ファーストミッションクリア………なのか?
会場の裏に転移して何事もなかったようにスタッフルームへ。
インカムで警備にあたってくれていたメンバーへ労いの言葉をかける。
「みんなお疲れ様でした。皆さんのおかげで何事もなく無事にイベントを終えることができました。ありがとう」
三花くんが駆け寄ってくる。
「社長、これで大丈夫なんすか?」
「ああ。もう大丈夫だ。越上が拘束されてたんだ。今回はたちの悪い嫌がらせだったってことで終わりにしよう」
「そうてすよね。あー、疲れた。とにかく何事もなくて良かったっすよ」
「そのとおりだな。対応ありがとうな。さあミズホを迎えに行こう」
控室に入ると案の定ミズホが飛びついてきた。
まあ今日はプレッシャーの中で本当によく頑張ったよな。
ここには身内しかいないし、しばらくはこのままにさせておこう。
「さあもういいだろ。みんな待ってる。さっさとシャワー浴びてこい。ドアの外で待ってるからな」
「えー、一緒に入ってよー」
「入るわけない。さあ急げ!」
不貞腐れるミズホをシャワールームに追い立ててから部屋の外へ。
三花くんには古杉くんに無事なことを電話で伝えてもらうように頼んで少し距離を取る。
「ギル、ちょっといいか」
「はいよマスター」
「予知ってどれくらいの範囲に有効なんだ?」
「ん?」
「越上の件があったから過剰に対応してきたわけでさ。あれがなきゃいつ今回のことにアラートが鳴ったのかなって」
「まあオレを呼んだあの直前のタイミングだろうな」
「だよな。今回は歪む場所がたまたまミズホのイベント近くだったから良かったけどさ。もしここにいなければどうなってた?」
「あの規模だからな。離れててもアラートは来たと思うぜ」
「でも間に合わないよな?」
「それはそうだな。駆けつけたときにはそれなりに被害が出ていただろう」
「おそらくは世界の異変には反応するけど、必ずしも近くには居られないってことだよな」
「あるいは巻き込まれ体質ってのもあるぜ」
「むしろそれならいいさ。身内だけが助かればいいとは思ってない。優先順位はあってもできる限りは助けたいんだよ」
「わかったよマスター。今晩、作戦会議だな」
その後は身支度を整えたミズホを連れて会場内で行われていた打ち上げに参加した。
まずは掛川くん、大谷さんと握手。
ここまでの騒ぎにしてしまってことへのお詫びとともに協力に対して心からのお礼を伝える。
「そんなのは全然いいんですよ! ウミ様と知り合えて、オフィシャルスタッフに加えてもらえたんですからね! こう言っちゃいけないのは承知の上、越上にも感謝したいくらいです!」
「まあとにかく無事にフェスが成功して良かったよ」
「結果的に私が大騒ぎしただけのオチですよ。本当にご迷惑をおかけしてしまってすみません。この借りは大谷さんには必ずお返しします」
「お、そりゃありがたいな!」
みんなで乾杯をして今日のところはここまでとした。
あれこれは事後協議だ。
ひと通りのスタッフに挨拶を済ませてから会場を出た。
三花くんの移動車でクルマを停めてあるテレビ局まで送ってもらい、彼とはそこで解散。
頃合いを見計らってクルマを収納して自宅へ転移した。
―――――――
屋上リゾートに転移すると、ユキナが食事を作って待っていてくれた。
「「ただいま!」」
ユキナは真っ直ぐにミズホの元へ走り寄り彼女を抱きしめた。
「おかえりミズホ。無事でよかった! よく頑張ったね。怖かったでしょう」
ユキナにそう声をかけられたミズホが突然涙を流し、号泣した。
そうか。そうだよ。
怖かったに違いにないよ。
思いやりが足りなかったな。
「ミズホ、無理をさせてすまなかった。よく頑張ってくれたな」
頭を撫でながら私もふたりを抱きしめる。
「頑張ったご褒美になんかプレゼントしてやるよ。欲しいものがあったら言いなさい」
それを聞いてミズホはパッと顔を上げる。
「言ったね!なんでもいいんだよねー」
「もちろんだ。ユキナもいいぞ。不便をかけたからな」
ふたりは目を輝かせてすっかり元気になった。
「決めたー!ミズホは3人で旅行に行きたいー!」
「それいいね! ユキナも3人旅行にする!」
「いいだろう」
「ミズホは北海道!」
「ユキナは沖縄!」
「どっちかにしろよ」
「ミズホのおねだりの3人旅行とユキナのおねだりの3人旅行で2回行くんだよー」
「当たり前じゃない!」
「マジかよ」
「「マジだよ!」」
「まあいいか……ふたりには話しておくことがある。世界を救う話だ。とりあえず食事のあとに時間をくれ」
私は今日何が起きたかを伝えることにした。
歪みが起きてハグレの群れには対処できた。
ファーストミッションクリアといいたいところだが、これは偶然の結果に過ぎない。
そもそもこれがミッションなんですよね? って感じだし。
うん。
これからどうしたらいいんだろうな。




