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もう一人の被害者

カンナside



「お母さんを…殺すなんて…」



「カンナは同情する必要ないよ。あいつは、お前の両親も殺してるんだからな」



だけど…。


人の心もない…それは蓮も同じだよ。



「あっちの世界にいるのはちょうどよかったんだ。日に日にこの顔がリシルに似てきていたからな」



あっちの世界…。


あたしから、玉と鏡を奪うために…。



“強盗が入ってね…”



“首を絞められたわけじゃないのに、窒息死だったのよ?”


まさか…。



「蓮が…おばあちゃんを殺したの?」



うそ…だよね?


そんなことするはずないよね?


蓮…違うっていってよ。



「まさか、いざよいの日に、お前がこっちの世界に行ってしまうなんて思ってもみなかった。


誕生日にお前の家を尋ねたら、もう既にカンナは消えていた。おばあさんに“白虎の玉はどこか”と聞いたんだ。


おばあさんは、俺が鳳凰の鏡や玉の存在を知っていたからか、驚いてたよ。


素直に教えれば生かしておいたものを、災いだと騒いで俺に魔力を向けてきた。だから殺してやったんだ。


その日のうちに、俺も麒麟の鏡でこの世界にきた。


あっちで捕まるのは勘弁だからな」



うそだよ…。


そんなこと…信じられないよ。



きっとおばあちゃんは、蓮が魔族ってことに気づいたんだ…。



麒麟の鏡で蓮もこの世界に来たことがわかった。


だから…。



「あぁ‼︎それと一つ。朗報を教えてやるよ」



「朗報?今は何を聞いても嬉しくない」



蓮は、鼻にかけた笑いこぼすと、



「ユリは…死んでないよ」



そう口にした。


えっ?


ユリが…死んでない?


生きてるの?



「カンナをこの世界に戻すために、嘘を言ったんだ」



「どういう…こと?」



なんでそんな嘘を。



「同じ顔の人間が死ねば、鏡の中でリンクして死ぬと思っただろ?


俺を助けるために、リシルを助けにこの世界に戻ると確信してた」



なら…。



モアとユリがリンクしてると思いこませるための…うそ?



そんなの…



「おかしいよ…蓮」



じゃぁ、どうして…?



「どうして、10日前にユリが死んだって言ったの?なんで、モアが死んだ日を、蓮が知ってるの?」



「………」




「モアも…蓮が…殺したの?」



蓮は、しまったというような表情で唇を噛んだ。



「答えてよ!!蓮が!!モアも殺したっていうの!?」



「あいつに…顔を見られた」




“もしかしてあんた…あっちの世界でカンナが好きだった奴なんじゃ…”




「ペラペラしゃべりすぎたお前が悪いんだよ。


モアを生かして帰せば、お前に俺の正体がバレれて、すべてが水の泡だからな」



モア…。



わかる。


今ならはっきり聞こえるよ。


モアの最期の言葉…。



“あいつは…カンナの世界の…”




モアは倉庫で玄武の武器を見つけた。



だから、モアがいう“あいつ”とは、玄武王のことで、



その後に続く言葉は



“武器を作ってた…”



そう言いたかったんだと思ってた。



でも、違う。




モアの最期の言葉は、



“あいつは…カンナの世界の…好きだった人”



そう言いたかったのね。



“カンナ…鏡を探してはいけないわ”



探しちゃいけない鏡も、


鳳凰じゃなくて、麒麟の鏡。



麒麟の鏡を探していたら、いずれ蓮に会う。



“カンナに傷ついて、ほしくない”



蓮に会ったら、あたしが悲しむのを知っていたから…。



だから…。



「よくもユリと同じ顔のモアを殺せたわね‼︎」



吐き気がする。


あたしは、こんな男を好きで、


ずっと付き合っていたなんて…。


蓮を見抜けなかった自分が愚かすぎて情けない。



「絶対に許さない!!あんただけは、絶対に許せない」



「許せない?よく言うよ。カンナも好きな人ができたって、俺を簡単に捨てたじゃねーか。


カンナの言う好きな人ってのは、兄貴のことだろ?」



「そうだ…って言ったら?」



「もうすぐここに来るよ。カンナを助けに、独りでね」



えっ?


何を…言ってるの?


若様がここに来る?



「お前の髪の毛をカイリに送りつけてやった」



蓮…


どこまで卑怯なことをするつもり?



「残念だけど、そんなことしても無駄だよ」



「無駄?それはわかんねーよ。

国も身分も捨てて、お前を迎えにくるか…。それとも、見殺しにするか…どっちかな」



蓮は、まるでゲームを楽しむ子供のように、満面の笑みを浮かべる。



「俺の理想は、お前を助けにきて、ここで死ぬ。そんな展開を期待してるんだ。


大事な人を守って死ぬなんて、

最高のハッピーエンドだろ?」



「蓮…馬鹿じゃないの?

若様は平気であたしを向こうの世界に返すような人よ。

なのに、国も身分捨てて…しかも1人でなんて、そんなこと絶対にありえない」



蓮…お願い…やめて。


胸騒ぎがして仕方ないの。


ここにくれば、間違いなく若様は殺される。


若様…。


信じてるからね。


お願いだから、来たらダメだよ…。



「いくら待っても無駄よ。だから…早く、あたしを解放して」



「そうかな?俺は自分のシナリオに期待するよ」



蓮がそういうと、



「望み通り来てやったぞ」



ガラっと開いた扉。



若様‼︎


どうして…。



「ほらな?言っただろ?」



若様は蓮を見ると、目を見開いた。



「リシル…」



「兄貴…やっと会えたな」



「若様…この人はリシル陛下じゃない。…」



「どういうことだ」



挙動している若様を見て、くくっと笑う蓮。



「やっぱり、兄貴も知らないんだな。俺とリシルは双子なんだよ」



「なに?」



「この日をどんなに待ちわびていたか。兄貴…人のものをとったらいけないんじゃねーの?ベリカ王妃にはそんなことも教わらなかったのか?」



若様は、すべてを把握したように、

ゆっくりとあたしに視線を移した。




「言っておくけど、少しでも魔力を使ったら、カンナを殺すからな」



「魔力は使わない。その代わり、カンナを解放しろ。お前の目的は私のはずた」




「もちろん解放するよ。兄貴が逝ったあとな。約束は守るから安心して」



蓮がアゴで指図をすると、


15人ほどの側近は、若様に魔力を向ける。



「やめてよ‼︎蓮‼︎お願い‼︎やめさせて」



あたしの叫びも虚しく、


天井近くまで浮いた若様の体は、

そのまま急降下して、床に叩きつけられる。



「若様‼︎魔力を解放して」



あたしの声が聞こえているはずなのに、魔力を使わない若様。



玄武の男が若様に手をかざすと、


勢いよく手のひらから出てきた水。


その水は細かな氷に変わって


若様の体に突き刺さった。



「…っ‼︎」



15対1だなんて…。


卑怯だよ。



「蓮‼︎ 皇帝にこんなことして、ただじゃすまないわよ‼︎」



「兄貴が死んだあとの心配をしてるのか?」



「蓮‼︎」



「じゃぁ、とどめをさせ」



風の魔力で、何度も上下に操られる若様の体。


もう、若様の意識はきっとない。



「蓮‼︎やめてってば‼︎」



どうすることもできず、


ぎゅっと瞳を閉じると、


突然、床からぐぐぐっと、鈍い音が聞こえてくる。


何?この音。


あたしは、壁に耳を当てると音の鳴る方を探した。


えっ?


これは…何?


かすかに空いてる床と壁の隙間から、

何かがこっちに押し込まれてくる。


それは、とても薄くて、


鋭い…ナイフのよう。


これは…はがね


なら…ヒナタ?


ヒナタ…なのね。



すごい…ちゃんと、溶かしたんだ。


形は悪いけど、最高の包丁だよ。



あたしは、その小さなナイフを手に取ると、思いっきり力を込めてヒモを切った。



「そろそろ、死んだか?」



ほどけた…‼︎



「若様‼︎」



倒れている若様の元にかけよると、ぎゅっと抱きしめた大きな体。



若様…お願い。


目を開いて。


若様‼︎


若様は、パッと瞳を開くと、あたしを見て、笑みを浮かべた。



「こんな程度で私は死なない」



「若様‼︎」



生きていたことが嬉しくて、涙が溢れてくる。



「若様…どうしてこんな無茶なこと…」



「お前と約束したからな」



「えっ?」



“命に変えても守る”



若様…。



あたしの膝で倒れている若様の体をぎゅっと抱きしめた。




「カンナ…どうやってヒモを…」



あたしが自由になると、勢いよく蔵の中に入ってきたキトとシュン。



「貴様ら…」



若様の姿を見たキトが魔力を解放すると、


四方を囲む壁が吹っ飛んだ。


まるで赤子を扱うように、


あっと言う間に15人を片付けた二人。



「使えねーやつらだ」



吹っ飛んだ屋根をチラッと見上げた蓮は、


勢いよく、空に向かって武空する。



「逃がすか‼︎」



あたしの膝で倒れている若様が、空へ片手をかざすと、


吸いこむかのように、落ちてきた蓮。




「とどめは俺が刺す。モアのカタキだ」



蓮に向かって両手を向けたキト。


蓮の周りだけにできた竜巻は、あっと言う間に蓮の体を包みこむ。



あたしたちの前に倒れた蓮の首は、

変な角度に曲がっていた。


思わずぎゅっと瞳を閉じ、顔を背けたあたし。



「ヵ…ンナ…」



そう呼ぶ声に、

もう一度蓮に視線を向けると、


最期にあたし見つめたあと、静かに瞳が閉じていく。



さよなら…蓮。


同情は…できないよ。


おばあちゃんにモア。


あたしは、


大事な人を、二人も失ったんだから。



だけど…


ここにもう一人いた…。


王権争いの被害者。



「これで、やっとあいつも成仏できる」



初めて見たキトの涙。



あたしは、蓮を前にゆっくりと瞳を閉じた。







無事、宮殿に戻れたのはいいものの、


“お前のおかげで死にかけた”と言い、


何から何まで、あたしに身の回りの世話をさせる若様。



「痛っ‼︎」



「あっ。ごめん」



「もっと優しくふけないのか」



お風呂にも入らず、


あったかいタオルで体をふかされてるあたし。



でも、その体のアザを見るたび、


申し訳ないと罪悪感に包まれる。



「私から離れれば、どういうことになるか、忘れるなよ」



若様は、自分のアザを指さしながら、念を押す。



「絶対離れないから…大丈夫」



もう揺るがないと、若様の瞳をしっかり見てそう言ったあたしに、



「見せたいものがある」



手をとると、宮殿の外へ出たあたしたち。



若様の武空でたどり着いたそこは、



「わぁっ!!凄い絶景だね!!」



風が気持ちいい丘の上。



「あれが、白虎の城跡だ」



「すごい!ここからならよく見える!」



あたしが、初めてこの世界にきた場所。




あれ?


これは…何?


気がつくと、いくつも置いてある石。



「墓だ」



「えっ?」



「カンナの両親と、私の母上。それにおばあ様とモアだ」



そうか…みんなここで…同じ場所で、眠っているのね。



「カンナ…」



「ん?」



若様は両手であたしの頬を包みこむと、穏やかな眼差しで見下ろしてくる。



「私の…妃になってほしい」



「えっ?」




「結婚…してくれないか?」



お父さんとお母さんの前でそう言ってくれた若様。



「ずっと一緒にいたい。そしていつの日か、この丘で共に眠ろう」




その言葉にコクリとうなずくと、


優しくあたしを包みこんでくる若様。



「約束する。必ず…お前を幸せにするよ」



幸せになるってことが、


どんなに大変で、辛いことか、


あたしも若様も充分すぎるほど、

味わってきた。


だから、そう約束してくれた若様の


言葉に、ただただ涙が溢れてくる。



視線が絡み合って、


笑顔になったあたしたち。



「カンナ…愛してるよ」



「あたしも…愛してる」




愛の言葉と一緒にくれた誓いのキスに、



あたしは、


ゆっくりと瞳を閉じた。







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