ワルモノ退治
北議員が救いようのないクズだということは理解した。
あとはきちんとした制裁だ。
自分のしたことには責任を取ってもらおう。
現時点では逆恨みによるアキラのオヤジさんへの不当な勾留。
あとは汚い金の横領か。
金は隠し場所を突き止めてひと目につくように資金を全てさらけ出せばいいよな。
その流れで政治家生命が終わるだろう。
とりあえずどこに隠してるのか調べてみるか。
とはいえ神眼っていっても「金の隠し場所」って聞いてもそこまで汎用性ないよなあ。
――あ。
わかってしまった。
神眼ヤバいな。
今日のアガリはさっそくその場で抜いてんのね。
どうりでこのご時世、会場での現金徴収って変だなと思ったんだよ。
ほうほう、受付の裏が抜いた金の隠し場所ね。
だから息子があんなところでウロウロしてんのか。
とりあえず裏金はいつでも回収できるようにしておこう。
時間停止してホールを出て受付へ戻る。
そのまま受付の裏の部屋に侵入。
お金を置く場所を新しく作ったマジックボックスとリンクさせてと。
これでいつでもお金は瞬間移動が可能になったはず。
小部屋を出てホールに戻ってから時間再開と。
親父には一連の話と隠し資金はいつでも金を抜けることを伝えておく。
あとで泣いてくださいね。
抜いたお金は警察にお届けだな。
なんか証拠になるようなものがあればいいのだけど。
会場ではその後しぱらくしてひと通りの議員によるパフォーマンス(笑)が終わり、ようやく歓談タイムとなった。
北議員が真っ先に駆け寄ったのはやはり親父のいるテーブルだった。
撮影クルーを引き連れて鈴木総帥との縁を公表したいようだな。
おー、生配信してんのか!
これは面白くなるな。
「鈴木総帥! お目にかかれて光栄です。今日はわざわざお越しくださりありがとうございます!!」
「たまたまですよ。近くに来たものでね」
「なんだって構わないんです! 私をご支援いただけるなんて夢のようですよ!」
そこで親父は表情を一変する。
「何の話だ? 私は君に苦言を呈しに来たのだよ」
「……え?」
ふたりを見守っていた周りの空気が一変する。
そして親父は戸惑うクズ議員に鋭く問いかける。
「まずこの資金集めのパーティーだ。各政党が軒並み自粛する中、いくら個人の開催は許容されているからといってここまで大規模にバカげたパーティーを開催できるデリカシーの無さは一体どこからくる?」
「いや、何を突然こんなところで……いやこれは資金集めなどではなく……」
「なら一体なんだね? 」
「あくまで支援者を集めた勉強会ですから」
「歌を聞くのが勉強かね?」
「いえ、あれはリクエストに応じただけで。本来はお金などいただかなくともいいと思ってはいるんですけどね」
「私は入り口でひとり5万円を現金で求められたが?」
「それはその、高額なお料理も出しておりますし」
「ほう。私もここでよくパーティーを開くがこの料理はここのものではないな。無理を通して持ち込みで安く済ませているだろう」
「え、なんでそんなことがわかるん……いや私は知らない。あれだ、秘書の手配ミスだ」
しどろもどろになりながら苦しい言い訳を繰り返しているところに容赦ない一撃。
「で、裏金はどこに隠してるんだ?」
「え!? いや、え? 何をおっしゃってるのですか」
「当然そのくらいことはしているだろう」
「そ、そんな馬鹿げたことするはずかない!」
「ほう。なら隠した裏金は要らんのだな?」
「要るも要らないもそんな金など無い!」
「わかった。いいだろう」
親父は私に目線を送ってきた。
目配せで了解のサイン。
裏金をマジックボックスに瞬間移動させる。
(マスター。ノートも入ってるぞ。これ帳簿ってやつだろ。金の流れも載ってるぜ)
ラッキーだな。
これでバカ議員は完全にアウトだ。
「鈴木総帥、誤解は解けましたか」
「まだだよ。では君と警察庁長官の関係を教えてくれるか?」
「な!? なにをいきなり。確かに長官とは旧知の間柄ではありますが何の関係が……」
「悪質な違法捜査をした息子が懲戒免職にならなかった時点で世間が騒いだね。その影響で君も辞職に追い込まれたわけだが」
「それはもう終わった話だ! なんだ大人しく聞いていればさっきから!」
「ん? なにか都合が悪いことでもあるのかね。いきなり声を荒立てて」
「い、いや、そんなことは……」
周りを気にしながらさらに狼狽するクズ議員。
配信を止めさせるのも忘れてるな。
「聞きたいのはいま獄中にいる伊東さんついてだよ」
「!」
「たかが部下のケンカで何年も刑務所に収監されているのがおかしな話だ」
「わ、私には関係のない……それに反社の人間を擁護するようなあなたの発言は……」
「息子の悪事を伊東さんに暴かれているな。彼らを反社とするかは当時は意見が割れていたそうじゃないか。そもそも君が相当な圧力をかけて伊東さんの会社を反社認定させろと騒いだそうだな。意趣返しだというのがもっぱらの噂だ」
「…………な、なんのことだか」
「そうかね。長官に聞いたらその場で謝罪してくれたぞ。つまらないハニートラップにかけられて君に恫喝されたと」
「し、しらん!」
「まあいま話したことは明日記事が出るよ。それを読めばいろいろ思い出すんじゃないか?」
もはや顔面蒼白で体は震え出している。
そうだよ。
お前は敵にしてはいけない人を怒らせたんだ。
そこにバカ息子が息を切らせて走ってきた。
「パパ大変だ! 隠していた金が無くなった!」
なんといいタイミング。
よほど慌てたんだろうがそれにしてもこんな公衆の面前で何を大声で叫んでるんだ?
こいつ本当にバカなのか。
取材に来ていた記者に囲まれるバカ親子。
まあこんなもんだろうな。
「親父、おつかれさま」
「なあに大したことではないよ」
アキラは涙を流して親父の手を握っていた。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「うん、気にしなくていい。こういうのは許せない性分でね。それに私も伊東さんには借りがある。それより助けるのが遅くなってすまなかった」
「うう、そんな。ありがとうございます」
「各所とは話がついている。すぐにオヤジさんに会えるさ」
不思議な縁があったんだな。
それそれ有名人だから繋がりかあってもおかしくないが。
「親父すごい人だったんだな。まさかあの鈴木総帥だったなんて。顔は知っていたのに全然気が付かなかったよ」
「ふふふ、そんなもんだろ。シェフになりきってたからな」
これで伊東組長は……いや伊東社長はアキラたちの元へ帰れるだろう。
世直しもできたことだし、気持ちを入れ替えて明日からはまたモンスター対策に勤しもう。




