母の形見
蓮に会いたいが為だけに通った夏期講習もあっという間に終わって、
新学期から半月が過ぎた。
今日は9月15日…。
22:45。
もうすぐ日付けが変われば
あたしの17歳の誕生日。
「ふふっ…これ結構面白い」
絶対ハマるから一度やってみろって言う蓮から借りたRPGゲームに夜な夜な
夢中になっていたあたし。
ゲームは全く素人のあたしが、面白いって思うなんて相当なものだ。
青龍強いなぁ。
風の魔法ばっかり反則だよ。
最初の設定を失敗した。
主人公を白虎にしないで、
青龍にすればよかったよ。
そんなことで一人苦笑していると、コンコンとドアを叩く音。
「は~い?」
「カンナ…」
ドアの隙間から顔をのぞかせたおばあちゃんは、ニコっと微笑んで、改まって部屋に体を入れると、
ベッドに座っていたあたしの隣に腰を下ろした。
「もうすぐ17歳ね」
「うん…」
おばあちゃんは、あたしの右手を取ると、
ポケットから何かを取り出して、手の平にそっと置いた。
「ん?なに?」
「誕生日プレゼントだよ」
「えぇぇ?」
今まで、誕生日はいつもより少しだけ豪華に食事を作ってくれたり、お花を生けてくれたりしてくれてたけど、
物をもらうのは初めてで正直驚いた。
ポツンと手のひらに乗ってる四角い小さな箱。
「開けても…いいの?」
コクリと無言のまま、一回うなずいたおばあちゃんを見て、ゆっくりとその箱を開けた。
――これって…。
「…指輪?」
リングの上に凛と乗っているのは真珠だろうか?
「お母さんの形見だよ」
「えっ?」
ケースを開けたまま、
ただじっとそれを眺めた。
お母さんの形見…。
震える指先でリングを抜き取ると、左手の中指に、そっとはめてみた。
「とても似合う」
そう言ってあたしの左手に重ねてきた、おばあちゃんの温かい手。
ありがとう…
おばあちゃん。
大切にするね。
穏やかに微笑んでるおばあちゃんを見て、あたしも笑顔を返した。
「あぁ…そうだ!!あれもカンナに渡しておこうかね」
ゆっくりベッドから腰を上げると、それだけ言って、何かを取りに部屋を出て
行ったおばあちゃん。
ドスンとベッドに転がってもう一度リングが付いてる左手を高くかざしてみた。
お母さん…あたしね…。
もうすぐ17歳になるよ。
『おめでとう…カンナ…大きくなったわね』
心の中で問いかけると、
まるで、指輪を通してお母さんに会えたような気がして
ゆっくりと瞳を閉じると
顔さえも知らない空想上の母は優しく微笑んでる。
初めて言葉を返してくれた気がしたことに嬉しくて、
涙がスーッとこめかみから頬を伝ってベッドの上に流れ落ちた。
「カンナ…」
カチャッとドアが開いて、部屋へ戻ってきたおばあちゃんに涙を悟られないように、手のひらでサッサッと拭いながら、ベッドから起き上がった。
部屋に入ってきたおばあちゃんは胸に何かを抱きかかえている。
「それ…なに!?」
「鏡だよ」
それは上半身が映るくらいの鏡。
「鏡も…くれるの?」
「これはね。家宝なんだ」
「家宝?」
「誰が拾ったのか、それとも先祖が作ったのか知らんが…
これは昔から代々受け継がれてる鳳凰の鏡だよ。
本当はお父さんとお母さんに渡すはずだったんだが、…お前が持ってなさい」
「…う、うん」
ちょっと全体がくすんでる気がするけど、
鏡の周りは、金で鳥の姿が彫られていて高級そうな鏡。
おばあちゃんから恐る恐る鏡を受け取ると、大きさの割にはズシリと結構重たい。
「指輪も鏡も大事にしておくれ」
「…うん。素敵なプレゼントだね。ありがと」
おばあちゃん…ありがと。
本当にありがとう。
おばあちゃんから
もらったプレゼントのおかげで
明日は最高の誕生日を迎えられそうな・・・
そんな気がするよ。




