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嫉妬

「若様!!皆さま‼︎ご無事でなりよりでございます」



屋敷に戻ると若様の姿を見て、


何百人もの社員からは安堵のため息が漏れていた。



「朱雀の皇女ルリ様もご一緒だ、皆、無礼のないよう」



キトの言葉に、頭を下げる社員たち。



若様は、大広間にある上座の椅子にゆっくりと腰を下ろすと、


ルリに視線を向けた。



「まずは我々を助けてくれたこと、礼を言う」



「いえ…あの場では、方法が思いつかなかったもので…」



穏やかな微笑みを見せるルリ。



そんなルリの言葉に、シュンは首をかしげた。



「なぜ、皇女様があのような場所に?」



そう尋ねると、ルリは一気に険しい表情へと変わった。



「以前から南の都には偽金が出回っております。その黒幕を追っていたら、あの盗賊たちにたどり着いたのです」



「それで、なぜ皇女様がそのようなことを…」



「あぁ〜。城に収まっているのは性に合わないものですから、どうしても黒幕を探しだしたかったのです」



シュンとルリの会話に同感したのか、


小さくうなずきならが苦笑していた若様は、ゆっくりと口を開いた。



「盗賊は鏡を狙っていたようだが、誰のためなのか知っているか?」



「いえ…そこまでは存じません。ですが偽金と鏡を使い、何かをたくらんでいたのは確かでございます」



「そうか…」



「それと、一つ、私の質問にも答えていただけませんか?」



「なんだ」



「はい。あなた様たちが探していたのは、鳳凰の鏡だとか…。なぜです?あの盗賊たちもその鏡を狙っていたようですが、なぜあなたたちも鳳凰の鏡がほしいのですか?」



ルリの思わぬ問いに、

若様を含め、組織の社員たちからは、


ごくりと唾を飲む音が聞こえたような気がした。


「そ、それは…」


「それは…あなた様がカイリ皇太子殿下だから…違いますか?」




“15年前、若様の味方をした白虎の王家は、リシル陛下に崩壊させられた”



なら、今でも無事に生き残っている朱雀は、リシル陛下の味方をしたってこと。



あたしでもわかることだもの、


きっと、ここにいる人たち全員がそう思ったに違いない。



そんな人に、


もし若様の正体がばれたら…。



誰も頷くこともできずに、

ただ床へ視線を落としていると、


ルリはクスクスと声を漏らした。



「ご安心くださいませ。あなた様がご生存されていたこと、誰にも話たりはしません。もちろん父上にも。でもこれだけは私に教えていただきたい。鳳凰の鏡を手に入れるということは謀反を起こされるおつもりですか?」



「そうだと言えば?」



「その時は…私もあなた様のお力に」



「……?」




一瞬、目を見開いた若様と、


想ってもみなかったというように、

小さな歓声がわいた広間。


若様はそう言葉にしたルリを、

じっと見つめていた。



若様のその視線に、


なぜだか胸がチクチクして、


気持ちがモヤモヤしてくる。



朱雀のルリが…若様の味方になるってこと…?


っていうより、


なんだろう。


このアウェイな感じ。


あたし…この場にいる必要があるのかな…。



元の世界に帰るための鏡も無事に取り戻せたわけだし、


この国のことはあたしには関係ないし、


もう部屋に帰って眠りたい。



いつまでも、ザワザワしている広間をグルリと見渡しながら、若様の側へ近づいた。



「あの…あたし、部屋に戻るね。ルリ…今日は助けてくれてありがと」



「あぁ…うん…おやすみ。またね…カンナ」



若様やシュンの方へ一礼し



「屋敷を抜け出した処罰を受ける前に逃げやがって」



そんな嫌味なキトの言葉を背中に、


あたしは部屋へと戻った。




“その時は、私もあなた様のお力に…”




耳の奥でこだまするルリの声。



あたしは、お力になるどころか、


勝手に屋敷を抜け出して、


おまけに助けてもらって、


迷惑かけっぱなしで…。



何も力になれないなら、せめて、元の世界に帰る日までは、若様に迷惑かけないように暮らさなきゃ。



そんな思いで、今日は久しぶりにフカフカのベッドの中で深い眠りについた。


次の日、


朝食の片付けを終え、

ヒナタたちと廊下を歩いていると、


何やらガヤガヤと雑談している組織の人たち。



「なんの話ししてるの?」



モアはお父さんに声をかけた。



「いや、力強い後ろ盾ができたなって」



「後ろ盾?」



「あぁ~。皇帝の住む地。青龍に入るには朱雀を通らなければいけないだろ?偽手形を作ったとしても、我々の兵はざっと5百。この人数では怪しまれる。だけど、もし朱雀の皇女様が見方になれば、怪しまれることなく朱雀を通過し、関所を通って青龍の地に入り込めるんだ」



「関所ってなに?」



「朱雀や陛下が住む青龍に入るためには、行者や貨物の通過を検査する門、つまり関所ってところを必ず通らなければならないんだ」



へぇ…やっぱり警備が厳しいんだ。 



「だから、若様にとって、ルリ様はこの上ない後ろ盾なんだよ」



自分の言葉に深く頷いてるモアのお父さん。




「そういうことだ。この獲物は絶対に逃せられない」



いつから会話に入っていたのか、

あたしの背後でそう強く言うキト。



チラッと後ろを振り返って見上げると、


奴は意味深な笑みを浮かべて

あたしを見降ろしていた。



今、若様に必要なのは、


強い権力、


大きな後ろ盾…か…。


それから数日、


あの事件の日を栄に、週に3日ほど、屋敷の中でルリの姿を見かけるようになった。



「最近しょっちゅう来てるわね。若様と何か作戦でも立ててるのかしら」



「なら、そろそろ戦争も近いのかな…」



ヒナタとモアの会話を横目に、


中庭を挟んで向こうの廊下を歩く若様とルリの姿を目で追っていた。



でも、これでやっと15年も待った戦いに決着をつけるときがくるんだ。



お母様のカタキをうって、


今まで若様が過ごしてきた日々を無駄にしないためにも、


絶対に、絶対に勝ってほしい。


そして、日本の国王に…


皇帝陛下になってほしい。



あのあと、ルリは自分の屋敷に帰ったんだろうか。



あたしたち3人が廊下の掃除をしていると、


前から若様が歩いてくるのが見えた。



一瞬、視線が絡みあった気がしたけど、軽く頭を下げて、横を通りすぎようとした、その時…



ぎゅっと掴まれたあたしの腕。



掴まれたその手にびっくりして、

勢いよく彼を見上げた。



「な、なに?」



「最近…私の部屋にこなくなったな?…なぜだ」



「えぇっ?」




若様のその言葉に、

思わずヒナタとモアと目が合う。



ちょっと…何言ってるの?



2人の前でやめてよ。



「あっ…カンナ…先に行くね~」



何に気を使ってるのか、その場をあとにしていく2人。



やだぁ!!待って!!


置いてかないでよ!!



「私をさけているのか?」


2人を追いかけようとしたのに、

もう一度腕をひっぱられて、

まだ会話を続ける若様に、


もうなんなのよ!って思いながら



「そんなわけないでしょ?なんであたしが若様をさける必要があるの?それに、若様の部屋に行っていたのは帰る方法が知りたかったからで、それがわかった今は、もう行く理由がないだけよ」



そう冷静に伝えてチラッと彼を見上げると、


眉間にしわを寄せ鋭い眼差しであたしを見降ろしてくる。



「ずいぶん機嫌が悪いな…ちょっと来い!!」



「えっ?なによ!!」



ぐいぐいひっぱられながら、押し込められたのは、若様の部屋。



久しぶりにみた光景に、瞳だけでぐるりとあたりを見回した。




「理由を言え」



「理由?」



「私が何かしたか?」



「ちょっと待ってよ。さっきからなんの話し?」



「カンナが怒ってる原因を聞いている」



なにそれ…。



「若様の勘違いだよ。あたし、何も怒ってなんかない」



「盗賊の事件からお前の態度がおかしい。だから訳を話せ」



ワケって…そんなこと言われても…。



なんだが、気まずい空気が部屋を包みこむ。



私が口を開くのを待つかのように、突き刺さってくる若様の視線。



「じゃ、じゃぁ…言わせてもらうけど、若様はあれからずいぶんと機嫌がいいのね。でもそれはそうだよね。権力や後ろ盾もできたことだし、機嫌がよくなるのもわかる」



あぁ~あたしの口!!


何をペラペラよけいなことを…。


だから、若様と喋りたくないのに。



「なんだそれは…」



「っ……」



「権力や後ろ盾とはなんだと聞いてる!!」



廊下まで聞こえるんじゃないかと思うような大声に思わず怯みそうになる。



「ちょっと!!そ、そんなに怒鳴らないでよ!!だって…みんな言ってるよ!!朱雀を味方につければ、関所だってもう何も怖くないって!!」



若様は一瞬目を見開いたあと、

すーっと力ない瞳を見せた。


「なぜわからない」



「えっ?」



「私が必要としているのは、権力や後ろ盾などではない」



「……」



「“ここ”を支えてくれるものだ」



そう言って、若様は自分の胸をドンドンと叩いた。



その言葉を聞いて顔をあげられない。



若様は、あたしの両肩を掴むと、ゆっくり自分の胸にあたしの体を引き寄せ抱きしめた。



「その支えがへそを曲げれば怒鳴りたくもなる」



「……」



「私の言いたいこと、わかってるだろ?」



ごめんね…


ごめんなさい…若様。


こんな言葉を言わせてしまって。



本当はね…本当はあたし…若様に気にかけてほしくて。



ルリに若様を取られちゃう気がして、


2人でいる姿を見るたびに嫉妬してた。



自分でも、なんでこんな気持ちになるのかわからない。



あと5カ月で元の世界に帰るのに。



帰れば、


蓮が待ってるのに…。


なのに…あたし…



ほんと、何がしたんだろう。




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