エピソード21
タカは彼の寝床で壁に背をあずけ座っていた。
彼は相変わらず物言わず横たわっている。
ユカと別れてから村へは行っていない。
ここを離れるのは昼に広場へ日にあたりにいくだけだ。それでも日にちは進んでいく。
そろそろ目覚める頃かと思うと、外へ出るのが躊躇われた。目覚めた時には傍にいたかった。
そろそろ日にあたりに行こうかと思っていた時だった。小さな息遣いが聞えた。
そして、むくっと起き上がる。
どう声をかけていいのか分からなかった。
「まさか、ずっとそこにいたのか? 」
久しぶりに聞いた彼の声だった。
「いや、そんなことはない。今から日を浴びに行こうと思っていた」
「ちょうどよかった。行こう」
さっさと起き上がると、彼は出て行く。タカが外を覗くと、彼は丁度正面の少し離れたところに浮かんでいた。
「日の光は気持ちいいなあ」
「ああ」
なんだか嬉しかった。同じ仲間がいる。
色々聞きたいことがあったはずなのに、すべて飛んでしまった。
一緒に飛んで広場まで行き、草の上に寝転んだ。
しばらくして、ふと気になった。
「オレたち以外に仲間はいるのか? 」
彼のねぐらにいた時も誰も来ることはなかった。
「難しい問題だな。答えになるかわかんないけど、俺たちにかかわることを話すよ。これまでにいきさつなんかを」
寝転んだまま、彼は話始めた。
「遠い昔、アヴェラ・アスラっていう爺さんが、犬を連れて旅をしていた。険しい山を登っていた時に、誤って落ちて大けがしてしまったんだと。その時に助けてくれたのが山人って種族のやつで、俺たちみたいな体になった。で、それから、故郷の家族の元へ帰ったんだが、爺さんの親友が病で臥していた。死にたくないから同じ体にしてくれと言われたんだと。それで、この体にしてやったら悪事を始めたってことで」
「悪事って? 」
気になった。
「主には神の花を素にした薬を暴利で捌くっていう。お決まりのやつ。まあ、本当に効くんだし、同じ体にしなくても治すことができるんじゃないかってことに気づいたのはすごいんだろうけど。値段にも限度ってものがあるだろうよっていう。それで、アスラ爺さんの友達の息子が親父を止めたいから、同じ体にしてくれって言ってきて、まあ、アスラって爺さんは情が深いらしくて、ほいほいと同じ体にしてやったんだと。それから、争うために両方とも人を集めだしたんだってよ。まあ、そんな頃、俺もこの体になったんだけど、争いや金儲けなんて興味なかったし、良い相棒がいてこの森っていう良い場所見つけて、のんびり過ごしてた。そしたら、鳥に乗って飛んでくやつを見つけたんだ。懐かしさもあって、声をかけたら、戦いが始まるから人を集めているとのことだったんだ。それだけなら、無視したかもしれないけど、アスラの爺さんが亡くなったって聞いて、行ってみることにしたんだ。戦うっていったってどうするんだって疑問だったし、ダメージ与えても回復するだろって思ってたんだけど」
彼は黙りこむと大きく深呼吸をした。
「行ってみたらすごかった。色んなものが飛び交ってた。火や稲妻や氷や岩や剣やなんか、傷つけられるもんならなんでもって感じだった。呆然としてたら、『あぶないっ』って相棒が俺をかばって傷ついて『逃げろ!』って俺のことを飛ばしたんだ。すごい力で。俺は体を動かすこともできない勢いで遠くへ飛ばされたんだ。小さくあいつが落ちていく姿が見えた。それっきり、俺はずっとここにいて仲間というものを見ていない。それが答えになるか? 」
「普通の人間ならともかく、体は修復されるんだろう? 数は減らないんじゃないのか? 」
「レベルが違うんだよ。大きいやつ一発受けただけで蛹になるやつもいた。イメージできれば何でもできるはずとは聞いていたけど――あんなもんを人に放てるなんて。アスラ爺さんが亡くなったっていうからとんでもないことがあったんだろうけど、戦うってことを甘く考えてた」
「そうか――」
彼が言っていたとおり、答えは分からない。
けれど、タカはこれ以上聞くことを躊躇われた。
壮絶なものを見たことだけは確かだ。
今感じる日の光の温かさだけが救いだった。




