表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/82

終幕

カンナside


「もうすぐ大会が始まるから急ごう‼︎」


あたしたちが組織を出るころには、社員たちは誰一人屋敷にはいなかった。


魔力大会が行われる会場。


そこへ着くと、あたしは観客席に座った。


ヒナタは、あれよあれよと言う間に勝ち抜き、決勝の場に名前が上がっている。



その時、会場からの拍手とともに、姿を現した陛下。


よかった。


宮殿には、いないのね。


決勝に進む選手を見回す陛下。


だけど、ふいに陛下の視線は


ピタっと止まる。


その視線の先を追うと…ヒナタ?


えっ?


…もしかして…ヒナタに気づいた?


あたしは、ヒナタと陛下を交互に見つめていた。



結局、ヒナタは決勝で入賞することができなかったけど、


“力を試すいい機会だった”って満足な笑顔を浮かべていた。








カイリside






「若様…いえ…皇帝陛下。終結でございます」








キトのその言葉に、





私は、ゆっくりと腰を上げた。










カンナside




大会の表彰式中も陛下から目をそらすことなく、その姿を監視していたあたしたち。



大会が終わると、陛下は側近たちに連れられ席を立つ。



「行ってくる」



「うん!カンナがんばって!1分でも長くね」



「了解」



あたしは、陛下のあとを追うと、


会場を出ようとする後ろ姿を呼び止めた。



「皇帝陛下‼︎」



その瞬間、10人ほどの側近があたしの周囲を取り囲む。


陛下は、あたしに気づくと、じっと視線を送ってきた。



「お話しが…あるんですけど…」



そう言葉にしたあたしを見て、少し首を傾けた陛下。


しばらく続いた沈黙。




「母上のお知り合いだ。皆、下がっていろ」



護衛たちにそう告げると、陛下はチラッとあたしを見て会場の外へと出ていく。


あたしは、そのあとを追って行った。



“下がっていろ”と言われたのに、

数メートル後ろをついてくる5人ほどの護衛たち。



しばらく歩くと、陛下は緑が広がる芝生の上に腰を下ろす。


それに続いてあたしも隣に腰を下ろした。



「お久しぶりです。あの…こないだは、宮殿を抜け出して、すみません」



顔色を伺いながら言葉にすると、陛下は無表情で何も反応してくれない。




「で、話しとは?」



「あぁ〜はい」




何か会話を作って時間を稼がなきゃ。


なんでもいいから話しを…。



「あの…こないだ作ったさつまいもの料理ですが…初めて食べた食感と…」



「あぁ〜とても美味かった」



「あれは、あたしがいた世界の、食べものなんです」



「そなたがいた…世界?」


陛下は少し小馬鹿にしたように、にやけながらあたしを見下ろしてくる。


この人が信じようが信じまいが、


そんなことは、どうでもよかった。



「はい。実はあたし…違う世界からきたんです」




「ほう…面白い」



陛下は意外にも、あたしの話しに耳を傾けた。



「信じますか?」



「もし本当なら、その世界とやらに、余を連れて行ってもらいたいものだ」



連れて行ってもらいたい?



「その世界に行きたいんですか?」



「いや、どちらかと言えば、この世界から逃れたい…という方が正しいのかもしれないな」



えっ?


「はっ…すまない。なぜ余はそなたにこんな話しを…」



そう呟いて、口を閉ざした陛下。



「この世界から逃げたい理由でもあるんですか?」



まるで、現実から目をそらしたそうな陛下の言葉。


陛下は、あたしを見ると、フッと笑みをこぼした。



「別の世界から来たという言葉を信じて話しをしている。だから、戯言と思い聞き流してくれればいい」



「いえ…あたしでよければ…話してください」



深いため息を吐いて、青い大空を見上げた陛下。


そして、もう一度あたしを見下ろす。



「自由に…生きたかった」



「えっ?」



「自然が…好きなんだ」



「……」



「風を肌で感じながら、花の香りをかぎ…そんな風に感情のままに“人間”らしく生きてみたかった。ただそれだけだ」



陛下…。



「贅沢だと思うか?」



「い、いえ…」



国の頂点に立つ人で、


誰もこの人には逆らわなくて、


金銭にも生活にも困らない。


なのに、人間らしく生きたいだなんて…。



「余は皇帝になど、なりたくなかった…。兄を抹殺し、皇帝までも殺し、そんな王が良い国を作れると思うか?」



えっ…?殺した?



ど、どういうこと?


びっくりして、陛下を凝視すると、

鋭い眼差しがあたしを見つめる。



「ごめんなさい。よく意味がわからなくて…」



「暗殺したんだ」



「暗殺…って誰を…」



「前皇帝陛下を…父上を…余が暗殺した」



自分のお父さんを…


若様のお父さんを…殺したの?


そんな…。




“皇帝になどなりたくなかった。人間らしく、自由に生きてみたかった。ただそれだけだ…”



陛下がこんな風に生きてきたなんて、


こんな闇を、心に抱えていたなんて。




「だが…その兄上も生きておられるかもしれない」



「陛下…あの…」



「どうした…」



「ごめんなさい…」



「……?」



知らなかったから…。



陛下がそんな風に生きてきたのを


知らなかったから…。



ん…?


あれ?


くるっと辺りを見回すと、さっきまでいた、陛下の側近たちの姿が見えない。



「陛下…。逃げて…ください…」



「……?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ