メッセージ
「あの…近くで見ても、いいですか?」
「あぁ〜構わない」
許可をもらい、陛下に近づくと、かなり間近で見ることができた四神玉。
でも、玉の中を覗きこまないと、
文字が浮かび上がっているのかまでは、わからない。
触ってもいいのかなぁ…。
ゆっくりと両手を近づけて、
白虎玉に触れようとした、
そのとき
「そなた…カイリ殿下を知っているか?」
「えっ?」
突然頭上から浴びせられた質問に、
びっくりして硬直したあたしの身体。
「余の兄上だが」
「あぁ〜はい。確か…15年前にお亡くなりになったと…」
「誰も亡骸を見ていない」
「ど、どうしてそんなこと…」
「いや、もしも生きておられるのなら、この王の座を、代わっていただきたいものだ…そう思ってな…」
王の座を代わってもらいたい?
なんで急にあたしにそんな話し…。
だけど、その言葉を聞いて、
陛下…心配しなくても変わる日は近いから大丈夫よ…とつい思ってしまう。
でも、その日が来たら…この人はどうなるんだろう。
もしかして…処刑とかされてしまうのかな…。
それは、嫌だ…っていうか怖い。
でも若様だって、
お母様を殺されたわけだから、
この人に、あまり同情はできないけど…。
「四神玉を見れて満足であろう」
そう呟いて、陛下は4つの玉に、すーっと絹の白い布をかぶせた。
あっ…まだ白虎玉が見れてないのに。
でも、この部屋に置いてあるのはわかった。
これから3週間もあれば、また見れるチャンスはきっとあるはず。
「ゆっくり休め」
「ありがとうございます。おやすみなさい」
あたしは、もう一度、蓮似の陛下をチラッと見て、自分の部屋へと戻った。
次の日の朝。
「カンナと言ったな?実家からの客人が来ている。面会を許す。大広間へ来なさい」
あたしたちの部屋を訪ねてきたおじさんは、そう言って廊下へ促してくる。
組織からの…客人?
誰だろう。
ヒナタとモアと視線が絡み合うと、
あたしたちは目で無言の会話をして、大広間へと向かった。
広間には、左右に何十人と座っている陛下の側近。
その真ん中で待っていたのは…
「シュン…?」
あたしたちに気づいたシュンは、ニコッと微笑むと会釈する。
「今日がカンナの誕生日だということを忘れていまして、父からの土産を届けに来ました」
「……?」
「生ものですので、今日のうちに食べて下さいね。では、私は失礼いたします」
シュンは、ゆっくりと立ち上がると、一度、あたしたちに視線を送って、宮殿を去って行った。
そのあとに続き、側近たちも解散して行く。
シュン…?
一体、どういうこと?
何をしに来たの?
あたしたちの様子を見に来ただけ?
ううん。違う。
そんな訳ない…
だって…
「カンナ、今日誕生日だったの?」
ヒナタの言葉に
「もう‼︎水臭いなぁ。言ってくれればよかったのに」
ってモアが付け足す。
「あたし、今日、誕生日じゃない」
「えっ?なんで?どういうこと?」
あたしの誕生日は、去年のいざよい。
そんな日を、若様が忘れるはずなんてない。
シュン…一体、何をしに来たの?
部屋に戻り、シュンからもらった箱を開けると、
「あら、おまんじゅうじゃない」
“生ものですので、今日のうちに食べて下さいね”
その言葉を思い出し、3人でおまんじゅうを口にした、その時…
「何これ…なんか入ってるよ?」
モアは、口の中に手を突っ込むと、何かを取り出した。
えっ?
おまんじゅうの中に入ってたの?
「紙?…書物かな?」
小さく折られていた紙。
モアは、ゆっくりとその紙を開いた。
そこには…
---どりあが食べたい---
「「「えっ?」」」
同時に、その文字を読んだあたしたち3人は、思わず声が重なった。
「ドリアって、カンナが作るあのドリア?」
「なら、この手紙は若様が書いたのね。もう‼︎ほんとかわいいだから。カンナ‼︎帰ったらいっぱい作ってあげなきゃね」
そう言って、モアとヒナタはクスクス笑っていた。
なんでそんなことを、いちいちおまんじゅうの中に隠して…。
ドリアが食べたい…。
ドリア…。
“ドリアが食べたいと言えば、お前はすぐ私の元にきてくれるだろ?”
えっ?
こないだ若様から言われた言葉が、
耳の奥でこだまする。
まさか…。
「どうしたの?カンナ」
「“すぐ帰って来い”ってことだ」
「ええぇっ?」
今日は、あたしの誕生日でもなんでもない。
「絶対なんかあったんだと思う。すぐ帰らなきゃ‼︎」
「すぐって言っても…ど、どうする?」
「今日の夜、宮殿を抜け出そう‼︎」




