第12話 木登り
お話ごとの登場人物
・フローラ ヴィスコンティ子爵令嬢。
・フェルディナン アルセリア王国第二王子。王族聖職者。
・グレイム教会の孤児 ドビー、ミロ、アンナ
三日後。
西日の差し込む光が強くなりはじめる頃、フローラはグレイム教会へやって来た。
たまたま出会った修道士に声をかけると、フェルディナンは孤児院の裏手で子どもたちと遊んでいるらしい。
教えられた方へ歩いていくと、やがて子どもたちの笑い声が聞こえてきた。
孤児院の裏手へ回ると、追いかけっこに的当て、木登り、ままごと。
思い思いの遊びに興じる子どもたちの中に、フェルディナンの姿もあった。
「来てくださったんですね」
フローラに気づいたフェルディナンが、嬉しそうに笑みを浮かべる。
立ち上がろうとした、そのとき。
「フェル様は王様だから、動いちゃダメ!!」
アンナがすかさず声を上げた。
「失礼しました」
フェルディナンは素直に座り直す。
どうやらこちらは、フェルディナンに任せておけばいいらしい。
フローラはそのまま、他の子どもたちの方へ向かった。
すると、トビーが駆け寄ってくる。
「フローラ、追いかけっこしよう!!」
「私はどちらを?」
「追いかけて!」
「わかりました」
フローラがドレスの裾を軽く掴む。
それを見たトビーは、大声で叫んだ。
「みんな逃げろ!!」
一斉に散り散りになる子どもたち。
フローラも走り始めると、近くにいた子どもから次々と捕まえていく。
一人。
二人。
三人。
あっという間に人数が減っていき、最後に残ったのはトビーだった。
フローラがトビーへ向かって走り始める。
するとトビーは、近くにあった木へ駆け寄り、登り始めた。
フローラが木の下へ着く頃には、トビーはあっという間に高いところまで登っている。
「トビー、追いかけっこですよ」
「木登りしたらダメなんて、言ってない!」
どうやら、捕まるのが嫌らしい。
「フローラは登れないだろ? オレの勝ちだ」
目標にされて高いところへ登られると危ないため、フローラは木登りをしないことにしている。
フローラは小さくため息を吐いた。
「では、木登りを始めたトビーを追いかける必要はありませんね」
「え?」
フローラが背を向ける。
「フローラの負けだぞ!!」
背後からトビーの声が飛んできた。
フローラは足を止め、振り返る。
「追いかけっこをしていないトビーが言う筋合いはありませんね」
「……」
トビーが黙り込む。
睨み合う二人。
先に口を開いたのは、フローラだった。
「私を捕まえられたら、あなたの勝ちですね」
「やってやるよ!!」
フローラが走り始める。
それを見て、トビーも慌てて木から下りてきた。
フローラを追いかける。
けれど、今まで追いつけた試しはない。
今日こそは捕まえる。
そう心に決めて、トビーは必死に走った。
ちらり。
フローラが振り返る。
その視線が、まるで自分を煽っているように思えた。
「待てー!」
トビーはさらに足を速める。
少しずつ、距離が縮まっていく。
あと少し。
捕まえられるかもしれない。
期待に満ちたトビーが、フローラへ手を伸ばす。
その瞬間。
フローラがくるりと振り返った。
「え?」
トビーが不思議そうに目を見開く。
次の瞬間には、脇の下を掴まれていた。
「うわっ!」
そのまま、ひょいと抱え上げられる。
「なにするんだ!?」
「捕まえましたので、私の勝ちですね」
「聞いてない!」
じたばたと暴れるトビーに、フローラは至って冷静だった。
「私を捕まえたらトビーの勝ち。私が捕まえたので、私の勝ちです」
「ずるい!」
「最初に木に登ったのはトビーでしょう」
「……ふん!」
そっぽを向くトビー。
フローラはそのまま彼を地面へ下ろした。
トビーは不満そうに鼻を鳴らすと、今度は的当ての方へ向かっていく。
その小さな背中を見送っていると、アンナが声をかけてきた。
「フローラ様、お母さんやって」
「わかりました」
アンナについていくと、フェルディナンも一緒だった。
どうやら王様ごっこは終わり、今度は家族ごっこが始まったらしい。
「私はお父さんです!」
フェルディナンが嬉しそうに手を挙げる。
「お姉ちゃんは私!」
「僕は弟!」
「あたしは赤ちゃん!」
「猫!」
次々と声が上がる。
父、母、姉、弟、姉、赤ちゃん、猫。
随分と大家族だ。
フローラは子どもたちに促されるまま、その輪の中へ腰を下ろした。
「それでは、お母さんは何をすればいいのでしょう?」
「ごはん作るの!」
「わかりました」
アンナが欠けた食器を並べる。
「お父さんはお仕事!」
「お仕事ですか?」
「うん! お仕事して、お金持って帰ってきて!」
「では、行ってきます」
フェルディナンが立ち上がる。
「いってらっしゃーい!」
「いってらっしゃい」
子どもたちとフローラに見送られ、フェルディナンは少し離れたところまで歩いていく。
そして、すぐに戻ってきた。
「ただいま帰りました」
「お父さん、おかえり!」
「おかえりなさい」
「お土産は?」
「……」
フェルディナンが困ったように黙る。
「何もありません」
「えー!」
「お父さん、仕事してきたのに!」
「それは困りましたね」
フローラが淡々と呟くと、子どもたちが一斉に笑った。
「晩ごはんの時間!」
アンナの声に、今度は全員がフローラのところへ集まる。
「フローラ様、ごはん!」
「わかりました」
フローラは子どもたちが持ってきた欠けた食器を並べ、割れた木製の大さじを手に取る。
野菜を切るふりをして、鍋をかき混ぜるふりをする。
「今日のごはんは何?」
「スープです」
「またスープ?」
「大きいお肉が入っていますよ」
「やったあ!」
子どもたちが歓声を上げる。
フローラはそれぞれの器へ、スープをよそうふりをした。
「どうぞ」
「いただきます!」
子どもたちが一斉に食べる真似をする。
フェルディナンも器を手に取った。
「フローラ嬢が作ってくださったので、美味しいですね」
「おかわり!」
「はい」
フローラが二杯目をよそう。
それを見ていたフェルディナンも、そっと器を差し出した。
「私もよろしいでしょうか?」
「殿下は最後です」
「どうしてですか?」
「お父さんだからです」
「なるほど……」
家族ごっこは、しばらく続いた。
「お母さん、お掃除して!」
「はい」
「お父さん、赤ちゃん泣いてる!」
「私が抱きます!」
フェルディナンが赤ちゃん役の子どもを抱き上げる。
「よしよし。どうしましたか?」
「お腹空いた!」
「そうですか」
「お父さん、ミルク!」
「ミルク……」
フェルディナンがフローラを見る。
「フローラ嬢、ミルクはどこでしょう?」
「知りません」
「そうですか……」
「お父さんなのに知らないの?」
子どもたちから一斉に責められる。
「申し訳ありません」
フェルディナンが困ったように笑う。
そんなやり取りを繰り返すうちに、子どもたちはすっかり楽しそうに笑っていた。
けれど、その輪の中で、アンナだけは少しずつ口数が減っていった。
フローラはそれに気づき、アンナへ視線を向ける。
「アンナ?」
呼びかけると、アンナは小さく首を振った。
「なんでもない」
けれど、先ほどまでのようには笑っていない。
家族ごっこをしているうちに、本当の家族を思い出したのだろう。
「他の遊びへ行ってもいいですよ」
「ううん……」
アンナは首を横に振った。
フェルディナンも、少し遅れてアンナの変化に気づいた。
「みんな、素敵なお母様ですよ」
フェルディナンが優しく声をかける。
「うん……」
アンナは小さく頷いた。
それでも、少し寂しそうな顔をしている。
やがてアンナは、フェルディナンとフローラを交互に見つめた。
何かを考えるように首を傾げる。
そして、ふと口を開いた。
「フェル様とフローラ様は結婚しないの?」
「!?」
純粋な眼差しを向けるアンナ。
フェルディナンは固まった。
「仲良しは結婚するんでしょ?」
「仲良しに見えます……?」
「うん!」
アンナが笑顔で頷く。
その言葉に、フェルディナンの表情がわずかに緩んだ。
仲良し。
その言葉を、胸の中でそっと反芻する。
けれど、浮き足立ちそうになる気持ちを現実へ引き戻したのは、フローラだった。
「アンナ、私と殿下は結婚しませんよ」
「どうして?」
不思議そうに首を傾げるアンナ。
フローラはいつもの調子で答えた。
「王族聖職者は、原則として結婚できません。私は別の方と結婚する予定です」
「えー」
アンナが不満そうに口を尖らせる。
フェルディナンは何も言わず、静かに頷いた。
「私が結婚できないのは、王族の血縁が増えすぎると、継承問題が起きるからですね」
「貴族の婚姻も、家同士のためにするものです」
フローラが淡々と答える。
その言葉に、フェルディナンは人知れず肩を落とした。
「好きな人と結婚できないの?」
「そうですね」
フローラが頷く。
「つまんない!!」
アンナが頬を膨らませる。
「自由恋愛がよければ、貴族の養子は止めたほうがいいですね」
「お姫様って大変なんだ……」
肩を落とすアンナ。
フローラは少し考えてから、続けた。
「ですが、美味しいご飯もお菓子も、綺麗なドレスも着られますよ」
「それはそうだけど……」
まだ少し納得しきれない顔をするアンナ。
そんなアンナに、フェルディナンが優しく笑いかけた。
「いつかアンナを、お姫様のように扱ってくれる人が現れるといいですね」
「うんっ!」
アンナの顔に、再び笑顔が戻る。
その笑顔を見て、フローラも小さく頷いた。
どうやら、もう大丈夫らしい。
――そう思った、そのとき。
「フローラ!!」
遠くから、聞き慣れた声が響いた。
三人が一斉に振り向く。
別の遊びをしていたはずのトビーが、こちらへ向かって全力で走ってくる。
しかも、ただ走っているわけではない。
「大変だ!!」
息を切らしながら駆け寄ってきたトビーが、勢いよく叫んだ。
「フローラ! ミロが木から降りられなくなった!!」
ミロが降りられなくなったのは、先ほどトビーが追いかけっこの最中に登った木だった。
トビーが登った枝よりも、さらに高いところまで登ってしまったらしい。
ミロは体を丸め、細い枝にしがみついていた。地面から見上げると、その小さな体はひどく頼りなく見える。
「ミロ! フローラとフェル様連れてきたから、もう大丈夫だ!!」
トビーが声を張り上げる。
「トビー……」
ミロは今にも泣き出しそうな顔で、トビーを見た。それから、フローラ、フェルディナン、アンナへと、縋るように視線を移す。
誰も、すぐには動かなかった。
「はしご持って来なきゃ……!」
アンナが倉庫へ駆け出そうとする。
「いえ、いつもの梯子では高さが足りません」
フローラはアンナを引き止め、再び木の上を見上げた。
いつもの梯子では届かない。
ミロがしがみついている枝は、地面からかなり高い位置にあった。腕を伸ばしたところで届くはずもない。
「どうしよう……」
アンナの声が震えた。
フローラは答えず、ミロを見つめた。
あの高さなら、登れないことはない。
ただし、問題は登ることではなく、降りることだ。
子どもを抱えたまま、木を降りた経験はない。背負えば両手が使えるだろうか。枝に足をかけ、体を支えながら、少しずつ降りていけば――。
頭の中で手順を組み立てる。
失敗すれば、自分もミロも怪我をする。
最悪、骨折くらいは覚悟しなければならない。けれど、教会には司祭がいる。治療を頼めば、どうにかなるはずだ。
ミロが、枝にしがみつく腕にいっそう力を込めた。
小さな足が、頼りなく揺れる。
このままでは、いつまで持つかわからない。
「フローラ……」
アンナが不安げに見上げてくる。
フローラは一度だけアンナに目を向け、それからドレスの裾を握った。
裾をたくし上げ、木に登る。
そう決めて手を動かしかけた、その時だった。
よく聞き慣れた声が、すぐそばから響いた。
「危ないから、フローラ嬢は登ってはいけませんよ」
穏やかな声に、フローラの手が止まった。
直後、アンナとトビーの口から感嘆の声が漏れる。
振り返ったフローラも、思わず目を見開いた。
そこに広がっていたのは、純白の翼だった。
光の魔力を幾重にも編み上げ、形作られた魔力翼。柔らかな光を宿す羽根が幾重にも重なり、左右対称に描かれた曲線は、寸分の乱れもなく美しい。
大きく広がった翼は、まるでこの場にいるすべての者を包み込もうとしているかのようだった。
羽根の隙間からこぼれた魔力が、淡い真珠色の粒となって舞い上がる。光の粉は陽光を受けてきらきらと輝き、ゆっくりと地上へ降り注いだ。
フェルディナンの魔力翼。
その姿は、あまりにも神聖だった。
人の身に宿るものとは思えないほどの、清らかさと美しさ。
教会で語られる天上の光景さえ、かくやと思わせるほどだった。
「私が行きますから、ここで待っていてくださいね」
「……わかりました」
フローラは瞠目したまま、かすかに頷いた。
フェルディナンは地面を蹴ることもなく、ふわりと宙へ浮かび上がった。
純白の翼が、音もなく羽ばたく。
舞い散る真珠色の光をまといながら、その姿はゆっくりと、けれど迷いなく空へと昇っていく。
フローラは、その姿を目で追った。
いつも穏やかに微笑み、子どもたちと無邪気に遊ぶ青年。けれど今、目の前にいるのは、王族聖職者として人々の信仰を集めるフェルディナンそのものだった。
フェルディナンはあっという間にミロのいる高さまで上昇すると、枝にしがみつく小さな子どもへ手を伸ばした。
「ミロ、もう大丈夫ですよ」
「フェル様……」
涙でいっぱいだったミロの顔が、くしゃりと歪んだ。
安堵と恐怖が一度に込み上げたのだろう。今にも泣き出しそうな顔で、それでもミロはフェルディナンを見つめていた。
「よく頑張りましたね」
フェルディナンは優しく声をかけ、ミロを抱き上げようと腕を伸ばす。
ミロもまた、救いを求めるように枝から身を起こした。
その瞬間だった。
ぐらり、と。
ミロの体が傾いた。
重心が移ったせいか、足元の枝が大きくしなった。
嫌な音が、頭上に響く。
フローラの息が止まった。
次の瞬間。
ばきり、と乾いた音が、静かな木立に鋭く響き渡った。
ミロの体が、宙に投げ出された。
「――フェル!!」
瞳を見開いたフローラの口から、思わず声が飛び出す。
木の枝が折れる音が先だったのか、その声が届いたのが先だったのか。
ミロが落ちる寸前、フェルディナンはその両脇を抱き留めた。
「大丈夫ですからね」
すぐさまミロを抱き直し、安心させるように穏やかな笑みを向ける。
ミロは安堵したように顔をくしゃりと歪めると、小さな手でぎゅっとフェルディナンにしがみついた。
フェルディナンはミロを抱えたまま、ゆっくりと地上へ降りていく。
足が地面につくや否や、アンナとトビーが駆け寄ってきた。
「フェル様、綺麗だった! 格好良い!!」
「ミロ助けてくれて……ありがと」
「フェル様ぁっ、……ぐす、ありがとう……っ」
興奮を隠せないアンナに、照れくさそうに礼を言うトビー。ミロはまだ恐怖が抜けきらないのか、涙をこぼしながらフェルディナンを見上げていた。
「無事でなによりです」
フェルディナンは、三人に優しく頷いた。
もう魔力翼を使う必要はない。そう判断すると、純白の翼は淡い光の粒となって、空気に溶けるように消えていった。
「フェル様の翼、まだ見たかった……」
アンナが名残惜しそうに呟く。
「魔力翼は、その人の魔力や魂の状態を表すとされています。安易に人前で見せ続けるものではありませんよ」
「フェル様のは、こんなに綺麗なのに?」
なおも残念そうなアンナに、フェルディナンは微笑んだ。
「大切なものを守らねばならない、その時にこそ使うのです。誰かに見せびらかすものではありませんよ」
「そうなんだ……」
納得したような、まだ少し名残惜しいような顔をするアンナ。
子どもたちも落ち着いたようだ。
少し離れたところから様子を見守っていたフローラは、フェルディナンの前へ進み出ると、深々と頭を下げた。
「殿下、大変助かりました。ありがとうございます」
「いいえ。私にできることをしたまでです」
フェルディナンは首を振った。
そして、ふと何かを思い出したように、嬉しそうに目を細める。
「それよりも――フェル、と呼んでくださいましたね」
「緊急だったので」
フローラは眉をひそめた。
「また呼んでくださっても良いのですよ?」
「恐れ多いので遠慮いたします」
「遠慮がなくなったら、呼んでくださいね」
「丁重にお断りいたします」
きっぱりと返すフローラに、フェルディナンはいつもの笑みを浮かべた。
それ以上、無理に頼むことはなかった。
「さて、ミロ――」
フローラがミロに向き直る。
落ち着いた声音に、ミロの肩がびくりと跳ねた。
「なぜ、あの高さまで登ったのです? いつもの梯子では届かないことは、わかっていますね?」
「ごめんなさい……」
ミロが俯く。
「謝ってほしいのではありません。あの高さが危険だと、わかっていましたね?」
フローラはミロと目線を合わせるようにしゃがんだ。
まっすぐに見つめる灰青色の瞳。その鋭い気迫に、ミロは目を逸らすこともできず、しばらく黙り込んだ。
フェルディナンも、アンナも、トビーも、心配そうに二人を見守っている。
やがて、ミロが小さな声で答えた。
「トビーみたいに、僕もできるんだって……皆に見せたかったんだ……」
「そんな理由で、あんな危ないことしたのか!? どんだけ心配したと思ってるんだ!?」
「トビー」
思わず声を荒らげたトビーは、フローラに名を呼ばれると、ぴたりと口を閉ざした。
フローラは再びミロに視線を戻す。
「ミロの勇気は認めましょう。けれど、勇気と無謀は違います」
今にも泣き出しそうなミロを、静かに見つめる。
「殿下がいなければ、どうなっていたか。わかっていますね?」
「……ごめんなさい」
ミロの瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。
「もう、しない……」
次々と溢れる涙を、フローラは袖でそっと拭ってやる。
「木に登るなとは言いません。ですが、引き際は見極めましょう」
「……ダメって、言わないの?」
「何事も、やらなければ身につきませんから」
フローラはそう答えてから、ちらりとトビーを見た。
視線に気づいたトビーは、さっと明後日の方を向く。
「トビー。ミロのことを頼みましたよ」
「ちぇっ」
不満げに唇を尖らせるトビー。
それでも、ミロのそばから離れようとはしなかった。
フローラはそんな二人を見て、そっと立ち上がった。
「次からは、無理だと思ったら早めに助けを呼ぶこと。いいですね?」
「……うん」
ミロが涙を拭いながら頷く。
「よろしい」
フローラは小さく頷き返した。




