熊公からの〜
穴を階段状にクリエイトして、みんなで下のフロアに降りる。
ボスモンスターだった熊公も恐る恐る階段を降りてきたが何の問題もなく降りられた。
「よかったな熊公!」
「グワァ!」
「……今さらなのだが熊公という名前はどうなのだ」
「いや我ながら本当に。まさかそれが名前になるとは」
「おいおいそりゃ熊公がかわいそうだぜ」
「我は良い名だと思うぞ」
「グワァ!!!」
「本人もそう言ってるみたいだからまあ」
「「そうだな」」
名前は気に入ってるならいいとしよう。
それよりずっとあの部屋に閉じ込められて落とされてを繰り返してたんだ。
これからは自由に動けるから楽しいだろうな。
「なあ、熊公が仲間になれるんだぞ。ほかのモンスターたちも倒さなくていいんじゃないか」
それを聞いたブラウが異を唱える。
「気持ちはわかるけとな。ダンジョンモンスターは血を流さないし殺せば煙のように消える。ダンジョンが創り出したいわば生きていない存在だ」
「いやそうだけどさ。実際に熊公は……」
「遭遇するモンスター全てを神獣にしていくなんて無理だろう」
「う……」
「それにダンジョン素材はすでに産業だ。これは神がもたらした人間への試練とご褒美だというのがワシたちのダンジョンという存在への理解だよ」
「……そうか。確かにな。わかったよ」
熊公は静かにこの会話を聞いていた。
自分の存在をどのように受け止めているんだろう。
頭を撫でてやると彼は嬉しそうに喜んでいた。
「だからこそこれは規格外すぎるぜ」
「うむ。ダンジョンのボスモンスターと意気投合して連れ出すとは」
「みんな連れていければいいのにな」
「無理だ。そもそも仲良くなれん」
「何より出られん」
「極めつけは神獣にできん」
だよな、無理だな。
「よかったな熊公。ミラクルだぜ」
「グワァ!」
30階フロアを探索する。
当然、人はいないはずだ。
いるなら、そいつは何かしらの後ろめたいことをしているヤツ。
そしてダンジョンに手を加えることができる技術をもつヤツ。
堂々と国々にケンカは売らないヤツ。
つまりはきっと、私の世界を狙う黒幕に違いない。
「このフロアにはいないな。赤い光点はぜんぶ登録された反応だ」
ダンジョンでもマップは機能するが、フロアを超えた探索はできない。
あくまでひとつひとつの階層がその世界という扱いなのだろう。
あるいは私の思い込みによる仕様なのかもな。
次々とフロアを探索する。
稀に未登録の光点を見つけたこともあったが新種のモンスターだった。
その後も進展はなく、次々と深層を攻略していく。
39階はモンスターがおらず、宝箱の山だったが全部が凶暴なミミックや凶悪なトラップだった。
ふざけんなってみんなで怒ったよ。
そして私たちは49階へと到達した。
「ここにはトラップはないな……ん? ヤバい気配がするな」
「うむ。これはなかなかのもんだ」
「神眼持ってるマスターはともかく、ブラウはなんでそういうのわかるんだよ」
「カンだな」
「我も少し感じるな。なかなかの強者がいる」
「いってみるか」
扉を開けるとそこには金色のドラゴンが鎮座していた。
「うお、ドラゴンだ」
「ほう。いきなりグレードが上がったな」
「ぬう。なかなか強いな」
「嘘だろ。ブラックドラゴンだ。ジビエに次ぐ猛者だぜ」
「ここに誰かが来るんは久しぶりやな」
ドラゴンが静かに言葉を発した。
「うお、しゃべった! しかも関西弁で!」
「そりゃそうだろ。ドラゴンだぞ」
「ジビエも話していたであろう」
「そういやそうだった」
「ほう。おまえらはドラゴンと遭遇して生き永らえたんか。そりゃ珍しいことやな」
「あのさ、オレたちは別に討伐に来てるわけじゃなくてさ」
「だからなんやっちゅうねん」
「別に戦わなくてもいいだろ」
「無理な相談やな。この部屋で相対した以上はどちらかが死ぬしかあらへん」
「そんなことないぞ。実際に……」
「つべこべ言わんとかかってこんかい」
そういうとブラックドラゴンは大きく口を開けた。
「まずい! マスター! ブレスが来るぞ!!!」
「みんなオレの後ろに!」
頼むぜ天才科学者! ちゃんと効くんだろうな!
「ゴバアァァッッッ!!!!」
青白い炎が吹き出される!
おいおい、これはキツイんじゃねえのか!?
慌ててバリアを張ろうとしたその時、ひと足早くブレス私の身体に到達する。
「うわ!」
瞬間、アーマーが光り輝きブレスを吸収した。
「まじか!」
「ウミ、なんだそれは!」
「おお、凄まじいな」
ブレスを吐いたブラックドラゴンが一番驚いている。
「なんやねん!?」
「サンキューかけっち! お返しするぜ!」
私は左手を前に突き出してキーワードを唱える。
「リフレクト」
同時に私の掌からとんでもない熱量が迸った。
「んなっ!」
自身のドラゴンブレスをまともに浴びたブラックドラゴンはそのまま吹き飛んで壁に激しく激突した。
「どうだ!?」
砂煙が舞う中―――。
ゆらりと影が動く。
ブラックドラゴンは全くの無傷で立ち上がってきた。
「まじか! すごいなおまえ!」
「それはこっちのセリフや。何やねん今のは!」
「これ相手の攻撃を全部無力化して跳ね返すんだよ」
「そんなんズルやんけ」
「いきなりブレス吐くからだろ!」
「せやかてこの部屋に入ってきたんやからそりゃ戦うやろが!」
「いやそれはそう」
「せやろ」
「いや違うって。オレたちはあんたと戦いに来たわけじゃないって言ってるだろ!」
押し問答か続く。
「あのさあ。そっちの攻撃は全部跳ね返すし、でもそれはあんたには効かないしさ」
「おう」
「これ決着付かないと思うぞ」
「……せやなあ」
「ちょっと一旦話してみないか?」
「……まあええで」
私たちは座り込んで一度話し合うことにした。
となればあれだよな。
異世界モンスターにはメシですよね。
ジビエの好きな肉の塊、行ってみますか。




