
「ブラックドラゴンの一族なんてすごいな」
「おかんはホワイトドラゴンやで」
「ん?」
「へえ、ホワイトドラゴンなんてのもいるのか」
「いやちょっと待て」
「なんだよブラウ」
「ん?」
「ブラックドラゴンにホワイトドラゴン?」
「え? ブラウ?」
「え?」
「ブラウってアーメリの国王か?」
「なんだよふたりとも」
「お前の両親ってクロとハクか?」
「ツバメはんの友だちのブラウ?」
「「なんだよー(やねんー)!!」」
ふたりは知り合いだった。
クロはツバメと絆を結んだファミリーで、ブラウたちと一緒に世界を救うために戦った仲間だった。
その子どもがこのブラックドラゴンだったということだ。
「おまえがまだ赤ちゃんのときに抱っこしたこともあるぞ」
「そうやったんやな。おとんの仲間にえらい失礼してしもた」
「ここに押し込まれたなら仕方のないことだ」
「それよりどないしたらええんや。こんなにようしてもろた人たちと戦うなんてできひんで。みんなもう出られへん」
ブラックドラゴンはボロボロと涙を流し出した。
そこで私から提案をする。
「あ、それな。なんとかなるぞ」
「へ?」
「オレと絆を結べばここから出られる」
「は? ほんまに?」
「ブラウがクロとハクに会わせてくれるよ。名前を付けていいか?」
「もちろんや! あんなうまいもん食わせてもろて嫌なんて言えるかいな」
さて名前か。
このところみんなにツッコまれ気味だからな。
うん、これだな。
「ジュニア」
全員が白い目で私を見た。
「……は安易なので止めておくよ」
となると。
「ブラド」
お、思ったより反応がいいぞ。
「決めた! お前の名前はブラドだ!」
同時に白い光が私たちを包み込む。
絆が結ばれた。
さっそく神眼で見るとしっかり「神獣」になっていた。
これでブラドもダンジョンの外へ出ることができる。
もしかしたらもともと外のモンスターだから出られたのかもしれないけど。
まあ念には念を入れて損はないだろう。
連れ出した途端に消えてしまったら立ち直れない。
「ん、ちょっと待て。ブラドって」
「あ!」
「ブラックドラゴンの略じゃねえか」
「「「おいおい」」」
「かっこいいだろ!」
「別に気に入ってるからええで」
「ほらな!」
頼もしい仲間がまた増えた。
熊公もブラドも絆を結んだことでとんでもない能力向上がされているはずだしな。
「ウミ、さっきの要領で床を開けちまえ」
「おう、やってみる」
一点集中。
針のような穴でも開けられればクリエイトで拡張できる。
「どりゃ!」
床が全部落ちた。
―――――――
「みんな落ちたではないか」
「下には行けたからいいだろ」
「次が最下層だったはずなのにえらく落ちたぞ」
「どんだけぶち抜いたんだよ」
「どこまで落ちたのだ?」
「わからへんな。かなり落ちたんは間違いないで」
「これブラドがいなかったらどうなってたんだ?」
「死にはしないだろうけど」
「考えたくないぜ」
「グワァ!」
そこに熊公の咆哮が響く。
熊公は奥を睨みつけている。
「ん、なにかいるな」
「黒幕か!」
薄暗くはなっているが明らかにこのフロアにはほかに出口はない。
転移の恐れはあるが動きがあれば私がすぐに押さえるつもりだ。
「誰だ! 出てこい!」
「……わかった。手荒な真似は止めてくれ」
奥から出てきたのは異形の男。
黒く大きな羽根を持ち、長い尻尾を携えている。
頭には大きなツノ。
明らかに悪魔の類である。
「悪魔だぜ」
「お前が黒幕だな」
「違う」
「この状況でどんな言い訳があるんだ?」
「私はあの男にいいように使われていただけだ」
「あの男とは?」
「言えない」
「は?」
「信じてくれ。言えないんだ」
ギルが私にアイコンタクトを送ってくる。
言われるまでもなく私は神眼を使っていた。
この男は嘘をついていない。
こいつはただの駒だ。
「本当のようだ」
「間違いないかウミ」
「ああ」
「答えよ。黒幕はどこだ」
「ここにはいない。とうに逃げている」
「いつだ?」
「あんたたちが29回を踏破したときだな」
「もう逃げ切ってるか」
神眼はもうひとつの事実を告げている。
この男は奴隷紋で縛られている。
そしてこの男の心はそこまで歪んだものではない。
「解いてやるよ。『リリース』」
途端に男の身体が光り輝き、何かが弾け飛んだ。
「嘘だろ!? あれを解いてくれたのか?」
「もう大丈夫だと思うよ」
男は泣きながら膝をつく。
「ありがとうありがとう。ようやく自由になれた」
とつやらなにか訳がありそうだな。
話を聞いてみようか。




