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ふるさと

シュンの部屋を出ると、


自分の部屋を目指して長い廊下を歩いた。


“俺は白虎王の子じゃない”


“腹には、すでに俺がいたんだ”



シュンから聞いた言葉が耳にこだまする。


シュンの父親は、どんな人なんだろう。


お母さんは、どうしてその人から逃げていたの?


お父さんと再婚して…あたしを産んで…。


なんだか、あたしがずっと思い描いていたお母さんとは、少しイメージが違う気がする。


途中、渡り廊下から見えた中庭。


あたしは、そこへ降りると縁側に腰を下ろし、空を見上げた。


あたしにおばあちゃん以外の家族がいたなんて…正直、嬉しい。


もう、あっちの世界には、おばあちゃんもユリもいない。


帰ることは、きっとないだろう。


あの世界は…あたしのふるさと…。



「うーさーぎおーいし…かのやま…こふなつりし、かのがわ…」



ん?



なんだか気配を感じて振り向くと



「……アギ様‼︎」



「透き通るような歌声ですな…続けてください」



「聞かれちゃったのね。恥ずかしいな…」



「素敵な歌ですね」



「あぁ…この歌は、ふるさとっていう童謡なんです」



「えぇ…知っていますよ」



へぇ~。


アギ様が知ってるなんて。


ってことは、“ふるさと”ってそんなに古い歌だったんだ。


奈良時代よりも前に作られたなんて…。


えっ?


奈良時代?


いやいや、そんなわけ…ないよ。



「あなたの母上様も、よくそうやって縁側に座り、空を見上げながら、歌っておいででした」



「えっ?母も…この歌を歌っていたの?」



「はい。わたくしが、“いい歌ですね…奥様が作られたのですか?”と尋ねると、笑いながら“いいえ”とおっしゃられました。


初めて聞く歌でしたが、奥様がよく歌われていたので、今でも耳に残っております」



初めて…聞く歌?


なら…



「アギ様は…母から聞くまでこの歌は」



「えぇ…知りませんでした」



どういう…こと?


じゃぁ…お母さんは、


誰からこの歌を教わったの?



“魔力が使えないことを疑問に思ったことは?”



ふと浮かんだ玄武王の言葉。


あたしもシュンも魔力を使えない理由って…


ま、まさか…


お母さんもあっちの世界の人間?



こんなの単なる想像に過ぎないけど、


ふるさとの歌。


玄武王の言葉。


それらが、そう思わせてくる。


そして、


その答えを知っているのは…


玄武王。


それに、



「どう考えてもおかしい」



「何よさっきからブツブツ」



部屋に戻り、頭を抱えていたあたしの隣で、呆れた顔して見てくるヒナタ。



「また始まったわ。カンナの独り言」



「だってどう考えてもおかしいんだもん」



「だから何が」



「玄武王の話し」



“これはお前の携帯だろ?”



どうして携帯がわかったんだろう…。



「玄武王?」



「うん。30年前にこっちの世界に来たって言ってたじゃない?やっぱり変だよ…」



「それのどこが変なの?」



「だって30年前は…あっちの世界にも携帯はないのよ」



「えっ?」



「なのに携帯を知ってた。もし本当に30年前からずっとこっちの世界にいるなら携帯を知ってるなんてあり得ない」




考えられるとしたら…



今でも鏡を使って、行ったり来たりしてるってこと。


でも鏡はあたしが持ってる。



それに何十年もの間、鏡を持っていたのは、あたしのおばあちゃんだし…。



“これは鳳凰の鏡だよ”


あれ?


鳳凰の鏡?



「ヒナタ!!キトラの秘宝伝ある?」



「うん!!さっき荷物整理してるとき、戸棚にしまったわよ」



「もう一度みたい」



キトラの秘宝伝を一年ぶりに開き、

文を確認する。


“いざよいの月が満ちるとき、


鳳凰の鏡。麒麟の鏡。


キトラに眠るもの、


光の扉を閉める”



やっぱりそうだ‼︎


鳳凰の鏡のことばっかりで、


すっかり忘れてた。


鏡は二つあるんだった。


なら、玄武王は麒麟の鏡を使ってこっちの世界にきたのかな…。


そして今でも…まだ使っている。


なのために?



「ヒナタ…あたし。もう一度、玄武王に会いに行く!」



「…っ‼︎ 冗談でしょ?」



「聞きたいことがありすぎるの。それに、なんとなく、あの人はあたしを殺すことはないと思う」



ヒナタは、“はいはい‼︎”って相づちを打つと、



「どこまでも付き合うって約束したからね。あたいも一緒に行ってあげるわよ。ったく…じゃあ出発いたしますか?皇女様‼︎」



もう‼︎嫌味なことばっかり言って。



でも…



「ありがと…ヒナタ。いつもごめん」



ヒナタは、ふっ…て、はにかむとあたしの肩をポンっと叩いた。



若様に言っていかないと…。


はぁ…無理だ。


絶対ダメって言われそう。


なら…




「シュン…今から玄武城に行ってくるね」



シュンにだけ報告して行こうとしたら、


シュンは無言のままスッーとその場で立ち上がった。



「俺もついていく」



「えっ?」



「お前は俺の妹で、皇帝陛下が何よりも大事にしてる人だ。“はい‼︎いってらっしゃい”ではすまない」



「じゃぁ…お願い。ついてきて」



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