File10 俺と後輩と宿敵との出会い
あれから、学校が終わりいよいよ練習が始まる
俺は軽いストレッチを済ましてから、練習へと向かう。
壁当てから、ランニング等を行う。
俺の日課の一つであり、部活前には必ず行う様にしている。
部活が始まる前に大鷲監督が言う。
「今日から夏のレギュラー陣はシングルス ダブルスに分けて練習を行っていく。個人の部で出るものもいるだろうが、皆一丸となって戦うことには変わりは無い。皆力を貸してあげてくれ」
「「「「「「「「ハイ!!!!」」」」」」」
という部員の返事と共に俺たちはテニス場へと走っていく。
「よぉ〜礼治君。お互い大変だけど、頑張ろう」
「あぁ、金次郎。こっちも宜しく」
彼の名は日野金次郎。俺と同じ2年でレギュラーの座を勝ち取った男である。
彼は元々1年の頃から、レギュラー争いを勝ち上がってきた男であり、俺と反対のブロックから先輩を押しのけて勝ち上がってきた男である。
「おい、二人とも話すのはいいが、ちゃんとメリハリ付けろよ。大会近いんだからな。」
「うす。部長了解です」
「いつになく厳しいな。水上部長」
「しゃーないでしょ。今回のレギュラーで3年生部長だけだしね」
そうなのである。
今回のレギュラー選抜戦で選ばれる可能性が高かった3年生たちを押しのけて、俺たちはここにいる。
特に俺が戦った諒先輩とかは春のレギュラーでもあるが、俺に負けた事で補欠入り。
金次郎の方だと、副部長を圧巻するほどのプレイを見せて、レギュラー入りを勝ち取ったのである。
「うちの部は誰にでもチャンスが与えられ、それを掴んだものに栄光が与えられる。...だからこそ選ばれたものはきちんと想いを繋げなくちゃならない学校の為、そして此処にいる仲間たちの為にもな...」
と言うのが部長の考えらしい。
部長もかなりの実力者であり、昨年の団体戦でうちが負けた陽光学院との試合では部長のシングルスだけが勝ち
その後2敗して負けた。
その為、部長も次は絶対に勝ちたいと言う思いがより強くなったと言う傾向である。
基本的な構成は、シングルス2が俺でシングルス1が部長。そしてダブルスに金次郎と新しく入ってきた1年の木馬がメンバーとなった。
木馬は中学の全日本のチャンピオンであり、今回も早速頭角を現してきた男だ。
練習はいつものランニングから球出しから始まって、ひたすら、ラリーを繰り返したり、スマッシュなどの調整を行ったりしている。
正直にいうと、いつもの練習の5倍はハードな内容だが、これが結構楽しい。
今迄自分と縁が無かった事が多い為、刺激を受けているのもあるのだろう。
絶対に譲りたくないという思いがより一層強くなっていったのである。
そして帰ってきた日に近くの公園で俺は自主練をする。
テニス専門の壁打ちができる場所であり、小さなことも設置されている公園で寮からもある程度離れている為自主練をするのにぴったりな場所だった。
その為入学当初から結構気に入ってる場所である。
パコーン、パコーンというボールが壁にぶつかる音が夜の公園のBGMとなっている。
その後、寮に帰ってから、俺の1日が終わるというのが大会まで続く俺の日課だ
...しかし、今日は珍しくお客さんがいるらしい。
パコーンパコーンという音が鳴っている。
気になって、いつもの場所に向かった瞬間一人の男が立っていた。
その男は俺も知っている顔であり、一度対戦した事ある男だった。
「おぉ、珍しい。こんなところでまさか知り合いに会うなんて...」
「俺の事覚えてるのか?高山智」
そう、忘れもしない宿敵高山智と遭遇したのである。
しかし、智の方はのほほんとしながら、俺の方を見つめていた。
「...あぁ、中学の時に一度だけ対戦したっけ?でも高校じゃ埋もれてんでしょ。あんまり名前聞かないし」
「...へぇ、そこまで言うのなら、今この場で勝負しろ。」
「良いよ。俺は今日レディと会う約束があってここまで来たけど、まだ時間あるし、相手してやるよ。」
俺と智の一騎打ちが始まった。
勝負は先に1セット取った方が勝ちのルールである。サーブは交互に行う。
先にサーブを打つのは、智の方である。
強烈なフラットサーブで、いきなりサービスエースを取られた。
「おいおい....勝負を吹っかけてきたのに、この程度?」
「上等!!」
こっちもお返しとばかりに、サーブを放った。
それを難なく返球する。
それを素早く返し、ラリーが続く。強烈なストロークに翻弄され、結局0−30となった。
続く、サーブを返すことは出来たのだが、返したボールが浮いたところを華麗にスマッシュされて、0−40となった。
「...おいおい、大丈夫かい君?このままじゃ良いとこ無しで終わっちゃうぞ」
「ウルセェ、まだ終わった訳じゃねぇだろ」
このまま引き下がってたまるか。
俺はフゥーと息を吐く。まだまだと自分を鼓舞し、サーブを放つ
さっき同様見事に打ち返され、ラリーにもつれ込む
互いに深いところで攻め込むラリー勝負となった。
しかし、わかった事が一つある。
恐らく、ストロークのパワーは部長の方がやや上な気がする。
だから、ストローク戦に上手く嵌めれれば、そこで俺の強烈なフラットショットが鋭角に鋭く決まった。
そこを返す、智
しかし、返すので必死だったのかボールが浮いた所を思いっきりスマッシュし、この試合初めてポイントを取った。
俺は、思いっきり決まったのか、思わずガッツポーズをする。
屈辱的な取られ方をしたのか、カチーンとした顔をする智
「やるじゃん。だったらこっちもそれ相応のサーブってのを...」
「何やってんの?智と礼治先輩!?」
と振り向いたところに立っていたのは、氷川麗奈だった。
「お前、なんでこんな所に?」
「...なんでってこの人、私と同じ中学出身で従兄弟だったんですけど..」
「あぁマイエンジェル。何故僕と同じ高校に来なかったんだい。僕はずっと君を待っていたと言うのに」
「アンタがうざいからって事と、私にはもう好きな人がいるので無理って何度も断りましたよね。」
智はがーんと露骨そう中をして落ち込んでいた。
...と言うか、コイツ喜怒哀楽の激しいやっちゃな。
と言うか、「やっぱりか」とでも言いたげな顔で、こっちを見た
「成る程、さっきの態度で合点がいった。君だな僕のスイートエンジェルを誑かしたクソ野郎は。」
「お前、何を言って。」
「貴様、彼女と同じ高校って事は、令成学園のテニス部だな」
「あぁ、俺は確かにレギュラーだ。」
そして智は睨みつけるようにこちらを見て、高らかに宣言をする。
って言うか、どうにも嫌がっている麗奈を見ていたら、なんだかむかっ腹が立って来た
元々、さっきの勝負の件もあるしな...
「貴様絶対に県大会決勝まで勝ち上がって来い。そこで麗奈をかけて俺と改めて勝負しろ」
「...ちょ...いきなり...何を」
「上等だよ。こっちだって、やられっぱなしじゃ終われねぇ、その勝負受けて立つ」
「ふん、逃げずにいた所だけは褒めてやる。今日は俺はこの辺で帰る。この勝負はそれまで持ち越しにしといてやるよ。」
と言って、智は帰っていった。
「先輩...状況が全く、わからないんですが...」
「お前は心配しなくて良い。ちゃんと奴は倒してやるよ。」
...高山智絶対にこの勝負俺が勝つ
俺は月明かりがテラス公園でそう誓った




