File4 双子と決意
「さぁ、いよいよ始まりました。第1回氷川姉弟対決!!どちらが栄冠を手にするか此処、令成学園運動場で行われようとしています。」
一人の生徒がマイクを片手に放送している。
あれは...確か同じクラスの吉澤さんだったかな。確か、図書館司書志望だった気がするのに...何故彼女は実況なんて行っているのだろう。
しかも、結構ノリノリだし...
「優勝賞品は、なんと我が学園の2年生。常盤礼治君です。何と彼を可憐な二人が奪い合う。醜くい者を美しい姉弟が奪い合う。果たしてこれほど悲しく残酷な対決は今迄あったでしょうか。さぁ有志ども。救うのです。彼女たちを魔の手から...」
随分と酷い言われようだ。
多分彼女はどっちかの派閥だ。間違いない。現にそれを阻止する為なのか...
「優希ちゃ〜ん。良く分からないけど。頑張らないで〜」
「麗奈さん。今日もそのもみ足で踏んでくださ〜い。そんな男を無視して...」
「常盤〜くたばれェ、何故お前だけそんな美味しい思いしてんだ!!」
というセリフまで一緒に飛んでくる。
ついでに小石のプレゼント付きで..
正直言って反論しようとしたが、できない事を思い出して諦める。
理由は簡単。俺の体は鎖で縛られていたからである...氷川優希FCによって...
...っていうかあの人ら、気配も無く一瞬で俺を縛り付けたけど、いつもこんなもん持ち歩いてる理由の方が興味あるね
俺は二人の方を見た。
どっちも闘志を激しく燃やしている。まるで観客の声援を無視するかの様に...
「はぁ、なんで俺...こんな事やってんだろ」
「礼治、美味しい立ち位置に居ながら、何溜息なんぞ付いてやがる。」
「若本君、こんなところで何やってるの?」
「俺は、元々氷川優希FCの会員NO.1なんだよ。それをまさかお前ごときが掻っ攫うなんて、図々しいにも程がある」
どうやら、俺は昨日彼女にあった時点で、すでに友情に亀裂は入っていた訳だ。
...素直に諦めよう。頼りになる隣人はもう敵だ。
「負けません。お姉ちゃん。」
「さぁ、掛かって来なさい。此処まで、ありとあらゆる勝負をして、戦績は2425戦200勝200敗2025引き分け。だけど今日こそ勝つわ」
「勿論。何で行くつもり。お姉ちゃんの得意なスポーツ系それとも僕の得意なファッション系の勝負で行くの?」
この二人、見た目通りのスペックなのかな
どう見ても普通は逆な勝負の気がする。性別的に...
まぁでも、双子だからこそ、そうあまり大きな差が無いとも言えるのかもしれない
う〜ん、分からん。とりあえず、俺がやるべき事は一つ。いつでも逃げれる様に準備する事。
それしか無い...この双子には悪い事したなと思っている。せっかく好きになって貰ったのに。
「そんな必要ないわ。これは元々先輩を巡った戦い。審判は先輩にやってもらうべきじゃない?」
「あれをするんだね。」
「そう...私たち双子を見事に見抜いた先輩の為にあれをします。」
と言って、互いにその場を離れ、プールの方へと向かう。
水泳対決でも、やるの?まだ寒いと重けど...
と思った瞬間、双子が一斉に登場して来た。
「「さぁ、先輩どっちが優希か麗奈か当てて、好きな方に手を差し伸べて下さい」」
二人は同じ様な格好をして、俺たちの前に現れた。
そして、大半の奴らは大騒ぎをしたり、鼻血を出してぶっ倒れたりしていた。
そして、さらに小石が増えた。紙屑のおまけ付きだ
こいつら...まさか、思い付かなくて、俺に丸投げしやがったな。
しかも、決着付けるなんて、かっこいいこと言っといて他人任せとか、いい度胸じゃないか。
俺は、FCの方を見ながら聞いてみた。
こんなにも双子愛が深い人達だ。双子の見分けくらいいとも簡単だろう。ちょっと聞いてみた
「因みにお前らは、どっちがどっちか判るの?」
「「「「「「「.................................」」」」」」」
そっぽを向いたり、下手な口笛をしながら、こっちを誰一人俺の方を見向きをしない
若本君なんて、逃げようとする始末。...あいつ絶対あとでしめてやる
こいつら...さてはノリで動いてたな...
えぇい、頼りにならん。
俺は双子を観察してみる。こうしてみると、確かにどっちがどっちかなんてさっぱり分からんな。
性格はどうも真反対みたいなのに、正面から見たらこんなにも違いは無いものなのか...
俺は迷いながら、一つだけ策を思いついた
「参った。俺の負け。俺には無理だわ」
「先輩、此処まで御膳立てしといて、それは無いですよ。」
「うるさい、無理なもんは無理なの。だから素直に諦めた」
「やっぱり、先輩にも私たちの見分けが付かないのですね...」
二人とも寂しそうな表情を見せる。
....こいつら、さては...
俺は、両手で頭をポンポンと叩いてこう言った。
「取り敢えず、今はこれで許してくれや。麗奈と優希」
「「え?」」と呟く。二人
「...右が優希で左が麗奈だろ。間違ってたら悪いが...」
「分かってたんですか、私達の事」
「分かったのは今だよ。大体俺には好きな奴がいるから、お前らどっちかを選ぶのは無理だ。だから諦めてくれ」
と言いつつ、二人と別れた。
これで良し。こうすれば、もう俺を付け狙う事もないだろう。
「優希....」
「ええ、姉さん。やっぱり僕は諦めきれません。」
「私もよ。絶対にあの人から貴方の心を奪って見せます。覚悟して下さい先輩」
二人は決意を胸に秘めた。
一人の男を手に入れることを...