表の仕事が増えた
シシくんとの顔合わせは大成功だった。
シシTVの開局はまだ世の中に開示されていない。
現時点で決まっている社外パートナーは私たちだけだということだった。
とんでもなく名誉なことじゃないか!
なによりこれでユキナとミズホは配信中心に動ける。
二重生活もこれでかなり楽になるな。
そしてその日の夜。
大事な話があると、珍しく親父と伊東さんから全員に集合がかけられた。
珍しいこともあるものだ。
なんの話だろうか。
「集まってくれてありがとうな。いろいろ動き出すことも決まったからな。伊東さんとも相談した結果、ウミクリエティブはホールディングス化して関連会社を持つことにしたからその報告だ」
「はい?」
「ウミは明日からウミホールディングスの会長な。がんばれよ」
「!?」
「関連会社にはまず芸能プロダクションとしてウミクリエティブ。これは今まで通りにユキナとミズホの芸能セクションで、社長はウミのままだ」
「まず? いま、まずって言ったよね?」
「次に映像制作会社のウミプロダクション。ユキナとミズホのシシTVの番組コンテンツ制作会社だ。ついでにCMなんかの広告制作もやれ。これもウミ社長だ。がんばれよ」
「いやいや」
「建築会社のウミホームズを新規で作るぞ。これはいろいろ専門知識も必要だからアキラが社長だ」
「は? オレ?」
「次に車両管理でウミモーターズ。普通の車じゃないぞ。働くクルマから装甲車、キャンピングカーまでな。海外から買い付けてこい。これは古杉社長」
「ええ!? いやちょっと嬉しいやん」
「次にウミエナジー。海外からの原油輸入はもちろん、太陽光発電を主体に風、水とあらゆる創電をするぞ。三花社長、よろしく頼む」
「な!?」
「次、ウミ商事。総合商社な。日本に限らず海外からありとあらゆるものを集めてもらう。一番キツイかもな。でも里山社長なら大丈夫だ」
「はいー?」
「最後にウミ技研。魔法とバレずに新技術を世に送り出そうか、掛川社長」
「うひょー! いいんですか!?」
「親父と伊東さんは?」
「俺たちは顧問だ」
「なんだとー! なんかズルくないか?」
「バカ言え、お前ら全員のケツ拭いてやるんだよ。一番キツイのは俺たちだ」
「「「「「なんかすみません」」」」」
「もともとウミが持ってた資産を転がして膨らませておいた。私の資産もすべて持ち出すからかなりの資金力になる。ぶっちゃけこの時点で日本一の企業だな」
全員、絶句であった。
親父と伊東さんが言うにはこうだ。
いずれ世間にもこの騒ぎはきっと知れ渡る。
その時に世の人たちを救えるように今から活動をしておこうということだった。
いま言った関連会社は現実世界と魔法世界が混ざり合い、そして理解し合うまでの「つなぎ役」として機能させるのだという。
なるほどそれは確かに必要だろうな。
いきなり魔法だとか言われても信じるものはいない。
実際に目の当たりにしたとて理解が追いつかないし、受け入れられないだろう。
だからといってぼんやりもできない。
「知る者」が備えておくしかないのだ。
それがこれらのカンパニー群だということだ。
Xデーの前にこれらの関連会社が機能していればそれなりに人類を守れるだろう。
もしも人類にも避難先が必要になるならそれは新天地だ。
既存世界のシステムがそばにあれば安心材料にはなる。
あらゆる可能性を考えて動かないと確かに時間は足りないな。
親父と伊東さん、すげーわ。
みんな観念して働きまくるしかなかった。
若い衆もフル動員して馬車馬のように働き続けて、歪みにも対処しながらひと月が過ぎた。
表の仕事しかしない会社とはいえ、裏ではちゃっかり魔法も効率よく使いつつ業績は破竹の勢いで上がり続けた。
各業界で注目を浴びるようになり、社員も増え続けて立派な会社となり、世間にもウミグループが知られるようになった。
その快進撃にさらに拍車をかけたのが、解禁となった「シシTV」の開局発表だった。
現時点で唯一の参加が許されていたパートナー企業にウミホールディングスの名前があったことでこの会社への期待値が爆発した。
そう。
株価が跳ね上がり続けたのだ。
名だたる企業がどんなに大金を積んでもそれだけでは簡単には協賛を許さないというのがシシTVだ。
「社会に貢献し、健全である」
これだけが絶対で唯一のポリシーだった。
実際に、勝手に協賛宣言をしていた世界的企業がそれを断られたということがニュースになってしまってからはその価値はさらに高まっていたのだ。
そこにウミグループが真っ先に名を連ねていたのだ。
すでにその株式資産はとんでもないことになっていた。
「雑誌の表紙飾ってる場合じゃねーわ!」
出版社の人には聞こえないように親父に文句を言う。
「お前の顔と名前が売れれば売れただけ人命を救えると思え」
「ずるいよなそれ。もう十分にグループの名は上がったじゃんか。海とウミの二役はきついって」
「お金はあるだけあればいい。実際はコピーで無制限に増やせるとはいっても魔法が開示されてさらに理解されるまではそれを公にできないんだよ。なら金持ちになってそれがあってもおかしくないと思わせるしかないんだ」
「ぐう正論」
「ほら働け働け。にっこり笑って次はテレビ出演だぞ」
「いやだーーー!」
―――――――
1日メディア取材を受け続けた私はメンタルを消耗しきって露天風呂でぼんやりしていた。
そこにやってきたのはいつもの3人だった。
もはやバスタオルも付けていなけれど、それももう慣れたものだ。
「疲れ切っているねー」
「ミズホはこんなことを毎日やってるのか」
「私だってだよ」
「……ユキナも偉いよ。ふたりともこんなに頑張ってくれてたんだなあ」
「何言ってんの。私たちはやりたくてやってたんだ。いつも助けてくれたのはウミさんだよ」
「………そう言ってくれるなら救われるよ」
「私は、私はタレントじゃないけどウミさんの頑張ってるのはちゃんと見てますから!」
「…………わかってるよ。サチも、いつも応援、、、ありがとう、、、な」
疲れすぎてなんかいかん。
覚醒してから身体は寝なくても平気だったのにな。
メンタル疲れはこうも効くものなのか。
ちょっと、寝る、、か。
ふぅ。
ん?
そんなはずあるか?
「お前ら魔法使っただろ!」
「げ」
「バレた」
「なんで!?」
「「「ごめんなさい!」」」
油断も隙もねえ!
問い詰めたら「疲れてるなら反射も効かないかも」と話し合った結果、3人で力を合わせてスリープをかけてたらしい。
ギリ回避だ。
はー危なかった。
まったくもう勘弁してくれよ。
本当に疲れてるん、だって、、、
ふう。
ん?
「懲りてねえ!」
3人は蜘蛛の子を散らすように逃げていったのだった。
はあ疲れた。
なんで3人同時にくるかな。
自分たちで順番まで決めてるんだから本気なら一人ずつだろうが普通。
だからってしないけどな!
はあ。
やっと、一人に、、、なれた、か、
ふぅ。
おい!
「遠隔すんなー!」
遠くで悲鳴が聞こえた。
まあかわいいよ。
いいものいつも見せてくれてありがとう。
励みになります。




