真珠の指輪
カンナside
「カンナ‼︎…今日はごちそう作らなきゃね」
まだお昼の2時だって言うのに、
夕食の準備を始めよう‼︎って騒いでるヒナタとモア。
「なんでごちそうなの?おめでたいことでもあった?」
2人は呆れた表情で首を横に振りながら顔を見合わせてる。
「もう!今日は若様の23歳の誕生日なのよ?なんであたいたちが知ってて、カンナが知らないのよ」
えっ?誕生日?
逆にどうして2人は知ってるのって、思うけど。
あぁ〜キトやシュンの情報か。
若様…一言も言ってくれないし…。
そうか…誕生日なんだ。
じゃぁ…なんかプレゼントとか用意した方がいいのかな…。
それか直接…
『若様‼︎お誕生日おめでとう‼︎何か欲しいものある?』
って、聞いた方が早そう。
でも、そんなこと聞いたら…
『ん〜そうだな…お前が欲しい』
……っ‼︎
今の若様なら…十分ありえる。
はぁ…何考えてんだろうあたし。
勝手にバカな想像して自己嫌悪に陥りそうだ。
結局、5時間もかけてパーティーの準備をして、迎えた夕食。
こないだアギ様に仕立ててもらった豪華な衣装に身を包んだあたしたち。
あっ…そうだ。
せっかくこんないい服来てるし、
真珠の指輪もしよう。
大事な物がしまってあるケースの中から、1年ぶりに出した指輪。
「あっ…!それお母さんの形見だっけ?」
指輪を眺めながら訪ねてくるヒナタ。
「うん…。こういう時じゃないとつける機会ないしね」
あたしたちは、身なりを整えると、食堂へ向かった。
「若様‼︎お誕生日おめでとうございます‼︎次のお誕生日には、皇帝陛下として迎えられることでしょう。では!乾杯‼︎」
アギ様の言葉に、皆、グラスを合わせる。
ヒナタとシュンは、今時ばかりとお酒をガブガブ飲んでいた。
「若様…今日誕生日だったんだね。おめでとう」
あたしがそういうと、若様は、穏やかに微笑んでいた。
そんなおめでたい席の中、
あたしの隣に座るアギ様は、眉間に手を当て、難しい顔をしてる。
アギ様?
どうしたんだろう。
体調でも…悪いのかな?
「大丈夫ですか?」
「あぁ〜大丈夫だ。なんでもない。気にせず続けてください」
そう言って、今度は額に手の平を当て頭を抱えこんでる。
「なんだか…頭痛が…」
「えっ?」
熱でもあるのかな…と、アギ様の額に手を近づけると、
パッと勢いよく顔を上げたアギ様に、
あたしは、びっくりして身を引いた。
そして、なぜかいきなりあたしの腕をぎゅっと掴んでくる。
何が起きたのかわからないあたしと、
アギ様の行動にシーンと静まり返った食堂。
「カンナ…」
「は、はい…」
「この指輪は…初めて組織に来たとき…つけていたものだな?」
「えっ?あぁ〜はい。そうです。これを担保にして、組織からお金を借りようと思ったので…」
「そうか…。あの日…もっと近くで見ていれば…」
そう言って、アギ様は険しい表情で目を細めながら、指輪を見つめていた。
「あの…指輪が…どうかしたんですか?」
あたしがそう聞くと、
組織の人たちもアギ様の答えを待っているかの様に注目を集めている。
「魔力を…」
「えっ?」
「強い魔力を感じる。何かを守りぬく…強い魔力だ…」
……。
魔力…?
思わず、ずっこけてしまいそうだった。
あたしの持ち物に魔力を感じるとか言うアギ様に、ついにボケてしまったかと、心配になってくる。
「カンナ‼︎ちょっと見せろ‼︎」
いきなりキトに言われて、あたしは指輪を抜くとそれを差し出した。
「確かに…俺にはかすかにしかわからないけど、魔力を感じるぞ」
えぇ?
キトまで…ど、どうしちゃったの?
「若様なら、この結界、破れるのでは…」
キトから指輪を受け取った若様は、
手にした瞬間、驚いたように目を丸くして、あたしを見てきた。
「できそうだ」
ぐっと力を込めて、気を集中させた若様の手からは、ゆらゆらと青い煙が上がってくる。
その瞬間、
パーンっと弾ける音が食堂に響いた。
えっ?
ちょっと待って…
うそでしょ?
ま、まさか、壊しちゃったの?
それ、お母さんの大事な形見なのに…。
だけど、強い光を放ちながら、
真珠は、みるみるうちに膨らんでくる。
そして、若様の手の上で浮いていた物…。
「うそっ‼︎こ、これって‼︎」
ついこないだ見たばかりの物体に、ヒナタとモアは顔を見合わせてた。
「白虎の…玉…」
えっ?な、なんで?
どういうことよ‼︎
どうしてお母さんの形見が…。
「こ、こんな近くにあったとは…」
アギ様の言葉に、
「カ、カンナ…お前…」
ガタンと立ち上がったシュンは、
なんだか過呼吸になりながら、あたしを見降ろしてくる。
えっ…一体何がなんだか。
なんで、あたしのお母さんが白虎玉を持ってるの?
遠くに座る組織の人たちからは、
“白虎玉が見つかったそうだぞ”って歓声が沸いてる。
どうしてあっちの世界に白虎玉があったんだろう。
もしかして1000年前、世界が二つに別れたときに、
白虎の玉だけ、あたしたちの世界にきちゃったのかな…。
それを、たまたまあたしのご先祖様が拾った…とか。
いやいや、そんなわけない。
だったら、何千年も前から、代々の皇帝は偽物の白虎玉を持ってたってことになるし…。
えっ?
ほんと意味わかんない。
で、でも…まぁ、
本物の玉が見つかって、
よかった。
……。
…。
なんだか、モヤモヤする気持ちの中、
いつの間にか、若様の誕生日会は幕を閉じていた。
カイリside
なぜだ…。
“本物の白虎玉は、ベリカ王妃様が持って行かれたそうです”
それを、なぜカンナが持っている。
“カンナ皇女様と、側近の老婆の遺体だけが、確認されなかったのです”
まさか…。いや、そんなはずはない。だが…。
「若様も、そう思われますか?」
「アギ…」
「わたくしも、あの娘は白虎の皇女、カンナ様に間違いないと思います。鳳凰の鏡をこの世界に持ってきたこと、そして白虎玉を隠すかのように形を変え、持たされていたこと…」
「カンナが…白虎の皇女…シュンの妹なのか…」
「これは、推測にすぎませんがベリカ様は亡くなる前に、白虎王に鏡と玉をたくしたのではないかと…。ベリカ様は、家元の白虎を愛しておられましたので」
「その鏡を使って、カンナと老婆はあっちの世界に…ということか」
「御意…ですから青龍や玄武に、カンナが白虎の皇女と知られれば、間違いなくお命を狙われます」
「シュンは狙われたことなどないぞ」
「シュン様は元々白虎王のお子ではありません」
「なんだと?」
「白虎王妃様の連れ子でございます。なので周囲からは小姓をやとっていたと思われていました。
その後に産まれたのがカンナ様です。カンナ様は完全な白虎王の血を引く者。マリ王妃に知られれば必ず命狙われます」
“お父さんとお母さんは交通事故で死んだんだって”
“だからおばあちゃんとずっと2人で生きてきたの”
“一度でいいから両親に会いたいよ”
「カンナは何も知らない。両親が殺されたということも…何も知らないのだ。いざよいの日。あいつは必ず元の世界に返す」
「わたくしも、カンナの命だけを考えるのなら、それが懸命かと」




