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その世界は残酷なれど、旅人は旅をする……  作者: がお!


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115/117

#115 戻る道と新しい出会い

 「や、やっと帰って来られたわ」

 「流石に疲れました」

  川辺で疲れを癒やしたと思った矢先、街へ帰って来るのに二日掛かった。

 行きは馬車を使用し一日掛かったのだから、徒歩ともなるとより時間を要するのは当然の話で。馬車がどれ程早くて楽だったのか思い知らされた気分だった。

 人の足と馬の脚ではやはり早さが違う。でも一番の違いは荷物に在った。

 馬車ならば荷台へ荷を置けるが、徒歩旅であれば背負わなければならない。荷を背に担ぐのだけど、肩紐が肩に食い込み重さは足へと負担掛け速度を鈍らせる。

 生きる為の装備だと分かっていても、精神的に辛いものが在った。

 馬に背負わせていた事がどんなに楽だったか、実感せずにはいられなかった。

 そもそもフォスレスさんからの言葉が最もな事だけに精神的疲労が大きく、ただでさえ遅い足が更に重くなった。

「旅において馬を使える事の方が少ないです。旅だけでなく他にも言えますが、最も大切で最も重い荷物は水になりますから、これから先もっと大変な事になる事は間違いないでしょう」

 今も水を持っているけれど、近くに川があるため多くは持っていない。

 旅先で簡単に水を補給出来るとは限らないし、高いお金を出して買わなければならない時もあるとか。

「水に関しては考えねばなるまい。小まめに補給出来るのであれば荷を減らせるが……」

「世界的に水を無料で得られる地域はごく一部です。其の他は時に高いお金を出して買わねばならない事もあります」

「定期的に金を稼ぐ方法も考えねばならぬか……其れも地域に寄って変わろうよ。在る地域では通用していた事も、別の場所へとゆけば犯罪にもなるやもしれぬ」

「旅人などと怪しい人に優しく手を差し伸べてくれる人など、其の様な聖人はいないと思った方がよろしいかと。大半の人は弱者へ喰い群がる心無い人ばかりですからね」

「旅は情、人は心と言うが、其の一歩から躓きそうでは在るな」

 不穏な事ばかり話す二人に、私の心に不安が圧し掛かる。

 街へ戻って来るまで確かに時間はあった。初めは楽しかったけれど、この様な話をされたりしたら心配事ばかり横切り私の頭の中は、『どうしたら……』と言う言葉だけが回り続けた。

 夜を二度過ごし、ようやく帰って来られた。

 ただし宿に泊まる為のお金は無い。食べ物も帰って来る途中に食べ尽くした。

 鳥を狩ることが出来たけれど、其れだけだった。

 街へと戻ってこられて少しの安堵感を覚えはしたが、まだ此れからの事が何も解決していない。

 今は日が中点を過ぎたところ、まずは領主の館へと寄り、伺いを立ててから宿屋へと。

 懐具合が怪しいので街を出て野宿か。此処にも探せば貧民街は在るだろうけれど、情報もない今から貧民街の、其れも誰も住んでいない家を探すのは無理がある。

 ならば始めから街の外と決めていたほうが肉体的にも精神的にも楽である。

 預けていた馬のことも心配では在るが、ステルさんを信用するしか無い。


 せめて荷物を何処かに預けてからと思いはしたけれど、宿屋すら泊まれない私達に安心して預けられる所などなく。仕方なく領主の館へと赴いた。

 館の前、それも門扉の前でどう知らせるのか思案するも、軽鎧を着た騎士が出てきて此方へとやって来る。

 どうやって来客を知るのだろうか……。門をずっと見張っているのだろうかと疑問に思うも。

「フォスレス御一行と間違えはないか。話は伺っている、まずは帰還された事、ご苦労であった。謁見を所望との認識でよろしいか」

 言葉は丁寧だけれども少々無愛想に、此方を見下すような態度は腹に据えかねる所はあるけれど、騎士として従事しているのだから身分は平民より上と言う事でもある。

 平民より下と見られてもおかしくない私達にも、罵倒せず対応しているところは領主の教育の賜物か。

「はい、今日は謁見の要望をお願いに来ました。返事は明日、此の時間に参りますので領主様へよろしくお伝え願います」

「確かに承った」

 短いやり取り。騎士の人は屋敷の中へと帰っていった。

 騎士の人の態度に目くじらを立てないのは分かるけど、驚くのはフォスレスさんの言葉遣いだった。

「貴族特有の遠回しな言い方は出来ませんが、彼は気を使ってくださったようですしね」

「あれで気を使っていたとか言うの? 言葉の端々から見下していた感じが伝わってくるのだけど」

 うん、お姉ちゃんの言う通りと思う。

 ステルさんがどれほど私達を気遣ってくれていたのか、其れがわかるような感じだった。

「ステルさんはどうしたのでしょうか」

「ステルも無駄飯を食う訳にもゆかぬのだろうよ。何時来るかも分からぬ俺達の為に時間を空け続けることは出来ぬ。傭兵団に至っては俺達に集中していたはず故、ステルたちに手を出す余裕は無いはず。何か用事で手を取られているのだろうよ。またすぐに会えよう」

 何か在ったとは思っていない。ただ顔に出ていたのだろう、心配はないとネムロスさんが(おもんぱか)ってくれた。

 領主への通達は済んだ、ようやく宿……ではなく休める場所を探しに行ける。


 街へ入るための門は夕刻過ぎには閉じる。季節によって時間は変わり、夏の日が長い時期は開くのは早く、閉まるのは遅い。

 逆に短い冬は開くのが遅く、閉まるのは早い。

 暗くては通門者の身元確認が困難であるうえ不審者を通してしまうかもしれない。

 明りを灯すに燃料もいる。有限であるがゆえに節約は必然。

 しかし人の流れは出来るだけ止めたくはない。協議の結果、日のある内は開門しておく事となったと、門番さんから聞いた。

 ネムロスさんが門番と話し、言葉巧みに聞き出したのだけど、あまり重要な事柄でもなかったのだろう、賄賂を渡さずとも話してくれた。

 まぁ、門番さんはあまり良い顔はしていなかったけど。

 閉門後に到着する商人や他の人達も居り、其の様な人たちは軒並み街の外で翌日の開門を待っているとか。

 閉門までの時間はまだ在るから、門を通る人の姿はあれども、街の外で野宿する準備をしている人はいない。

 そもそも街の外で野宿する人たちは多くない。

 外で野宿する人が増えれば、見た目も悪く治安にも関わる。

 領主が対策に迫ばまれかねない。

 そうなっていない今はお目溢しされているだけ。まだ問題に発展していないだけ。

 だから私たちでも目立つことなく街の外で野宿が出来る訳では在るけれど。

 無論明るいうちから出来るわけもなく、門から壁沿いに少し離れたところで腰を落ち着けた。

 ネムロスさんは森の中へと狩りに出かけ、フォスレスさんは私達の護衛兼荷物番として残っている。

「ステルさんがいれば宿の事を悩まなかったのかな」

 領主館でステルさんに会えていたならば、冷たい地面で寝る事はなかったかもしれないと愚痴るも。

「さて、どうでしょう。此処での立場は無いにも等しいですからね。今までも手持ちから出して頂けただけですから、更に甘えることも気が引けますし、もう手持ちは無いと仰っていましたからね」

 少し贅沢したからと、また出来るのではと思ってしまうのは少し調子に乗っていたかもしれない。

 あれが普通ではない、特別なのだと自分に言い聞かせ、荷物に寄りかかり疲れた体を休ませる。

「私が見ていますので少し休むと良いですよ」

「そうするわ……」

 お姉ちゃんも眠るみたいで、私も眠気に逆らう事なく外套を身に包まわせ夢の中へと旅立っていった。


 木が爆ぜる音と共に鼻孔を擽る肉が焼ける香ばしい臭いがする。

 寒さに身を震わせながら目を開けると、大きな背中が見えた。

 見慣れない背中、其の横には見慣れた横顔、ネムロスさんが居る。

「起こしてしまったか、すまぬな」

 薄闇が掛かる空。今は冬なので夕刻より前ぐらいなのだろう。昼過ぎあたりから寝ていたので一刻半程か、良く寝てしまったようだ。

「いえ、大丈夫です。其れよりもそちらの方々は?」

 火の回りには私たちの他に二人ほど見知らぬ人がいた。

「あぁ、紹介しよう、行商人のドゥオとコプラだ。取った獲物を処理していた時に声を掛けられてな」

「はじめまして、ドゥオと申します。商業組合所属ルルスス商会に席を置いております。よしなに」

 まず目を引くのは体の大きさ。太っているわけではないけれど、ネムロスさんに比べて二回りほど大きい。顎髭が立派だけど頭頂部が少し寂しそうな、黒髪で柔和な笑顔の人。

 寝起きに見た背中は此の人の背中だった。

「同じくコプラです。今宵一晩騒がしくする事許してほしい」

 もう一人は見た目ネムロスさんと同じぐらい。だけど雰囲気は商人と言うより、傭兵って感じ。首の太さからそう思うのだろうか。

 赤み掛かった髪を後ろへと撫でつけ、少々厳つい顔つき人。

 服装はどちらも同じ様な格好、革の長靴に冬用の厚手服、外套。

 街の外へと出かける人はある程度似通った服装になるのは否めないのだろうけど、もう少し多様性が在っても良いのではないかなと思ってしまう。

「はじめまして、私はリアです」

 自己紹介をして気づいたけれど、お姉ちゃんはどうしているのだろうと見渡す。

「リア、其処は寒いだろうからこっちにおいで」

 先に起きていたのか火で暖を取っており、隣を空け私を招いてくれた。

 焚火には焼かれる肉から油が滴り落ち、火を爆ぜらせながら香ばしい匂いを漂わせている串刺し肉が在った。

 寝起きとは言えお腹は空いている。其の証拠にお肉を見た時にお腹が鳴り、恥ずかしいところを見せてしまった。

「大物が取れたのでな、足りなければまた焼けば良い故、遠慮することなく食べて良いぞ」

 渡された串肉を受け取るも皆を見回すと、どうやら先に食べた人も居るようで、私も頂きますと言ってから肉に齧り付いた。

 余分な油が落ちたからなのか、お肉の味がしっかりとしながらもくどくなく甘みがある。

 同じお肉なのに食感の違うお肉もあり、此方は歯ごたえが無く独特な味がした。

 肉の味が立っているから、粒胡椒を使ったのだとすぐに分かったけれど。

「此れ、粒胡椒使っていますよね。良いですか。其れに食感がいつもと違います」

「あの程度の量、使わず取っておく程のものではない。逆に使わず腐らせるより使える時に使ったほうが良かろうて」

 ネムロスさんが良いと言うのであれば、私は頷くしかない。

 けれど私の言葉に反応したのはドゥオさんの方だった。

「ほう、粒胡椒とな。流通量が増え安くなったとは言え、まだまだ高かったでしょうに」

「知り合いから貰い物だ」

「少量とは言え、粒胡椒を頂けるとは良き人に巡り会えたようですね」

「人の出会いに感謝せねばなるまい。此処で行商人と出会えたのも良き出会いとなろう」

「うむ、私も貴方がたに出会えたことを何かの縁。大したことは出来ませんが、旅の一助となるのであればご協力を惜しみません」

「ドゥオは行商として北へ行ったことはあるか」

「えぇ、北は他国との貿易の要たる港町がご在ますからな。粒胡椒は元より各種香辛料、国外産のワインと言った趣向品から珍しい品々を輸入しており、其処でしか買えぬ代物もございます。また、海の幸と山の恵みの違いはあれど、どちらも甲乙つけられませぬ、美食家の舌をも唸らせる珍品などあり賑わっていますよ」

 商人は口が回るのか、一息に話されても覚えきれない。

 ドゥオさんははち切れんばかりの笑顔ではあるけれど、其の笑顔に今までどれ程騙されてきたか。私からしたら胡散臭さしかない

 お姉ちゃんも胡乱げな商人に眉根に皺を寄せている。

「行先は変わるやもしれぬが、大陸へと渡りたいと思っている。一番良いのは其の港町であることは確かなのだが、行商人とは街から街まで渡り歩くが其の工程に港町までは入っているか」

「ふむ、分かりました。港町まで往くに道案内を頼みたいとの事ですかな」

「概ね其の通りだが、大陸を渡る前に馬を売りたい。古馬ではあるが荷運びならばまだまだ現役な馬をな」

「其の御様子では数日中に向かわれると思われますが、その他にも何か」

「案内としてでは無く、護衛として雇って貰えないかと考えている。今の所、他はないな」

「なるほど、なるほど。だいたい事情が分かりました。まず、此処での返答は難しいとしかお答え出来ません。無論、港町までご一緒致す事は此方も願うところですが、其方も未確定事項が多い様子。私ども街へ着いてすぐに次へと出るわけにも行かず、護衛ともなると私にはコプラが居りますからな」

「此方とて無理を言っているのは分かっているし、無茶を通すつもりもない。向こうへ着いてから慌てて探すより、此処で進めていた方が何かと良いと思っただけだからな」

「えぇ、私も同じ意見です。其方のご予定が決まり次第、再度お話しを致したく思いますが、宜しいかな」

「其れは是非と、答えたい所だが、貴族相手の謁見にいつ許可されるか、其れまでお待ちいただくのも心苦しい。其方の予定を狂わせる訳にはゆきませんから此方からの連絡が無い場合は忘れてくれて結構です」

「何と、此の街で貴族は一人しかおりません。あのお方は実直な方故、数日中にはお会いできましょう。それにしても驚きました、まさかお相手がフォリス様とは存じませんでしたな」

「おや、人となりを知っているのですか。其れは是非お伺いしたいですね」

「まだお会いしていない様で。良いでしょう、私も直接言葉を交わす事はありませんが、幾度か目にする機会がございましたので其の時思った事で宜しければ」

「紹介状を認めて頂く機会を得られましてね、今はその返答を待っている所なのです」

「ほう、素晴らしいですね。フォリス様へ面識がある方とは、其のお方は良き出会いであった事でしょう。貴方がたも良いご縁をお持ちの様だ。良いでしょう、この街の領主様の名をジョクラトルと申し、ルードゥス領を王より賜与され、ジョクラトル・フォリス・ド・ルードゥスと名乗る事を許されました。実に領民思いの実直なお方と、我々商会の評価は高こうございますな」

「で、領民思いの領主様は、紹介状を携えた怪しい一行にも喜んでお会いして下さるか、意見をお聞きしても」

「其の紹介状が何方かにもよりますが、わざわざ書いてくださった方の顔に泥を塗る訳にも行きませんでしょう。数日中にはお会いできると思います。ならばこそ、此方にも準備する時間が出来ます。今の話をお聞きして事情は分かりました、領主様への紹介状を認められるほどのお方と知り合いならば信用は出来ると言うもの。先ほどのご依頼についてですが、前向きに検討させていただきます。ルルスス商会のドゥオをお尋ね下さい。此度の獲物の皮の代金分を含め、今度の事をお話し致しましょう」

「明日か、明後日には必ず顔を出すとしよう。此の良き出会いの先により良き未来が在らんことを」

「私たちの出会いに乾杯を」

 ネムロスさんとドゥオさんは握手を交わし、晩餐へと移っていった。

 商売の話とか無く、目の前のお肉の話だったり、ネムロスさんの狩りの腕前の話だったりと、ドゥオさんは話し上手聞き上手で、時折話辛そうな事に及ぶと直ぐに話を逸らすところがすごかった。

 どちらかというと、今後の為に言葉の中から踏み込んで良い線を探っているようで、他愛ない話から此方の情報を読み取ろうとする商人の気概に少し壁壁した。

 けれど其の話の中には私たちも知りたい情報、つまり港町までの道のりの事が含まれていたりと、あざとさが伺えたから厄介だった。

「随分と長く居座ってしまいましたな。まだまだ後ろ髪が引かれる思いではありますが、今日はこの辺りでお開きとしましょうか。と言っても直ぐ隣りに居りますので、何かあればお声をおかけください」

「困った時はお互い様だ。明日開門と同時に街へ入るのだろ、ルルスス商会の場所を確認しておきたい、ご同行しよう」

「分かりました。ではまた明日……」


「信用して良いのですか」

 冬の夜風は体に染み込む寒さ。長い棒で風よけの簡易な幌を張り、地面の冷えが伝わらないよう布を敷いた。荷物を枕代わりに高さを調節する。

 広くはない。私とお姉ちゃんが二人所狭しと横になれるだけの広さしか無く、ネムロスさんは外で火の番をしながら過ごすと言っていた。

 幌の中から商人、デュオさんについて聞いてみるも。

「其れは向こうも同じだな。此方としては北の街までの案内人と路銀稼ぎ、其れに馬を処分出来れば問題ない。其れも適正価格であればこれ以上望むべくもなく」

「彼も一商人ですからどれだけ足元を見てくるか、其れは当たり前とも言えますが。前契約が出来るなら一考の余地もあるでしょう、其れも保障の無い私たちでは出来ないでしょうね」

「北の街まで同行出来たとして、其の途中で襲って来る可能性もあるが、この様な場所で野宿している旅人に期待しているほどの実入りは無かろうよ。素直に馬を安く見積もった方が得というものだ。つまり彼らから襲われる可能性は低いと言う事だ。普通に盗賊は居るだろうがな」

「其の時は鴨が来たと喜びましょう。身ぐるみ剥いで山分けです」

「……盗賊に襲われぬことを祈ろうよ」

 フォスレスさんも割と前向きであり、信用していると言うより可能性を示唆した上対処出来ると……。しかも野盗については野蛮な事を言う。

 もう此処まで来てしまえば二人の方針に反対することは出来ない。代替案も思いつかない私は頷くだけだった。

「話は分かりましたが、先程から何をしているのですか」

 ネムロスさんは先ほどから少しだけ大きく、縦長な木枠を汲んでいた。

 どれも山の中に落ちていそうな、薪には細く少し長めの棒。

 其れに焚火の上に鉄板を乗せて木くずを炙っている。

「残りの肉を燻製にしようとしている。皮に関しては鞣すことが出来ぬ故、皮のまま彼らに売る事にしたが、肉は食料に丁度良いからな、保存食を作ろうと思う」

 木々を麻縄で固定してゆく。中にお肉を吊るす場所も拵え簡易的な燻製器を作成していた。

 器用だなと思いつつ、その手際を眺め木片から立ち込める煙を見つけた。

「此れで朝には出来ているであろうよ」

「後は私が見ていますから、休んで下さい」

「あぁ、そうさせて貰おう、後は頼んだ。リアももう遅い、少し寒かろうが外套に包まって寝るが良い」

 夜も深まる時間。此処は街の外で安全も保障されていない。

 此方のことを気にする様子もなく、椅子にするには少し小さな丸太に腰掛け、外套に包まれ眠るネムロスさん。其の隣に座り火を眺めるフォスレスさん。

 いつも火の番を預かるネムロスさんとフォスレスさんに感謝の意を込めて言葉を紡ぐ。

「おやすみなさい……」

「あぁ、おやすみ」

 いつも通りに返してくれる言葉に少し安心を覚えつつ。フォスレスさんとも目が合ったけど優しく微笑みかけられ、その身を横たえた。

 良く寝た後なのに、体はまだ寝足りないと謂わんばかりに意識は微睡みの中へと旅立っていった。


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