↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の花  作者: 蒼りんご
PR
13/26

エピソード13

「ねえ、タカ、タカの幸せって何? 」

 ユカが再度聞いてくる。

「――ユカが幸せであること、かな」

 今、一番願っていることはそれだ。

「そうやって、タカはいつも誰かのことを思ってる。そうじゃなくて、タカは自分がどうなりたいって思うの? 誰にも見えないのだから、ずっとコウの傍にいることもできるんだよ」

 ユカが意外なことを言う。

 そんなことは考えたこともなかった。

「コウには最愛の妻と子供がいる。幸せでいてくれたら、それでいい」

 それ以上に望むことがあるのだろうか。

 

「ねえ、タカは昔からよく空を見上げてたけど、何を見てたの? 」

「え? 」

 そんなことを聞かれるとは思わなかった。

「空を見上げて、切なそうな顔をしてる。どうしてなのかな、って思っていて、それは、コウのことを思っているのかなって思っていたんだけど、一緒に暮らし始めたら違うのかもしれないと思ってきた。確かに、コウのことはとても大切だと思っていると思うけど――何か、もっと大切な何かがあるのかもしれないって」

「――そんなことは考えたことなかったな」

 事実だ。なんとなく、空を見上げてしまうことはある。そして、胸が痛くなる。それがなぜか自分でもわからなかった。

「タカの一番大切なものは何? 」

「ユカだよ――悲しい思いばかりさせてしまって、そんな風にには思えないかもしれないが」

「違う」

 ユカが笑う。

「タカが私のことを大切に思ってくれてるのはわかってる。でも、一番じゃない」

「そんなことを言われても――」

 タカは困った、思い当たることがない。

「少なくとも、私よりひなたぼっこの方が好きだよ。だって、時間を忘れちゃうんだもん。誤解しないでね。責めてるわけじゃない。タカが好きなら、もっと好きなだけひなたぼっこしてきていいよ。でも、ちゃんと帰ってきてね。ここにいられる間は――」

 ユカは、最後は涙声になっていた。

「ごめん、ユカ」

 おもわず声がでた。

「タカが謝ることないよ。神様には、タカの幸せが見えてたのかもしれないね。タカが幸せならそれでいい。誰かの受け売りみたいだけど」

 ユカの声に笑顔がのっているようだった。

「あと、どれくらいいられるの? 」

「わからない」

「神様はまだ寝てるの」

「ああ」

「――もうすぐ、ひと月だね」

「そうだな」

 しばらく沈黙が流れる。

「タカ――私は一番の宝物をタカからもらった。タカも・・・・――」

 言葉があやふやになり、穏やかな寝息が聞こえてくる。


「ごめん」

 タカは呟いた。

 時間を忘れたのは、日向ぼっこじゃない。ただ、それをユカには言えなかった。

 ただ、それを知られることはないだろうと思う。

 ユカに一緒にいると約束したひと月はあとわずかだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。