File24 ブルーインパルス6
「俺に勝つって...こいつは傑作だ。一人で何もできなかった奴が俺に勝つなんて不可能に決まっているじゃないか。」
自分の実力に自信があるのか、傲慢な態度をとる瀬戸
「そこまで言うなら、直接決着つけようじゃねぇか。」
「こっちは構わないぜ。タイマンでも」
「上等だ。かかって来い」
と呟いた瞬間、後ろから突如頭を叩かれた
振り向くと、そこには呆れ顔の麗奈がいた。
「先輩、一度頭冷やして下さい。それにベスト4までは2対2ってこと忘れてません?」
「え...?そうだったけ?」
「はぁ〜、大事な事を忘れないで下さいよ。...それに先輩だけじゃないんですよ。ムカついてるの」
麗奈は瀬戸の方を見る。
今回のルールは基本的にいろんな人と組んで行う大会な為、一度組んだ人とはパートナーとして、組むことは出来ない。
なので、俺の場合は、天宮以外の人と組まないといけないのである。
それに対しても、吾関せずを貫くと思っていたが、思いっきり挑発してきた。
「弱い奴に弱いといった事なら、私は悪い事を言ったつもりも無い。現に情けない奴だからな。貴様の弟は」
「あれを見て、お前はそうとしか思わないなんてよっぽど眼に映るものしか信じない奴なんだな」
「結果は目に見えて、初めて意味があるのだ。負けた奴を庇っても惨めさが募るだけだぞ」
「じゃあ、見せてやるよ。貴様がその弱い奴に負ける姿を晒してやるよ」
「やれるものならやってみろ」
互いに睨み合っていると、後ろから執事服を着た男と合流する。
あいつは...確か、Bブロックで勝利を得た...
「会長。自分が僭越ながら、パートナーを組ませて頂きます」
「頼みましたよ。折宮君」
折宮ってルールを作った人と同じ名前だよな。
ってことはまさか...
「安心して下さい。私の兄が作ったものでありますが、私も本番までは何も聞かされていない身でもあります。」
「それを信じると思う。」
「それに、ここまで勝ち上がってきた貴方達なら、分かるでしょう。ルール内容を知ったところで、有利になる要素などあまりない事くらい承知のはずでしょう。」
まるでこっちの考えを読みきったかのように呟く折宮。
「良いですよ。先輩私と組んで下さい。」
「OK、よろしく頼むぜ。麗奈」
「任せて下さい。弟の仇しっかりとってやりますから」
「それでは準決勝、常盤・氷川ペアvs瀬戸・折宮ペアの試合を始めます。」
早速俺はサーブを打つ。
それは強烈に地面に叩きつけられ、サービスエースを奪う
俺は自分を鼓舞するかの様に、追い打ちをかけていく
(さっきの試合よりも明らかにサーブの威力が上がっているな。コイツ)
瀬戸はそう思いつつ、構える。
礼治は再びサーブを打つが、それを折宮が華麗にレシーブをあげる
そのまま、瀬戸はトスを上げて、そのまま折宮がアタックをして1−1となった。
「チッ、あと少しだったのに」
「思考が蜂蜜の様に甘いです。」
折宮は礼治の台詞に対してそう返した。
それに対し、より集中力を高める礼治
「この勝負絶対に負けないのでお覚悟を」
「舐めたこと抜かしてると痛い目見るぜ。クソ坊ちゃん」
こうして、互いに取った取られたを繰り返した。
一進一退の攻防はさらに激しさを増したが、じりじりと確実に追い詰められていたのは、
礼治・麗奈ペアの方だった
(...あっちは随分と余裕があるのに対し、こっちの攻めは確実に相手に読まれている。)
今まで互角に進んできていたが、確実に相手のブロックに阻まれ点差が広がっていく。
恐らくあの折宮という男が、何かしらの策を講じているのだろう
瀬戸はあくまでそれに便乗している印象しか感じられない。
(このまま負けるわけにはいかない。....なら、私にできる事といえば)
「先輩、頼みがあるのですけど...」
「何かいい策でも浮かんだか?」
とひそひそ話で会話をする
それに対し、半信半疑の顔をしていた礼治が、麗奈の話を聞いた瞬間驚いた様な素振りをする。
しかし、その策を折宮はしっかりと聞いており、瀬戸にいう。
その内容とは...
「本気でそんな癖があったのか?」
「えぇ、間違いなく。彼等がブロックするときに打たせたい方向から手を出す癖があるそうで。」
彼らが癖を見せていたという点である。
そもそも彼ら自身バレー選手というわけではない。何かしらの合図があるのを聞こえていたのだ。
それを聞いた瞬間に即座に行動に移す
一回完璧に捉えられたと見せかけ、完全にブロックさせた。
その勢いに乗って、相手が有利になった瞬間まるで相手に見透かされたかの様に得点を重ねられた。
折宮は、最初は気付かなかったものの即座に理解した
自分たちの癖に気付かれたその理由は恐らく彼女が原因だろう
氷川麗奈は元々中学時代から天才の名を欲しいままにしていた演劇女優
その洞察力はまさに折り紙つき、その為短い期間でほんの僅かな癖を見破ったに違いないと考えた。
しかし、それを治そうとしても恐らくカンパ看破してくるだろう
「あら、どうしたのかしら?散々息巻いてまさかその程度って訳ではないでしょう?」
「いい気になるなよ。小娘ェ!!私がこんなところで負けるわけには行かないのだ。」
瀬戸は力強く麗奈に言い放った。そして挑発した瞬間、折宮は違和感に気付く。
なぜ、彼女は執拗に彼を責め立てていたのかを理解した。
(しまった。癖を見抜いて制圧するのが目的ではなく、瀬戸の奴の冷静さを書かせることが目的だったのか!!)
しかし、それを折宮が止める術はない。
なぜなら、彼は他人の言う事なんか聞くやつではないと十二分に理解していたからだ
そして、それを看破したのは間違いなくこの少女
しかし、折宮は奮い立つ様に目の前の少女を見る。
(私は勝たなくてはならない。兄貴の金魚の糞と呼ばれない為に...この男を利用して、地位を気づこうとした私のプランが...)
折宮は暴走する様に嶺二たちと正面切って闘いに挑む。
(...嫌だ。負けたくない!!こんな形でなんて負けたくない!!)
彼は必死にしがみつく。
己の全てを賭けて、勝負に挑む
必ず、兄貴の話題が出てくるのが嫌いだった。
本当は俺自身を見て欲しかったのに、いつも兄貴のお古の様な扱いがたまらなく嫌いだった。
しかし、やっとその機械から脱するチャンスを得たのに、俺はビビっていた。
誰かのサポートに回れば、兄貴の目は気にならないと
しかし、それは勝ってこそ。負けたら何も得られない
(だから勝たねば!!他の何を犠牲にしても!!)
その必死の形相に礼治たちは驚くが、所詮は多勢に無勢。
勝負はじわじわと突き放されていた
そして...
最後に礼治がアタックを決めて、勝敗が決した。
「10−6で勝者常盤・氷川ペア」
折宮はうな垂れる様に前を見つめていた。そして、瀬戸はそんな彼を罵倒する
「貴様のせいだ!!貴様のせいで負けたのだ!!この役立たず」
「...面目次第もございません」
「いい加減にしなよ。貴方」
と瀬戸が怒り狂った瞬間に、麗奈が彼のことを情けないような物を見るような目で見る
それに対し、標的を変更する瀬戸
「だって、そうでしょ?勝ったものが全てというなら、貴方は既に敗北を決したという意味じゃない?」
「それは相手のせいであって、私のせいじゃない」
「醜いことを言うのはやめな。瀬戸」
その時、後ろに突っ立ていた来栖が告げる
それに対し、驚愕を露わにしたような顔で瀬戸は来栖を見つめる
「貴様もよく言ってるじゃないか。『敗者の戯言ほど情けない』と、貴様は今まさにその戯言をほざいてるに過ぎないのだ。」
「う....ぐ.....」
「これを機に、一度は考えを改めることだな。そうでもしなければ、貴様は永遠に停滞の一途を辿るだろう」
そう言って静かに去っていった
「あら?あれで良かったの?仮にも元チームメイトに対して」
「心配いらん。あの程度でくたばるやつならそもそも俺の道には必要ない。」
「へぇ、それで、覚悟は出来てるの。貴方は」
「それこそ、心配は必要ない。何故なら...私はやつと違う点は勝利を他人なんかに預けたりしないからな」
そういって、二人の天才が睨み合う。
その場の人間は先程までのはまるで余興であるかの様な反応を見せていた。
「礼治それに氷川さん。決勝進出おめでとう。今から、僕も行ってくるよ。大舞台に」
と大宮は震える手をぎゅっと握りしめた。
それに対し、俺は素直に手を突き出す
「安心して、戦って来い。お前が負けるなんて、微塵も思っちゃいないさ。」
「そうですよ。大宮先輩だから、あの来栖ってやつにガツンといいとこ見せちゃって下さい」
その言葉とともに背中を叩いて、エールを送る
奴とは短い付き合いだが、いい奴だってことはよくわかる
だから、頑張って欲しいのだ。
それはきっと麗奈も同じ様な気持ちなのだと思う
しかし、来栖と登場してきたのは、覆面をした奇妙な人物だった。
「それでは、準決勝第2試合天宮・大宮ペアvs来栖・覆面Xの試合を始めます」
しかし、この男はまさしく、このブルーインパルスの根底を覆す人間だったのである。




