(自分的には)はじめてのだいぼうけんへ!
家の前に積まれた真珠は、邪竜改めアングレカムが元あった場所に返していった。
ただせっかくだからと、一番綺麗で大きな真珠を一つ渡してくれた。
光に当たると乳白色の球が薄っすら虹色に輝くのが、とても綺麗でお気に入りだ。
……このままじゃアクセサリーに加工できないくらい大きいけど。
私の顔と同じサイズだからね。
占い師が使ってる水晶玉並みの大きさと言ったら分かりやすいだろうか。
まあ魔法で削って加工すればアクセサリーにはできるとアングレカムは言っていたけれど、せっかくこんなに大きくて綺麗なのだ。
なので、今はリビングテーブルの上にインテリ代わりとして飾ってる。
そんな話はさておき、今日は初めて一人で森に出かける日である。
いつもならアングレカムと一緒に森の中を散策したりするのだが、今回は私一人だけ。
というのも、なんかアングレカムの一番下の妹から子どもが産まれたと連絡があったらい。
その妹も所謂変わり者というやつで、兄程でないけどなんか困ったことがあったり子どもが産まれたりした時は、連絡取り合ったりしてるんだとか。
んで、子ども産まれたんならお祝いの品でも持ってったらと私が提案して、パルティーとか他に栄養の付く食べ物を持っていくことになったのだ。
ただし、その妹が絶賛子育て中な場所が非常に魔力が濃い場所で、人間だと忽ち魔力中毒で死にかねない所なので必然的に私はお留守番となった。
竜にとっては子育てに最適な場所でも、私にとっては死地なので仕方がない。
というわけで。真珠山盛り事件があった二日後、今から一週間前にアングレカムは妹の元へと出かけて行った。
せっかくだしゆっくりしておいでと言っておいたので、暫くは帰ってこない。
でも、食料は家の地下にある保管庫に数ヶ月分は置いてあるので問題無い。
いやぁ、魔法って本当に便利。冷蔵も冷凍もできるし、なんなら時間停止して腐らないようにとかもできる。
……私も魔法使えたら良かったけど、魔力は人間の中でも少ない方で才能もからっきしだったからなぁ。
『残念ながらお主ではちょっと……』と、凄く申し訳なさそうに言うアングレカムにこちらこそ申し訳なくなったわ。
自衛もできないレベルでごめんよ……。
そんな戦闘力がゴミクズの私が何故一人で出かけようとしているかというと、妹の元へと行こうとする前のアングレカムが私の身を守るために、色んな効果をこれでもかと特盛した結界を私に張ってくれたからだ。
これは敵意や悪意に反応するだけじゃなくて、私の感情の揺れにも反応する。ちょっとでも怖いと思ったら、結界が仕事をしてくれるんだってさ。
森に住んでいる魔物の攻撃ならば余裕で防ぐことができるし、なんなら攻撃を反射する機能が付いてる。毒とかの状態異常も無効化してもくれるんだそうな。
もしも怪我をした場合も回復してくれるそうなので、転んで怪我した場合も安心。
やだ、私の友達の魔法が恐ろしく頼もしい。もちろん友達自身も頼もしい。
あまりの頼もしさにうっかりときめいてしまいそうだ。嘘、もうときめいてた。
たぶん人間だったらめっちゃモテてたんじゃないかな、我が友。
数日共にしただけで世話焼きで気遣いのできる、スパダリの素質バッチリな人……じゃなかった。竜だって分かったし。
私もうアングレカム無しじゃ生きられない体にされているような気がする。もうとっくの昔にそうなっている気がしないでもないが。
そんなわけで、ちょっぴり危機感を抱いて少しは自立した生活できるようになろうと思ったのと、結界あるならちょっとぐらい冒険しても大丈夫だと思って、パルティーのなる木があるっていう場所に行くことにした。
位置は前のお空のお散歩で大体分かってる。森のどの辺にあるのか聞いたりもしたし。あとはそこまで歩けるだけの体力があるかが問題だ。
「予備の水筒入れて、お弁当も入れて、タオルも入れてっと。あとは念のためにドライフルーツとかの非常食も入れといて、よし。こんなもんかな」
魔法で入る量を増やしさらには軽量までされているリュックに、準備した物を声を出して確認しながら入れていき、リュックの口を閉めてから背負う。
本来ならずっしりと重いだろうけど、全然重さを感じない。
今日の服装は動きやすいようにと、長袖のシャツとズボンというスタイル。いつもはワンピースだけど、森歩きには向いてないからね。
ブーツも普段履いてるようなヒールのあるものではでなくて、歩きやすいヒール無しの編み上げブーツだ。
柔らかい素材のやつだから、長時間歩いても足はそんなに痛くならないだろう。
この服やブーツなんかは、どれもこれもアングレカムが用意してくれた物。
なので何かしらの魔法が複数かかっているらしいのだが、あまりにも種類が多かったのでちゃんと覚えてない。
服とかブーツには必ず汚れ防止とか、水を弾く効果があるとは聞いのは覚えてるけどそれ以外はさっぱりだ。
家から出て、ぐっと伸びをする。
時計が無いので正確な時間は分からないが、それなりに早い時間だ。たぶん七時くらいかな?
朝露が日に当たってキラキラと輝いていて、いつもどおりのちょっと湿った土の匂いが鼻をくすぐる。
私の家は森の中にあるけれど、ぽっかりと開けた場所に建てられている。
なので半径数十メートルくらいには木々が生えてなくて、生えてるのは雑草とか適当に植えられた花程度。
ちなみに植えられている花はどうも美味しいらしくて、怪鳥はこの花を目当てに家の近くまでやって来る。何もしてこないけど怖い。
とまあ、そういうわけで森に入ろうと思うとちょっと歩く必要がある。
もう既にちょっとドキドキしながら歩き、時々花を啄んでいる怪鳥にビビりつつも、鬱蒼とした森の中へと続く一本道の前まで来た。
ここは昔、邪竜の花嫁一行が行き来しやすいようにと作った道だとアングレカムは言っていた。
時々手入れしているそうだから、完全な獣道にはなっていない。だから、途中まではたぶん平された楽な道を歩ける。
そこから先はまあまあしんどい道になるとは思うけど、無理そうなら引き返そう。
「よし、それじゃあレッツゴー!」
頬を軽く叩いて気合いを入れる。
そして、(私的には)大冒険のための一歩を踏み出した。
……森の暗さに数メートルも歩くことなくビビって帰りたくなったけど。




