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複雑な想い

あたしたち3人は、そのまますぐに玄武城へと向かった。


王は、こないだのような広間ではなく、自分の部屋へあたしたちを招き入れる。




「いずれ、尋ねてくると思っていた」



そう呟きながら、キセルに火を付けた王。



「聞きたいことがあるんです」



「泰子のことだろ?」



王は即答で返してくる。



「はい。母とは知り合いなんですよね?詳しく知りたいんです。教えてください…母のこと」



ふーっと吐かれた白い煙は、あたしと王の間を漂う。


消えていく煙を待つかのように、

王はゆっくりと話しを始めた。



「私と泰子は…恋仲だった」



「えっ?」



一瞬、耳を疑わずにはいられなかった。



お母さんと…この人が…恋人?



「泰子も向こうの世界の人間だ。私たちは結婚するはずだった。…だが…」



それっきり、口を閉ざした王。


結婚まで考えていた関係だったの?


なら…。



「ど、どうして…結婚しなかったんですか?」



チラッとあたしを見た王は、


小さなため息を吐くと話しを続けだした。



「泰子に愛想をつかされてしまったんだ」



「えっ?」



「私の金銭や女関係が原因だ。だが私はそれらを反省し、もう一度やり直したかった。


どうしても諦めきれなかったんだ。


なぜなら、あいつの腹には私の子がいたからだ…だが子供は独りで育てると…」



えっ?


お母さんのお腹に…この人の子供が?


それを聞いて、


思わずあたしは、シュンに視線を移した。



床一点を見つめ、瞬きも見せないシュン。



“父上に会いに行ってた…”



じゃぁ…シュンはこの人が父親だってことを…知っていたんだ…。




「“一緒になるくらいなら死ぬ”とまで言われ、逃げる泰子を追いかけると、実家にある古い蔵にあいつを監禁した。


数日後、様子を見に中をのぞくと、泰子は蔵にあった鏡を手にしていた。


そして光と共に消えていく泰子を追い、この世界に辿りついていた」



そのとき使ったのが…麒麟の鏡。



隣でずっと黙って話しを聞いていたシュンは、ゆっくりと王を見上げると口を開いた。



「そんなことがあったとは。ただ、一つだけわかったことは、あなたが最低な人間だと言うことです」



それだけ行って立ち上がると、



「カンナ…もう帰るぞ。これ以上話しを聞いても、なんの特にもならない」



えっ?


でもまだ武器のこととか、携帯のこととか聞きたいことがあるのに…。


さっさと出口の扉に向かうシュンを追いかけようと、ヒナタと立ち上がった、



そのとき、



「ぐふぉっ‼︎」



背後で聞こえた玄武王の声に、

パッとヒナタと振り返った。




「きゃぁぁぁ‼︎」



ヒナタは、あたしの腕にぎゅっとしがみつく。


目の前には、


玄武王の胸に突き刺さっている槍。


な、何が起こったの?


でも、その状況を把握するのに、

そう時間はかからなかった。



「こいつはすげーや‼︎一発であの世行きだ」



前の入口から入ってきていた一人の兵士。


瞳の色が…黒…。



玄武なのに…なぜ王を…。



「父上‼︎ 貴様、謀反を起こすつもりか‼︎ぶっ殺してやる」



シュンは、兵士の胸ぐらを掴むと

宙に浮かせる。



「こいつは王じゃない‼︎偽物だ‼︎ついでにお前たちも死ね」



バキっと、その兵士をシュンが殴ると、


隣でふわぁっと膨らんだ、ヒナタの巨大な炎の玉が、彼を吹っ飛ばした。



「…っ‼︎こ、こっちへ…」



上座で小さく手招きする王に少し近づいたあたし。



「ま、まるで…生き写しの…ようだ…」



「……」



「かんな…気を…つけろ…。お前をずっと近くで…監視している…奴が…いる…。気を…つけるんだ…」



えっ?


なんの話しをしているの?


あたしを、近くで監視?



「シュン…す、すまなかったな…」



その言葉を最後に、バタっと息絶えた王。


若様を襲うために、自分が考えた戦略で、自らが滅ぶなんて…。



「……っ」



シュンは俯くと、無言の涙を流していた。





玄武王が崩御したという情報は、

すぐ宮殿にも届いた。


城では内戦が始まり、間も無く崩壊した玄武。



王が偽物だとバレていたなんて、


誰かにしゃべってしまったのね。



どちらにしろ、玄武が崩壊するのは時間の問題だったのかもしれない。



「その場に居合わせただと‼︎‼︎」



久しぶりに響き渡った若様の罵声。



「でも、シュンが一緒に行ってくれたから…」



あたしがそう言うと、若様はギロリとシュンを睨みつけた。



「妹が妹なら兄も兄だ!」



「も、申し訳ございません」



深く頭を下げるシュンと、


あたしたちの会話を横で聞いていたキトは、



「お言葉ではありますが…」



そう前置きして、ゴホンと咳払いをする。



「陛下があまりにもカンナをしばりつけるゆえ、カンナも“玄武に行く”と陛下に言えなかったのでは…と察しますが…」



えっ…。


珍しくあたしの見方についてくれたキト。


若様は、渋い表情で顔でしかめていた。



「もう、どこに行くなり、彷徨うなり、好きにさせては…」



ん…?


やっぱり、なんか感に触る奴だ。



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