アーメリ
飛ばされたのは日本ではなくアメリカだった。
といっても異世界なので国名は微妙に違うのだけど。
そしてどうやら明らかに破天荒な国王は私とのバトルをご所望の様子。
「あのー」
「なんだ?」
「私は旅の者ですのでこの国の礼儀をよく知らないのでまずその点はご理解お願いしますね」
「そんなもんどうでもいいぞ」
「いやそういうわけには」
「ダメ口でよい」
「いや無理ですよ」
周りを見ると別に特段慌てた様子もない。
ん? これマジなのか?
「……マジ?」
「大マジだ」
いや無理だろ。
「あのですね」
「おい」
「あ、あのさ……はセーフかな」
「だからダメ口でよいと言ってるだろう」
ならまあ。
意を決して言葉を繋ぐ。
「あのですね、オレが勇者だというのは周りの方々が言ってるだけですよ。実際に勇者なんかじゃないし。なんでこんな簡単に信じてるんですか?」
「見ればただ者でないことは分かるだろ」
「見る前にここに来てるじゃないですか」
「そんなもん面白そうだったからだ」
「めちゃくちゃじゃないですか」
噛み合わないけど。
なんかさっきから楽しいんだよな。
いいサイン来ちゃってるし。
「それに……何より言いたいのは!」
「なんだ?」
「人助けをしたのになんで戦わされるんですか!」
「む。痛いところを突くな」
「あなたの国に関わる人を命がけで救ったのにその対価が戦いっておかしいでしょ」
「そう言われるとなあ」
「たからって褒美をくれって話じゃないですからね」
「ほう。何が望みだ?」
「なにも。自由にこの国で旅をしたいだけです」
「ふむ。よし、いいだろう」
「へ?」
「まずは詫びよう。いきなりケンカを売ってすまなかったな。そして礼を言う。友達を助けてくれてありがとう」
なんともこの人は。
国王にしてこの切り返しだ。
器がデカすぎるだろ。
この国はきっといい国なのだろうな。
「ワシはアーメリのブラウだ。お前の名前は?」
「……ありがとう。オレはウミだ」
「お、いい話し方になったな。お前も友達だな」
「本当にいいのかな」
「いいといっておる」
「……わかったよ。ブラウ、よろしく」
こうして私たちは握手を交わしたのだった。
が。
「いいじゃねえか! ちょっと手合わせしようぜ」
「嫌だよ。なんだよせっかくいい感じだったのに!」
リュカとともに王宮の食事に招かれたのだが、そこでもずっとバトルの申し入れだ。
食事が終わって城内を案内してもらってる間も勧誘は続いたのだった。
「お祖父様、ウミさんがお困りですよ」
「あーそうだ、最初にお前を迎えに行ったこいつな、オレの孫のフローラだ。結婚するか?」
「はあっ!? いきなり何言ってんだよ」
「だからさ、な?」
「めちゃくちゃだ」
楽しいのは楽しいけどな。
手合わせはごめんだ。
「そんなに戦いたいなら帰らずの森に行けばいいだろ」
「あんな雑魚どもつまらん。それよりリュカ、お前もかなり強いだろ。やるか?」
「やらぬよ」
「おい。何年も誰も通り抜けられてない森だって聞いたぞ」
「表向きにはな。たまにこっそり遊びに行ってるよ」
「やっぱりなあ」
「で、おまえこれからどうするんだよ。行く宛もないんだろ。ここに住めよ」
「いやそれはさすがに悪いよ。大丈夫。どっかフラフラさせてもらう」
「ウミ、おまえどっからきた?」
「げほっ」
急に核心突くなよな。
「なんだ、あれだ。小さな島国だよ。あ、ブラウ。さっき褒美はいらないって言ったんだけどオレ一文無しだったんだ。ちょっとだけ褒美もらえないかな」
「ワハハハ! なんだそれは!」
「えーと、森で落とした、みたいな?」
「もういいからよ。オレには嘘はやめろ」
「なんで嘘ってわかるんだよ」
「おまえいま嘘って認めたぞ」
「げ」
「ウミは本当に面白いな」
「もういいよ、自分で稼ぐから。なんか仕事くれ」
「面白すぎるだろ。なあ、ひとつ聞いていいか?」
「なんだよ」
「おまえハグレだろ」
「げほっ」
とんでもない直撃くらった。
「……なんでそう思うんだ?」
「まあ荷物の少なさはアイテムボックスだとしてもだ。汚れ一つない馬車はおかしいだろ。なによりその服だな」
バレバレじゃねえか。
「ひとつ先に聞くけど。……ハグレだと迷惑かけるのか?」
それを聞いてブラウは真顔になったあと、ゲラゲラと笑い出した。
ようやく笑いが収まってからブラウはこう告げてきた。
「ウミ。おまえは大したやつだよ。本気で気に入った」
「は? なんでそうなる」
「見知らぬ土地に放り込まれてんのに、第一声が迷惑をかけるか心配するなんざなかなか出来るもんじゃねえよ」
「……いや、別にハグレとか認めてないよ」
「だからいいって。ワシとフローラで留めておく」
「………」
「たまに別の世界から紛れ込んでくるやつはいたよ。昔から無かったことじゃない」
「そうなのか?」
「親友がそうだったからな」
まったく。
良縁にも程があるだろ。
この人にはすべて話していいんだろう。
「わかったよブラウ。本当のことを話そう」
ちょうど庭に差し掛かった。
私はふたりの前で庭に指を差し、そこに愛車のセコイアを出したのだった。
―――――――
「……ってことでさ。オレたちの世界を狙ってるヤツを突き止めたいんだ」
王の間に場所を移して黙って腕を組んで話を聞いていたブラウがゆっくりと目を開く。
「……なるほどな。だいたいのことは分かった」
「なんか心当たりはあるか?」
「いやないな。だが事例なら知ってる。この世界も前に異世界との融合をしたからな」
「なんだって?!」
「こっちで起きたのは隣り合わせた別世界との自然融合だ。本来ならどちらかが崩壊するところをハグレが救ってくれた」
「その人が?」
「名をツバメという。ワシの親友だ。今では教科書に載るような偉人だぞ」
「そりゃ世界をふたつも救えばそうなるよな」
「それよりだ」
「あれをくれ」
「は?」
「ワシがツバメにもらったのがずいぶん前に壊れてな」
そういうとブラウはアイテムボックスらしき布の袋を出してそこからデカい四駆を出してきた。
「ハマーかよ!」
「ツバメがくれたんだがアイツ忙しくてなかなか直しに来んのだ」
「直すだけでいいならやっとくよ」
「直せるのか!」
「いいけどおこづかいくれよ」
クリエイトでハマーを修理、強化する。
壊れないように徹底的に部品から強化したからドラゴンに踏まれても大丈夫だぞ。
聞けば船も壊れたと言うのでそれも修理しておいた。
御礼にお金がもらえたのでちょっと得したな!




