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カンナ side




ドンドンドン‼︎



「3人共起きろっ!ちっ!まだ寝てやがるか!」



ドンドンドン‼︎ドンドンドン‼︎



もう、キトの奴、朝っぱらからうるさいなぁ。



「モア?…キトの声じゃないの?」



だるくて、誰一人ベッドから起き上がれない中、ここぞとばかりに、モアに押し付けてるヒナタ。



「まだ6時だよぉ」



モアは、ブツブツ言いながらベッドから降りて扉を開けた。



「いつまでも寝てる場合じゃない‼︎」



部屋に入ってきたキトは、椅子に腰掛けると、



「お前たちよく聞け!」



普段からでかい声を、さらに張り上げながら続ける。


あたしたち3人は仕方なしに、ベッドから降りた。



「ここにきたとき、命を預けたつもりで働くと言っていたが、お前たちにも、ようやく組織の役に立つ仕事ができた」



確かに、鏡を探したい一心で、命を預けたつもりで働くなんて言ったかも。


ってか、“ようやく役にたつ”?


ようやく…ってなによ!


まるで、今までなんもしなかったみたいな。



「おい!!カンナ!!ぼーっとするな!!」



「してないよ!!」



「いいか!よく聞け!!お前たち3人は、明日から3週間、陛下のお世話役として、青龍の宮殿に入ることになった」



えっ?宮殿?



なに?


どういうこと?



「こんな幸運はない!お前たちは組織の密偵だ!


まず、宮殿に勤め始めたら、宮中の配置を調べるんだ。

そして屋敷図を作れ。

宮殿の中には、必ず逃げ道や抜け穴があるはず。そこをすべて探し出せ。いいな?そして余裕があれば白虎玉も探すんだ。期限は3週間だが、3週間もあると思うな!“3週間しかない”と思え‼︎」



寝起きで、まだ頭も働いてない中、


キトのペラペラしゃべる言葉が耳の中を流れていく。


っていうか、なんでうちらがお世話役になったの?


陛下の目にとまったってこと?




「わかったよ。宮殿の配置を調べて、ついでに白虎玉も見てくればいいんでしょ」



「とりあえず、準備にかかれ!支度ができたら、今日のうちに青龍の地へ入る」



今日?


もう行くの?


ほんとに、せっかちなんだから。


用件だけ淡々と話して、

部屋を出て行ったキトと、入れ変わるように、あたしたちの部屋を訪ねてきた若様。



若様は、あたしと視線が絡み合うと重たい溜め息を吐いた。



「また…お前を宮殿へ行かせたくはない」



若様…。


珍しく、力ない瞳を見せる若様。



「あたしたちはね、少しでも若様の役に立てたらっていつもそう思ってるんだよ?だから心配しないで」



若様は、あたしの言葉に相づちを打つこともなく、ただじっとあたしを見つめていた。



そりゃ、あたしだって、また、蓮と同じ顔に会うのはかなり憂うつではあるけど…。


でも、若様が皇帝になるために、一歩でも前に進めるなら、喜んで動く。



「必ず、無事に戻ってきてくれ。モアもヒナタもだ」



そう言った若様に、深く頭を下げたヒナタとモア。



「ありがとうございます。ですが若様…カンナのことは、あたいが命にかけて守りますから、どうぞご安心下さい」



モア…。



あぁ〜。あたしも魔力が使えれば、

二人に迷惑かけずに済むのに。



屋敷の人や、流白村の人、それに、若様たちに別れを告げて、青龍の宮殿に入ったあたしたち。



「こちらの部屋を使ってください」



あたしたちを案内してくれたおじさんは、ドアを開けると、

“随分使われてなく、湿っぽい部屋ですが…”と付け足した。



たしかに、豪華な部屋ではないけど、


遊びに来たんじゃないんだもん。


まずは宮殿を調べなきゃ…。



「今日は、陛下にお出しする夕食を手伝ってもらいます」



「…わかりました」



なんだ、夕食か。

料理なら楽勝だわ。


組織で何百人分の量を作ることを考えたら、こっちの方が楽だし。



「陛下は、芋が好物ですので、すべて芋を使った料理でお願いします」



すべて芋?


これまた、安上がりな皇帝で…。


あたしたちは、炊事場に入るとさっそく夕食の準備にとりかかった。



「芋だって…。なに作る?とりあえず、あたいは、肉と芋を煮るよ」



ヒナタは、肉じゃがでも作る気なんだろうか。


モアはジャガイモを茹でだした。


ってか、いくら芋が好きだからって全部、芋料理でいいわけ?


あたしたちが料理を作る間、


さっき部屋を案内してくれたおじさんは、ずっと、調理場であたしたちを監視してる。


その他にも10人くらいの人が手早く料理を作ってる中、完全に出遅れたあたし。


どうしよう…。芋…ね…。


とりあえず、揚げてみようかな。


そして、食事どき。


挨拶がてらに、陛下が食事をする広間に呼ばれたあたしたち。


正座をして前に座ったあたしたちを

軽く流し見た陛下からは、


別にこれと言って、何も言葉はない。


ずらっと並ぶ10人ほどの側近たち。


ゴクリと唾を飲む音が聞こえそうなほど、静まり返ってる広間。


あたしは、何度か、蓮の顔をした陛下をチラ見していた。


あぁ…惑わされちゃだめ。


この人は、蓮じゃない‼︎

蓮じゃないんだから!


何度も自分にそう言い聞かせた。


しばらくすると、あたしたちと陛下の間に、運ばれてきた食事。


並んだ食を、端からおじさんが少しずつ味見しだす。


毒味だろうか。


そして、なぜかあたしが作った料理を食べたおじさんは、ギロリとこっちに視線を向けてきた。


えっ?何?その目。


毒なんて入れてないよ?


毒味らしきものが終わって、


やっと食事をしだした陛下は、


あたしたちの料理に、コクコクと頷きながら、満足気に食べていた。


ヒナタもモアも料理の腕はピカイチだし、美味しくいただけたんだろうと思う。


そんな中、あたしが作った料理を食べた陛下の箸が、なぜか止まる。


えっ?やだ…なに?



「これは、誰が作ったものだ」



陛下の言葉に、思わず心臓がバクンって鳴った。


うそ…なんで?


マジ最悪。…やっぱダメだったか。




「あの…あたし…です」



そう答えると、側近が一斉にこっちを見てくる。



「カンナ…と申したな? またそなたか」



えっ?また…って何?


前にも何かしたみたいな言い方しないでよ…。



「これは、なんと言う料理だ」



「えっと…スィーツなんですけど、芋料理の中で、あたしが1番好きな、大学いもを作りました」



「………?」



陛下は、眉間にシワを寄せ、ポカーンとした顔であたしを見てくる。


あぁ…そうだ。“スィーツ”って言葉も“大学いも”ってネーミングもきっと通用してない。



「どうやって調理を?」



「はい…さつまいもを油で揚げて、煮つめた砂糖汁を絡めました…あとゴマをちょっと」



あたしが答えると、周りの側近たちも、大学いもを遠くからのぞきこんでいる。



「この様な物は初めて口にした。余は今、新しい食感に感動している。誠に見事だ」



えっ?


あっ…そうですか…。


よかった、OKの方か…。


甘い‼︎とか、食事じゃない‼︎とか、怒られるのかと思ったよ。



「余のこの気持ちに対して、そなたに何か褒美を与えよう。なんでも好きな物を申すがいい。何か欲しいものはあるか?」



えっ?


本当?


何かくれるの?


やったぁ。


じゃあ、何をもらおうかな。



「なんでも…いいんですか?」



「なんでもよい。何が欲しいのだ」



なんでもいいだなんて。


あたしが今、一番欲しいものは…。



しばらく真剣に考えていたら、



あっ…‼︎


そうだ。


あたしの頭に浮かんだ、一つの物。


チラっと、ヒナタとモアに視線を向けると、


すでにあたしを見ていた二人に、こっちが驚いた。


やっぱり、考えることは同じか。


二人ともぬかりないわね。



「あの…物じゃなくても…いいですか?」



「物ではない?…面白いことを言う奴だ。構わない。何が望みだ」



「なら、四神玉を…」



「……何?」



「四神玉を…見てみたいんです」




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