伝説のドラゴン
伝説のエンシェントドラゴンと出会った。
どうやら異世界で「邪悪なる者」に飛ばされたらしく行く宛もないようなので自宅に招くことにした。
「っていってもデカいからなあ」
『すまんな』
「とりあえず新天地かな。ん? なんでお前らそんなに離れてんだよ」
ジリジリと後ろに下がっている仲間たちに気づく。
「お前な、神ドラゴンだぞ。エージェントだぞエージェント」
「マスター怖いもんなしかよ。恐れ多いんだっての。あとエージェントじゃない。エンシェントだ。アキラ、お前ぶっ飛ばされるぞ」
「主、さすがではあるがちょっと無謀だ」
なんでそんなにビビってるのかわからん。
別に普通のやつだけどな。
『おぬしたちもさっきは威圧してすまなかったな。もう大丈夫だぞ』
「ほらな。一旦前線基地に入ってみんなを紹介するよ。そこから広いところに行こう」
みんなで転移して前線基地に戻る。
「うわー、大きいなあ!」
「すごい! ドラゴンさんだー」
「なんかスケスケですね」
「こ、これはもしかして!?」
「ふむ、強そうだ」
「おお、これがドラゴンか」
「鱗もらえないかなあ。すごいモノが作れそうです」
お、こいつらは通常モードだな。
頼もしいやつらだ。
「おいお前たち恐れ多いぜ」
「エージェ……エシェジェ……古龍、神ドラゴンだぞ」
「エンシェントだアキラ」
『エンシェントドラゴンである。この世界に迷い込んでしまったところでこの者に出会ったのだ。邪魔をするが宜しく頼む』
「やっばりーーーーーーー!!!!!!!」
「もちろんだよ!」
「ご丁寧な龍だー」
「お話しできるんですね」
とりあえず家族紹介だな。
ひとり嬉しすぎて踊ってるやつがいるけどあいつはほっておこう。
ひと通りのメンバー紹介をしていく。
「……と、これがオレのファミリーだ」
『みないい魔力を持っておるな。特におぬし、もしや古代魔法を使えるのか』
「あ、そっか。親父は古代魔法だったよな」
「あまりわかっておらんけどな」
『古代魔法を使える人間など久しぶりに見たな』
「へー、あんまりいないんだな」
『5000年はみておらん』
「は? ええええ!?」
「マスター、失われた古代魔法なんだからな」
「いやいや、その前にエンシェントドラゴンって何歳なんだ?」
『もう一万年は生きておるぞ。数えるのも忘れたわ』
「すげえ!」
「その魔法を教えてもらいたいものだな。真似をする相手がいなくて全部自己流なんだ」
『もちろんだ』
「よし、そうとなれば腕を振るうか。嫌いなものはあるか?」
『特にないぞ。肉が好きであるな』
「イメージ通りだな。わかった。ウミ、歓迎会はどこでやる?」
「新天地かなと思ってたけど。あそこならまだ魔素も少しはあるからさ」
「すぐ行こう。もてなしたい」
こうして私たちは新天地に転移することにした。
―――――――
『ーーっ! これは美味い! 美味すぎる!』
親父の料理にエンシェントドラゴンは大喜びだ。
洋食屋を名乗りながらその味は有名店のフレンチ、イタリアンを超えてくる腕の持ち主だからな。
「こんなに喜んでくれるならもっといろんなメニューを出してあげたいんだけどな」
『まだこれ以外にもあるのか!?』
「こんなもの私の料理の入り口にも立ってないぞ」
『なぜ出してくれんのだ』
「量がな。身体が大きすぎてどうしても無理がある」
『小さければ出してもらえるのか?』
「もちろんだ」
それを聞いたエンシェントドラゴンは大型犬サイズに変身した。
おい途端にかわいいぞ。
「なんだよサイズダウンできたのかよ」
『親父殿の食事のためならなんでもやるぞ』
その後は彼のリクエストに応えて親父のフルコースが振る舞われた。
エンシェントドラゴンは涙を流して食べていた。
……これ展開が読めるぞ。
『親父殿、本当にありがとう。もしよければ我に名前をもらえないだろうか』
「いいのか?」
『我は初めて人と絆を結びたいと思ったのだ。親父殿をおいて他にはいない』
「そうか。もちろん喜んで名付けさせてもらおう」
しばし考えた親父はこう告げた。
「うむ。決めたぞ。名前はジビエだ」
その瞬間、ふたりを白い光が包み込み、絆が結ばれた。
「ジビエて」
「そうだった。親父さんのセンスな」
「騎竜はトマトだったな」
『ん? 親父殿のつけた名前になにか文句でもあるのか?』
「「「ありません!」」」
アキラと古杉くん、三花くんは慌てて否定したのだった。
―――――――
『ふむ。そんなことになっておったのか』
この世界に起きていること――歪みとハグレのことをエンシェント……ジビエに話してみた。
「そっちで何が起きてるんだ?」
『人間のことはあまりわからんがな。そこまで大きな争いも起きておらぬし、ここ100年くらいは平穏だったと思うのだがな。少なくとも異世界へ侵略を仕掛けるような愚かな奴らではないと思うぞ』
「だとしたら世界単位の侵略ではないのかもな」
「個の目論みかね」
「だとしてもだせ? 意図的に歪みを起こせるなんてのはよほどの魔力の持ち主にしかできないことだ」
『それはそうであるな。我にもできぬことだ』
「そんな存在が?」
『あるとすれば……悪魔の類かあるいは堕神か』
「悪魔? 堕神?」
「聞くだけでヤバそうな相手だな」
『だとしても意図的な異世界転移などできぬと思うのだがな。まあ森で感じ取った限りはそこまで恐れるような相手では無い。だが我を罠に嵌める狡猾さはあるということだな』
新しいワードが出てきたな。
悪魔に堕神か。
厄介なイメージしかないよ。
「でも世界や国単位じゃなくて個の仕業だとするならいつも田舎に歪みがおきるのもわかる気がするぜ」
「ギル、どういうことだ?」
「歪みは異世界とこの世界が繋がる現象なんだよ」
「だから?」
「世界は違えど物理的には同じ場所で起きてるんだ」
「意味が分からん」
「向こうもコソコソ田舎で強制転移させてるってことだ」
「それはわからなくもないけどあっちが田舎だからってこっちも田舎とは限らないだろう」
「そりゃそうさ。でもそもそも歪みは隣り合った似てる世界でしか起こり得ないんだ。似てるというよりほとんど同じさ。ほんの少し次元がズレてるだけなんだよ」
ギル曰く。
この地球と瓜二つの世界があるということらしい。
いわばこの世界と異世界は鏡越しのイメージ。
科学文明か魔法文明かの違いくらいしかない。
隣り合わせだからこそたまに時空が偶然繋がってお互いにハグレが起きるらしい。
「文明が違うだけってことさ」
「一発目はたまたま向こうでは人のいないコソコソしやすい場所だったのがこっちでは大きな公園だったってことだな」
「そういうことだ」
鏡越しの世界か。
なんか腑に落ちたな。
一万年の知識を持ったドラゴン。
世捨て人みたいな生活だったみたいだけど、少しくらいは異世界のことが分かるかもしれないな。




