新天地
驚いたことに翌朝には伊東さんが覚醒した。
数値も尖がった規格外だ。
伊東忠男
HP→35
MP→1300
攻撃 →18
防御 →200
魔法→1800
スピード→20
運→999
固有スキル/魔道士
【肉体強化】(微)
【魔法全属性】
【語学】
【魔力回復】
スキルは魔道士。
肉体的な強さこそないが、遠距離攻撃も味方支援もできる魔法特化のスペシャリストだった。
「ワシもじじいだけに体力はないんだな」
「いや、それでも人類最強格より強いですからね」
「オヤジさすがだな」
こうなってくるといつ社員たちが覚醒してもおかしくない。
でも伊東さんとアキラがいればしっかり仕切るだろうしなんの問題もないだろう。
あいつらも一途で面白い奴らだし。
仲間になったら楽しそうだ。
みんなで朝食を取ったあとは私はさっそく新天地の再構築に取り掛ることにした。
準備をしていると三人娘が付いていくと騒ぎだした。
「放置しすぎだと思う」
「拗ねるよー泣くよー」
「忘れてますよね」
確かに最近は忙しかった。
付いてくるくらいならまあいいか。
古杉くんと三花くんにそのことを伝えたら、だったら自分たちも付いていきたいと訴えてきた。
と、そんな騒ぎをしていたらアキラも聞きつけて行くと言い出したので、そこまで来ると親父と伊東さんだけ置いていくのもなあということになり、結局ファミリー総出で拡張統合のツアーに繰り出すことになったのだった。
―――――――
「とりあえず繋いでみたぞ」
富士山もどきの山頂にみんなを連れ出して眼下に広がる新天地をお披露目した。
「どうよ? すごいだろ!」
みんなは呆然としている。
そりゃそうだろう。
みんなを驚かせようと夜な夜なコツコツ作ってきた新世界は実にバリエーションに富んでおり、その数はゆうに100を超えていた。
さらにはその一つ一つがバカみたいに広かったので繋げてみたらその広さはもっとバカげたものになった。
「どこからツッコめばいいのやら」
「おいアキラ、どこにツッコむ要素があるんだよ」
「ツッコミどころしかねえよ」
「男のロマンの塊だろうが!」
「さすがにやりすぎでしょこれは。これどんだけ広いんですか」
「ふるっちよくぞ聞いてくれた。さっきまるごとコピーして倍にしたからいまで世界二つ分だ」
「どんだけやねん!」
「めちゃくちゃだねー」
「ねえこの富士山もどき、何メートル?」
「8,850メートル」
「なにチョモランマにちょい勝ちしてんのよ」
「いやそこはやっぱり勝っときたいだろ。ユキナにはわからんのか」
「なんでここ寒くないのー?」
「寒いのは嫌だろ。常夏にしといた」
「ミズホはいいと思うよー」
「だろ?」
「あれ? あそこにエスカレーターついてます?」
「お、よく気づいたなサチ! こうすりゃ年配の方も登れるだろ」
「「それはみんな喜ぶな」」
反応はさまざまだけど気にするもんか。
楽しかったからいいのだよ!
「まあでもこれだけ広けりゃ住み分けもできそうですね」
「平原に山、川、海、谷、森となんでもござれだ」
三花くんからもお墨付きがもらえた。
「これで次からゾンビ以外のハグレはここに転送してみようと思う。どうかな、親父、伊東さん」
「いいと思うぞ」
「やってみなさい」
よし、準備は整ったぞ!
―――――――
自宅に戻ったところで来客があった。
掛川プロデューサーだ。
「どうしたんです? 事務所に来るなんて」
「……暇なんですよ!」
「へ?」
「もっとミズホちゃんを輝かせるために動きましょうよ!」
「はい?」
「世界を動かす才能を埋もれさせるなんてあり得ない!」
「いやいや」
「あの才能の塊! ミズホちゃんに1秒のオフも許されないんです。彼女はもっと、もっとこの荒んだ世界を幸せにできる!」
この人は。
本当にいい人だな。
こんなにもミズホのことを評価してくれる。
「掛川さん。ありがとう」
「お礼なんていいんです。僕は彼女の歌声を聴いたときに人生が変わったのを確信しました。あなたには彼女の歌を世界に届ける責任があるんだ」
よし決めた。
「掛川さん、あなたクビだ」
「え?」
「今すぐフルフルを辞めてもらいたい」
「そんな!」
「フルフルのミズホプロジェクトからは降りてもらう」
「僕はミズホちゃんの力を信じてるからこそ!」
「わかってます。なのでフルフルを辞めてウチに来てもらいたい」
「え?」
「明日からウミクリエイティブの社員になってもらえませんか」
「!」
「どうでしょう。全力で。すべての時間を使ってミズホを動かしてみませんか? 」
「も、もちろんです! 願ってもないことです!」
「じゃあこのまま最終面接。上に来てください」
事務所に上がってもらいそのまま全員と顔合わせ。
満場一致で掛川くんの入社が決まったのだった。
ミズホと仕事をする気満々なのは申し訳ない。
実際には世界を救ってもらう手助けをしてもらうんだけどな。
騙すみたいで申し訳ないけど彼とは良縁を知らせるサインが届いてる。
きっと仲間になってくれるに違いない。




