この後二人して日向ぼっこした
なんかタイトル納得いかなかったので変更。
人に遭遇し熱出してぶっ倒れて、世界樹の実なんていうとんでもない物を薬代わりに食べさせられ、数日で復活した私はとても元気です。
もうここに来てから大体二ヶ月は経ってるけど、あの時から大きく体調を崩してはいない。
たぶんあそこまで体調崩したのって、人に久しぶりに遭遇してストレス感じただけじゃなくて、なんだかんだと変わりまくった生活環境に知らず知らず疲れが溜まってたのも原因かもしれない。
前世でも一人暮らし始めて、一ヶ月くらい経って慣れてきたなーと思ってたら、見事に熱出してぶっ倒れてたし。
あの時はしんどかった。ひたすら寝て、スポドリ飲んで、寝てって感じで過ごして、少しばかり復活した頃にゼリー流し込んで薬飲んでた。
そんな昔話はさておき、もうそれなりに時間が経ってしまったのだが実は私、ちゃんとアングレカムに看病のお礼とか言ってないんだよねぇ……。
ぶっ倒れた私を家に運んでくれて、ついでに魔法でパパッと身を清めて着替えさせてくれた後ベッドに寝かせてくれて、そっからずっと家の側から離れず見守ってくれて。
迷惑かけてごめんとは言ったけど、ありがとうはちゃんと言ってなかった。
……言葉にしようとしても、なんかアングレカムの姿を見ると上手く言葉が出なかったんだよね。
なんでかはよく分からないんだけど……妙に胸の辺りがザワザワするというかなんというか。
それだけじゃなくて、普通に会話しようとするだけでもなんか上手く言葉が出ないことが最近よくある。
というわけで、私はパイを作った。一枚二枚じゃなくて、数十枚分。
その上に泡立て器でひぃひぃ言いながら大量に作った生クリームを一枚ずつたっぷり載せて行き、乗せ終わった物をアングレカム印のクーラーボックスにイン。
このクーラーボックスも魔法で軽量化したり、容量を大きくしたりしているのでどんどん入るし、降っても逆さにしても形が崩れないという優れ物。
パイ入れたらクーラーボックスに蓋をして、両手で抱えて玄関へ行き外へと出る。
玄関から出てすぐ右の所。アングレカムが作った花壇の横に彼は寝そべっていた。
彼の元まで行くと、こちらに気がついて伏せていた顔を上げた。
『おお、やっと出てきたか。朝から何やら作っていたが、おやつか?』
「……それなんだけど、さ。ちょっと顔を近づけてくれない?」
『む? こうか?』
私の言葉に一切の警戒人もなく顔を近づけてきたアングレカムににっこりと笑みを向け、抱えていたクーラーボックスを地面に置き蓋を開けて、その中からパイを一つ手に取った。
「それじゃあ――私の感謝を食らえ!!」
『んっっぬぅ!?』
胸のザワザワした感じを吹っ切るように、厳つい顔の鼻先に思いっきりパイをぶん投げた。
素っ頓狂な声を上げたアングレカムの顔には、真っ白なクリームがべったり付いていてなんとも間抜けで、ぽかーんと口を開けて固まる姿が面白くて笑う。
『お、お主、やりおったなぁ!!』
「あっはは! 見事に鼻先真っ白だね! あ、アングレカムの分もあるからパイ投げ合戦やるよ!!」
『なんだそれは!?』
「パイを相手の顔とか体に向かって投げるんだよ!」
説明しながらまた一つクーラーボックスからパイを取り出し、アングレカムの顔へと投げる。
べちゃりと音を立ててパイが潰れて、さらにアングレカムの顔が白くなる。
『やりおったなリグレー! それ、お返しじゃ!!』
「一気に五つは卑怯じゃ、」
言い切る前に、アングレカムが魔法で操る五つのパイが私の顔や体にぶつかる。
今日の服は黒い色のワンピースだから、クリームの色がよく目立つ。
にしても、魔法で一気に五つはマジで卑怯!
私も卑怯っちゃ卑怯だったけど!!
「お返しだ!」
『わっははは! 人間は手が二本しかないから不便だのう』
「魔法使うのは卑怯! あと、アングレカムも手は二本しかないじゃんか!!」
『我、人間並みに上手く手で何か掴めんから魔法でやってるの。そら、もう一発じゃ』
「体にクリーム塗りたくってやる!!」
そうしてパイが尽きてしまうまで、わいわいパイ投げをした。
途中から私は投げてなかったけど。躱されたりはしなかったけど、一個ぶつけたら倍以上の数が私を襲ってきたし。
だから二個持ちして投げるのではなく、擦りつけてやった。
そうして終わった頃には二人揃って真っ白。いや、アングレカムは全体が真っ白になるほどではなかったけれど、顔は真っ白にできたので満足。
「はぁー、めっちゃ甘い匂いする〜」
『我も甘い匂いが凄いする……』
地面に寝っ転がって、ちょっと顔を顰めたアングレカムを見ながらからからと笑う。
……それにしてもほんと生クリームの甘い匂いがする。地面に寝っ転がってたら蟻に集られるなこれ。
よっこいしょと掛け声を出しながら、立ち上がる。
ぐうっと伸びをしたら、腕に付いていたクリームが地面へと落ちた。
「これは酷い。ねえ、近くに川があったよね? 最近暑くなってきたし、せっかくだし水浴びする?」
『そうさな。では、行くとしようか』
笑い合って、アングレカムに促されるまま彼の背中へとよじ登る。
何回かクリームのせいで手が滑ってたけど無事に登れた。
この頃になったら、胸の辺りのザワザワした感じはどこかへ行ってしまっていた。
「ねえ、アングレカム」
『なんじゃ?』
「ありがとうね。看病してくれて」
『もしや、それを言うために先程のようなことを……?』
「うん」
『なんでじゃ』
なんだか解せぬというような声に、笑いながら「楽しかったでしょ?」と問いかければ強く頷いてくれた。
『でも、次からはあらかじめ言っておくれ。我もパイ作りを手伝うからな』
「じゃあ、今度やる時はもっと大きいパイ作ろっか! あ、でも私でも投げられる大きさにしてね!」
『ああ、どーんと任せるといい』
ふわりと巨大な体が浮かぶ。
羽を羽ばたかすと、アングレカムの体から生クリームが飛んでいった。
「わっぷ!! 生クリームこっちにも飛んできたんだけど!?」
『ははは! 最初にやられた分のお返しじゃ!』
「魔法といい今といいずるくない!?」
ぎゃあぎゃあと文句を言いながら、アングレカムに乗って川の方へと向かった。
ちなみに水浴びの時は、全力でお互いに水を掛け合った。体の大きさ的に私の完敗だったけどな!!
ちょっと手を水に叩きつけるだけで津波起きるのほんとずるい!!




