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きちゃった!

 アングレカムの元へと来てから、半年が経った。

 時の流れは早いものでここに来た頃は春の終わり頃だったのだけれど、今やキノコが美味しい秋である。ただし、毒キノコには気をつけなはれや。



 で、秋になったらもちろん次は冬になる。

 この辺りは比較的温暖な気候なのだけれど、やっぱり冬はそれなりに寒い。

 というわけで、そろそろ冬支度しよかってアングレカムと話していた。



 まあ冬支度とは言っても暖炉用の薪をストックしたり、アングレカムが狩ってきてくれた獲物の何割かを塩漬けにしたり、後は保存庫に野菜や果物類を多く備蓄しておくくらいかね。



 ちなみに肉の塩漬けは、アングレカムがどこからか持ってきてくれた本でやり方を知った。肉の捌き方とかも。

 グロ耐性が高くて良かった。じゃなきゃ多分捌いてる時に何回も吐いてた。

 ちなみに来年は、塩漬け以外にもジャーキーとか燻製に挑戦するつもり。魚も一夜干しとかしようかなー。



 こんな感じで、本格的な冬が始まる前にちまちま準備していたある日。

 家の外で塩漬けを作るのを手伝ってもらっていたら、突然アングレカムが『ちょ、待てい!』と咆哮にも似た大声を上げた。



 び、びっくりした……。驚き過ぎてちょっと飛び跳ねちゃったよ。



『む? ああ、すまん。驚かせてしまったか』

「いや、大丈夫だけど……どうしたの? なんかあった?」

『それがなぁ、ちょっと妹から子どもたちの面倒を見てほしいと言われてなぁ。それも今から来てほしいと言って、こちらの返事も聞かずに念話を切ってしまってな』

「なるほど。妹って、前に子ども生まれたって言ってお祝いに行った?」

『そうじゃぞ』



 私の質問に頷くアングレカム。

 なるほど、あの時の妹さんね。子どもの面倒見てほしいって、何かあったのかな?



「とりあえず話行ってきたらどうかな。塩漬けはあとは家の中に置いておくだけだし」

『しかしなぁ……』

「今回は家で大人しくしてるから大丈夫だよ」



 そう言っても、アングレカムは動くことなくうぬぅと唸るだけ。



 前に私が一人で森に行き、そして山賊に遭遇しぶっ倒れた後私から長いこと離れるのを嫌がるようになった。過保護になったとも言う。

 家の中にずっといるとしても、何かあったらと心配になってしまうからと長時間出かけることはなくなったし。



 これに関しては私が全面的に悪いから、文句とか言えないんだよねぇ。言うつもりもないけどさ。

 遠出してくるなー、ってアングレカムが出かけた後見事にぶっ倒れたわけですし。



 けど、いつまでもこの状態というのもダメだろう。

 近くにいてくれるのは安心するけれど、その……ずぶずぶ依存していきそうだし。

 ただでさえここでの生活は彼の魔法に頼るところが多いのだ。頼らないと生きていくのも難しいってのもあるが。

 サバイバル能力とか、護身できる程度の戦闘力くらい転生特典で欲しかったよ……。



「そろそろお留守番くらい一人でできるって。それに、妹さんになんかあったかもって心配ではあるんでしょ?」

『ぬ、それはそうだが……。しかしなぁ』

「いっそもう魔法で家の外から出られなくしてくれてもいいから」



 ここは譲らないぞという思いを込めて、じっと金色の目を見つめれば、観念したようにアングレカムは大きな溜息を吐いた。



『……はあ。そこまで言われて断るのも悪いの。帰るのが遅くなると思うが、いい子で待ってるんじゃぞ。あと、いくらなんでも別に家の中に閉じ込めたりせんからな我。家の周りの結界の強化はしとくが』

「はーい、ありがとね。それじゃいってらっしゃい」

『うむ、行ってくるぞい』



 こつりと軽く口を私の頭に当てた後、ふわりとアングレカムの大きな体が浮き上がり高く高く舞い上がる。

 そして、一度旋回した後飛び去って行った。



 空を飛ぶその姿が完全に見えなくなってから、ふうと息を吐いた。



 もしかしたらダメかもと思っていたけれど、行ってくれてよかった。

 前回は私のせいで予定よりも早く帰ることになってしまったから、今回は楽しく妹さんや子どもたちと過ごしてほしい。



 アングレカムも行ったことだし、塩漬け肉が入った箱を持って私も家の中に入ろう。

 保存庫だと時間経過しなくなっちゃうから、台所の方に置いといたらいいかな。



 そう思って、近くに置いてあった箱を持ち上げようと屈んだ時、急に当たりが暗くなった。



 今日は雲一つ無い快晴だったのに、なんでだろうと思ってなんとなく上を見上げたら、サファイアのような美しい青色が目の前にあった。

 ぽかんと口を開けた私の間抜け面が、はっきりと見えるくらいに。



『話には聞いてたけれど、本当にちっちゃくて可愛いわねー!』



 青色が瞬いて、女性の高い声が辺りに響き渡る。

 声の主は、私を見つめる青色の持ち主たる真っ白な竜だった。



「……あ、ああの、あのあの、どど、どどちら様で?」

『アタシ? アタシはお兄ちゃん……えっと今はアングレカムだっけ? の妹よー!!』

「ふぁ!?」



 妹?? 今この人、いや竜アングレカムの妹って言った??

 もしかして今日子守り頼んできた一番下の妹さん??



 確認すると、『そうよ!』ととても元気なお返事を返していただいた。

 いや、『そうよ!』じゃないんですよ。確かアングレカムに子守り頼んだのって、ついさっきのことだよね?

 なのになんでいるの??



『お兄ちゃんが気に入ってるっていう貴女のことが気になって来ちゃった!』

「何故に??」

『だってお兄ちゃんったら、アタシが貴女に会いに行きたいって言ってもダメの一点張りなんだもの! お前じゃ圧が強過ぎるって! だから子守り頼んで引き離している間に来ることにしたのよぉー』

「いやいやいやいや、そんなことしたらすぐに戻ってくるでしょ。妹さんいなくて子どもたちだけだったら」

『大丈夫よ! 子どもたちにはしっかり足止めするように頼んでるし、旦那にも力づくでもアタシが帰ってくるまでは押し留めてねって言ってるから!!』

「それなにも大丈夫じゃないのではっ!?」



 あと旦那さんいたんかい! 

 いやままあいるのは当たり前だと思うけど、アングレカムに子守り頼んでるから、なんかあっていないんじゃないかとか思ってたんだけど全く予想と違ったなぁ!?



『さあさあ、人間のおちびさん! 男がいないうちに楽しく女同士でお話ししましょ!!』



 テンション高くそう言って、クルクルと楽しげに喉を鳴らす妹さんに逆らうだけ無駄だと悟った。



 それにしても、兄妹揃ってフレンドリー過ぎやしませんか? パーソナルスペースがせっまい。

 あと、その長い舌でベロンベロン舐めるのやめてもらってもよろしくて?

 全身が涎でびっしょびしょになってもうてるんや……。

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