歓迎
アーメリ王都の周辺都市にやってきた。
城門で一悶着はあったが、ブラウがお触れを出してくれていたので事なきを得た。
事なきを得たというか……超VIP扱いだ。
「ようこそケンターへ。ウミ様を歓迎いたします」
「ありがとうございます。でもお構いなく。ほっておいてもらって大丈夫ですからね」
そう。
この周辺都市ケンターのお偉いさまたちが揃って歓待してくれようとしているのだ。
「いえそういうわけには……」
「いや本当に。むしろ気を使ってのんびりできないですから」
周囲がザワつく。
「困ったぞ」
「歓待を受けていただけないとは」
「ブラウ様に顔向けできん」
「なんて低姿勢な方なんだ」
「進退伺を出すしかないな」
「うむ。志半ばだが仕方ないな」
「そうなるか」
おいおい穏やかじゃないぞ。
「ちょっと止めてくださいね。あなたが領主さまですか?」
「申し遅れました。私が領主のターキーです」
「えーと、じゃあターキーさんにお願いがあります」
「なんでしょう! どうぞ無理難題をお願いします!」
「いや無理難題て」
「「「どうぞ!」」」
何にするか。
あ。それこそ身分だな。
「先ほどご迷惑をかけたように私には身分を示すものがありません。ギルドカードというものはここでも手に入れられますか?」
「身分証をお作りになりたいのですね!」
「ええ。何かと不便になりそうなので」
「ギルドカードは厳格なランク制になっておりますのでウミ様に相応しいステータスがご用意できません」
「むしろそのほうが有り難いです」
「いえ。ですのでケンターの名誉市民のライセンスをご用意します」
「なんですかそれは」
「10人にだけ授与される名誉なものです。代わりにひとり外して枠を作りますので――」
「ダメてす。その人が可哀想じゃないですか」
これを聞いたみんなも困ってしまった。
「えええ」
「となると困ったな」
「何ができる?」
「ブラウ国王のご友人だぞ」
「相応しいものがない」
「新しく作るか」
「おお、それがいい」
「では急いでご用意をしますのでこちらに必要事項を記入しておいてくださいますか?」
「わかりました。あまり大げさにしないでくださいね」
「いえ、ブラウ国王が国賓としてお触れを出されたからにはそういうわけにはいきません」
なんだかなあ。
とりあえずここを出るか。
「じゃあお願いしますね。そろそろお暇していいですか?」
「メイドとボディガードを付けますのでしばしお待ちください」
「いやいや、それは不要です」
「そういうわけには」
「えーと。じゃあやめておきますね。そうだ、従魔が一緒に泊まれるような宿があればご紹介いただきたいんですが」
「迎賓館にお泊りいただくことにしましたのでどうかご安心ください」
「え」
「ここはお譲りできませんからね!」
仕方ない。
この町では一般人を装った聞き込みは無理だな。
どうにかしてギルドカードをこっそり作ろう。
毎回これではちょっと困る。
迎賓館に行き、そこで歓待を受けた私たちはようやく解放された。
頃合いを見計らって認識阻害を強くかけて外へ出る。
「参ったな。とんでもないVIP扱いだ」
(ずっと出られなくてつまらなかったぜ。早く誰もいないところにいこう)
「料理はどれも美味かったから我は嬉しかったぞ」
(ちきしょう、オレも食べたかったぜ)
「ギルの分はお土産でもらってあるよ」
(おお、さすがだマスター)
大きな通りを歩いていくといろんな店が並んだ通りに出た。
その中に目的地のギルドがあった。
「お、あれだな。冒険者ギルドだ」
(マスター、本気でギルドに加入するのか?)
「ああ。一律Fランクからスタートらしいからな。それなら一般人だ」
「主が受けるなら我も持っておくか」
ギルドの中に入ると中にはいかにもな男たちがたむろしていた。
ちょっとワクワクしながら奥へ進んでみたが何も起きなかった。
「異世界あるあるならここで新人イビリがあるんだけどなあ」
(面倒はない方がいいだろ)
「そんな不敬な輩は我が許さぬよ」
カウンターに受付嬢がおり、段取りを教えてくれた。
言われたように隣のカウンターにいき手続きをする。
ほどなく無事に冒険者ギルドのライセンスを手に入れることができた。
(なんか鉛色で地味なカードだな)
「最低のFランクだからな」
「主には似つかわしくない」
「これで身分証が出来た。もうあんな揉め事になることもないだろう」
(魔狼が引いてる時点で無理だと思うぞ)
城に戻ろうと歩いていると昼間からやっている飲み屋があったのでさっそく聞き込みをしてみることにした。
中に入ると酒臭い連中が一組、昼間から酒を飲んでいたので一杯おごって話を聞いてみたが特に気になるようなネタは聞くことができなかった。
代わりに面白い話を聞いた。
「怪しいやつを探すならダンジョンにいけばいい」
「なんでだ?」
「ダンジョンってのは腕に覚えがありゃ隠れ場所には一番いい場所なんだよ」
「へぇ」
「実際、家を持たない冒険者はダンジョンに籠りっきりで金稼ぎしてるぜ」
「身元のわかんねえ知らねえ顔も多いしな」
「意外とおまえの探してるやつもそんなとこに隠れてんじゃねえのか」
「!」
冒険者たちに礼を伝えてから席を立つ。
嬉しそうな顔の私を見てふたりはニヤニヤしている。
「いやさ、なんにも情報がない中でさ、ダンジョンが怪しい奴らの隠れ家になってるっていうんだしさ、これはもう潜るしかないってさ」
「潜りたいのか? マスター」
「潜ってみたいんだな?主」
「うー、そうだよ。潜りたいんだよ」
ダンジョンへの挑戦が決定した。
めちゃくちゃ楽しみだー!




