エピソード15
「ありがとう。これだけ集めるの大変だっただろう? 」
シュウが言う。
二人で分類、整理しながら話始めた。
「みんなが協力してくれたから。手が必要だったらいつでも言ってくれって」
「有難いな。おれは一度村を出ていったのに」
「誰もそんなこと気にしてないよ。村の規則を守っただけなんだから。それより、何を作るんだ? 」
「東屋に屋根をつけたいし、道具を置く小さな小屋も作りたいし、余れば燻製器を作ろうかなと」
「それ、いいな」
コウが声をはずませる。
「みんなに使ってもらおうと思ってるよ。まあ、のんびりやるさ。手伝ってくれるのは助かるが、コウも自分の家のことがあるだろ無理しなくていいよ」
「できることは限られるけど、タカは恩人だから、何かしたいんだ」
「おれはタカじゃないぞ」
シュウが笑う。
「タカならきっとシュウを手伝いたいだろうと思うから――タカがさあ、最後『ごめん』って言ってたんだ。謝ることなんて何もないだろう? なぜなんだろうってずっと思ってるんだけど、わからない」
コウの問いにシュウは笑った。
「それは、コウに今みたいな情けない顔をさせたことにだろ?
リョウが言ってたよ。何度もタカの名前を叫んで崩れ落ちてたって。ショックだったろうことは想像できるけど」
「で、でも。ユカのことを頼むとかなんとか――そっちの方が大事だろうに」
「コウの方が心配だったのかもしれないぞ。コウはぼろぼろだったけど、話を聞いたユカの方が落ち着いていたと聞いた」
木材の大きさが近いものが合わされ、束ねられていく。
「うん。なんであんなに落ち着いてられるんだろう。自分に置き換えたら、とてもあんな風にはいられないよ」
シュウは考えるように手を止め視線を伏せた。
「――ここだけの話だぞ」
そう言うと、シュウは声を潜めた。
「たぶん、タカはユカのところに来てるよ」
「え? ユカは何もないって言っていたよ」
コウは驚いたような声をだした。すかさずシュウが人差し指を口にあてる。
「タカが言うなと言っているんだろう。タカとユカが繋がっていることを知られたら、何を言ってくるやつがいるかわからないから。タカは神と繋がってることになってるんだろ」
「そうか。でも、なぜシユウはどうしてタカが来てると思ったの? 」
「ユカが時々空を見上げるようにするんだけど、きまって同じ方角なんだ。そんなの、そこにいるかもしれないって思ってるってことだろ。それに、家の裏口がいつも開いている。共同作業に行ってる時にもだ。誰かのために、いつでも、家の中に入れるようにだとしか思えない」
シュウの言葉の後少し沈黙が流れた。コウも作業をする手を止めている。
「お前はタカが戻ってきてることに喜ばないのか? 」
聞いたのはシュウだった。
「――それは、ほっとした気持ちはあるけど、元の姿のタカなわけじゃないし、シュウのことを思うと複雑――」
コウは口を結ぶ。
「お前は幸せすぎるんだよ。みんなの憧れのリーと子供の時から相思相愛で」
「僕だって、タカがリーのことを好きなのかもしれないって悩んでたんだ!」
コウがムキになって言う。
「そういうことを言うやつもいるけど、そんなこと悩んでどうするんだよ。譲ってもらって喜ぶタカじゃないだろう」
「でも――」
コウが唇を噛む。
「それに、タカが好きなのはリーじゃないと思うよ。リーが好きなら、さっさと別のやつと結婚するさ」
「それって自分の経験ってことか? 」
「まあな。タカは自分は結婚しちゃいけないって思いこんでたんだろうな」
「でも、ユカと結婚したよ」
「だから、ユカは全部知って理解して受け入れたんだろ。そうじゃなきゃ、もっと早く結婚しただろ」
「でも、タカは好きな人がいるって言ったんだ」
「それが人間とは限らないだろ」
「え――」
「それは冗談だけどさ」
シュウが笑う。
「冗談に聞こえないよ」
コウは作業を再開した。あわせて、シュウもやり始める。
「ま、とにかく、タカがユカを助けることはできない状況なんだろうから、おれはおれで楽しませてもらうよ」
「楽しいのか? 」
「ああ。堂々と傍にいられるんだから」
シュウの言葉を聞いて、タカは屋根に飛び上がり腰をおろした。
寝るための小屋まで作る気はなさそうだ。
シュウの感には驚いたが、今の状況は変わらないのだろうということだけはわかった。




