エピソード22
「他に質問はないの? 」
彼が言う。
どんな質問をすればいいのかと思う。
さっきの質問は辛いことをおもいださせたようだ。
「なんでオレだったんだ? 」
これは聞きたいことだった。
「俺の好みで俺と同類だと思ったから」
そんなことで選んでよいのかと思ったが――。
「同類ってどういうことだ? 」
「女に欲情しないってこと。間違ってた? 」
タカは思わず笑った。あまりに直接的な表現だがあっている。
「いや、そんなこともわかるのか」
「大事なことだからね。女が必要なやつはこの体になると辛い。女はこの体になれないから」
「そうなのか? 」
ユカがこの体にして欲しいと言っていたが、無理だったということだ。
「経験的にそうだ。理由はわかんないけど、何度も試してたやつがいたけど、一人も成功していない。最後は蛹になって、ほっといたら鳥につつかれて散っていった」
「助けてやらなかったのか? 」
「辛いだけだろ。新しい人生をやり直した方がいいさ」
「なるほど」
「お前は好きなやつがいたのか? 」
それは男前提の質問だろう。
「まあな。もう結婚して子供もいる」
「明日見に行こ」
「え? 」
「知りたいんだ」
「まあ――いいけど」
知られたところで何も問題はない。
「俺のことも知りたいだろ? 」
「聞いていいのか? 」
「話したいんだ。俺、こう見えても良い家のぼっちゃんだったんだ」
「へえ」
意外も意外だ。
「三男坊だったから、すげえ自由で。兄ちゃん二人がすげー優秀だったから、ほっとかれてて。それがさ。急に、親が結婚決めてきて、それが王女様ときたもんだ。ちょうど年があったんだと。王家と繋がりがもてるなんて栄誉だとかなんとかで。礼儀とかマナーを仕込まなきゃいけないっていうんで、家に缶詰にされて、それだけならいいさ。俺に女の相手なんてできるわけないじゃん。無理無理無理。粗相があったら、親のメンツがつぶれるわけだし、で、家を出たわけよ。岸壁に靴置いてその中に『先立つ不孝をお許しください』って手紙を入れておいた。それで、いくつも馬車を乗り継いで遠い処まで来たんだけど。温かい時期は畑の手伝いとかで雇ってもらえたりしたんだけど、寒くなると仕事が全然なくて、それで、大きな木の下でうずくまってたんだ。寒いしお腹すいたしで。そこいらへんの草かじって水分はとれても全然お腹の足しにはならないし。そんな時に声をかけられたんだ。『ここで何してんの? 』って。声の方も向くのもしんどくて、『寒くて腹減ってんのを我慢してる』って答えたんだ。そしたら、『お前親いないの? 』って聞いてくるから『いるけど、帰れない』って答えたら『なんで? 』って聞いてくるから『結婚させられそうになって逃げてきた』って答えたんだ。そしたら、『相手がいやなやつだったの? 』って聞いてきて、『俺女だめなんだ』って正直に言ったんだ。そしたら『そっか、そりゃ辛いな』って言うから、いいやつって思って、声のする方向いても誰もいなくて、きょろきょろしても誰もいなくて『オレ、人間からは見えないんだよ』なんて言われて何者? って思うじゃん。でも、逃げる元気なんかないし、そしたら、『オレの仲間になる? もう人間と触れ合えなくなるけど、寒い思いしなくて良いし、お腹もすかないよ』って言ってきて。『なるなるなる』って一つ返事で答えたわけよ。そしたら、そいつの顔が見えて、すげえ好みで」
そこまで言うと、彼は小さくため息をついた。
「よかったじゃないか」
タカが言うと、「まあね」と彼は答えて起き上がりタカを見てくる。タカも起き上がった。
「俺の話を聞いて何か感じることない? 」
彼が聞いてくる。
「苦労したんだな、と思うよ」
「そうだよなあ」
彼は諦めたようにまた寝転がった。
タカは空を見上げた。青く澄みわたっている。風もなく、穏やかだった。




