999.500対502
戦闘開始。
私とリュカはともにモンスターの群れのなかに飛び込んだ。
最初に現れたのはゴブリン、コボルトたちだ。
「悪いな。あっちでなら仲間になれたかもしれないのに残念だよ」
軽く最初の1体を殴りつけるとゴブリンは跡形もなく弾け飛んだ。
その残骸を浴びた後続たちは思わず怯んだが、後ろから押し寄せる群れに押し出されるように次々と私に消し飛ばされていくことになった。
少し離れたところで暴れているリュカに目をやると、蹴り飛ばした相手が後ろを巻き込んで次々とドミノ倒しのように吹き飛んでいくのが見えた。
「それ! 効率良いな!」
ありゃ身体能力のコントロールだな。
もっと攻撃力を抑えてみるか。
力を抑えて――弾け飛ぶ。
む?
もっと抑えて――弾け飛ぶ。
まだ?
とことん抑えて――弾け飛ぶ。
なんだよチキショウ。
もういいや。
開き直って強めに殴ったら10体くらいがまとめて弾け飛んだ。
「おや?」
「主! やるではないか! 魔力の拡散攻撃とはなるほど主にしかできない技であるな!」
「お、おう!」
これが魔力の拡散か。
どうやったんだっけな。
拡散――ライフルじゃなくて散弾銃みたいな感じかな。
あ、しっくりきた。
忘れないうちに練習しとこう。
コツを掴んだ私は物理の範囲攻撃を身につけたのだった。
「こりゃ効率いいな!」
最初は10体くらいだった攻撃対象も慣れると100体くらいまでは簡単に広げることができた。
「これはこれで魔力コントロールのいい練習だな」
ゴブリン、コボルトを圧倒しているとやがてオークやオーガが混ざりだしたがもちろんなんの障害でもない。
とはいえ100万だ。
延々と続くであろうこの殺戮の繰り返しにいい加減に苛ついてきた。
こいつらとだってあっちなら仲間になれたのに。
新天地で私たちと楽しく一緒に暮らしているモンスターたちの嬉しそうな顔が浮かぶ。
そいつらをいま。
私は弾け飛ばしているのか。
「つまんねえな。セコいことばっかりしやがって……」
私の異変にリュカが反応する。
「魔狼たち! 今すぐ主の後ろに下がれ!」
それを聞いた魔狼たちは瞬時に私の後ろに下がる。
「こんなのけしかけてねえで……」
怒りの感情が止まらない。
「とっととてめえでケリつけにくりゃいいだろうがあぁ!!!!!!!」
私の中で膨れ上がった怒りが爆発する。
それは魔力に変換されて前面に拡散され、押し寄せるモンスターたちは見える限り跡形もなく消えていた。
「うわ」
「なんて威力だ」
見渡すとざっと10キロくらいだろうか。
そこにいたはずの、渦のように溢れかえっていたモンスターの大群が消滅していた。
―――――――
次々とモンスターたちを殲滅していく。
私とリュカは魔狼とともに陣を敷き、モンスターたちを圧倒し続けていた。
結論からいうと、魔力無限は維持されていた。
先ほどの魔力解放と同時にギルが復活したのだ。
「マスターすまない! 気を失っていた!」
「ギル! 心配したぞ!」
「良かったな!」
「マスターの世界で言う再起動みたいな感じだな。で、何が起きてるんだ!?」
私はギルに事の顛末を伝えた。
「そういうことか。まず言っておくと魔力は問題ないぜ。あっちにまだ届いているかはわからないがここでは効果継続だ」
それを聞いてまずは安堵した。
向こうでも途切れていないといいのだが。
ちょうど肉弾戦ではキリがないと思っていたので作戦を変えることにした。
魔狼たちも集めてバリアを張ったのだ。
しかもそのバリアは反射性能を持つようにアップグレードできたので、結果、ほっておけば敵が自滅していくという負けようのない図式が完成した。
「なんともな。これでいいのかな」
次々と攻撃しては自滅していくモンスターたちを眺めながら私たちはティータイムに入っていた。
こたつに入りながらお煎餅とお茶を嗜む様は恐ろしくシュールな光景だ。
「ん、なんか来たな」
「おー、ありゃコカトリスだな」
「面倒なやつだ」
コカトリス?
なんか聞いたことあるな。
え、石になるやつ!?
「ちょっ、固まるんじゃないのか?」
「大丈夫だ。半端なバリアじゃないぜ」
「本当にか?」
「ヤバけりゃリュカが反応してるよ」
チラ見したらリュカは丸まって寝てた。
大丈夫なんだな
コカトリスがバリアに向かって攻撃を放つ。
が、即座に反射されコカトリスは石化した。
「効かないかと思ったのにな」
「あるいはマスターの魔力で増幅してるのかもな」
「あれはバリアがなきゃ詰むんじゃないのか?」
「いやたぶんマスターには効かないだろうな」
「いやそれはさすがに」
「主とはレベル差が違いすぎるよ」
「そんなに強いのかオレ」
「強いなんてもんじゃないぜ」
コカトリスの群れは次々と石像になっていく。
ついでに周りのモンスターも巻き込みながら。
その後も次々とモンスターが襲ってくるがすべてバリアが防いで倒していくという繰り返し。
いい加減に諦めればいいと思うのだが、敵は延々と攻撃を繰り返していくだけ。
とはいえ100万の軍勢を倒し切るのには時間がかかった。
どうやら破られる心配がないことを理解した私たちはバリア内に拠点を作り、そこでまったりと過ごしてようやく100万の大群は全滅したのだった。
私たちは2日ほどしてから外に出た。
「やっと終わった」
「ノーダメージだけど時間がかかりすぎだな」
「主、どうする?」
「これを仕掛けたヤツを探す」
「ならここで待つのがいいんじゃないのか」
「またなんか仕掛けられるのをのんびり待つのもな」
「なら動くってことだな」
「そうしよう。とりあえず異世界人から話が聞きたい」
マップを呼び出して周囲の状況を探ってみるが周りには何の反応もない。
「さすがに何の反応もないな」
「あれだけのモンスターがいたんたからな」
「主、どの方角に行く?」
北と東は山。
西は深い森。
南はずっと草原が続いている。
「草原かな。人がいるならそっちだろう」
愛車を収納から出す。
すでにかなりの魔改造を施しているが、さらに足回りを強化。
ついでに飛行能力と水上、水中対応もできるように強化しておく。
「マスター。これもうクルマじゃないぞ」
「戦車であり、船でもあり、潜水艦でもある。飛行機でもあって……あ、家でもあるな」
「庭もついてるぞ、主」
「オーバーテクノロジーにもほどがあるぜ」
認識阻害をはかなり強くかけておくか。
私たちは草原を南に向けて走り出したのだった。




