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無意味な忠告

カンナside



あれ?


あたしたちの新しい部屋はどこなんだろう。



ヒナタたちには、あたしの荷物まで運ばせちゃったし。



牢獄部屋を出て屋敷の中を小走りで走っていたら、



「カンナ様!!」



背後からそう呼ばれて、

クルッと後ろへ振り返った。




「モアのお父さん!!」



「目が覚められたのですね」



「はい…。あの、ありがとうございました。命を救ってくださって」



ゆっくりと近づいてきたモアのお父さんは、


あたしの目の前で立ち止ると、丁寧に頭を下げた。



「我々流白村の人間は、あなた様のためなら、この命惜しむものなどいませんよ。モアももちろんその1人です」



「……」



なんだか心苦しくてぎこちない。



今まであたしが生きてきた中で、


こんな風に人から慕われたことなんて当然あるはずもなくて、


だから気恥ずかしくて、


どう受け答えをしていいのかわからない。



「あの…村の人たちは過酷なことをさせられてないですか?」



あいつが言ってた

“命を捨てる”ほどの仕事って、一体どんな労働をさせられているのかと心配になって尋ねると、


お父さんはキョトンとして首をかしげた。



「過酷?いえ…そんなことはないですよ。それに、広くてきれいなお部屋で休ませてもらってますので、疲れも吹き飛びます」



広くて…


きれいなお部屋?


っ…!!



なら、やっぱりあたしたちだけあんな牢獄みたいな部屋に閉じ込めたのね。



くそ!!あの男…。


許せない!!



あっ…そう言えば!!



こないだ中庭で何をしてたんだろう。



ヒナタは魔力の訓練って言ってたけど…


あれも仕事?




「村の人たちは、どんな仕事をしてるんですか?」



そう尋ねると、お父さんは目をパチクリさせながら不思議そうにあたしを見ている。



「カンナ様は…ご存知ないんですか?」



「えっ?…仕事の内容のことですか?それは聞いてないです」



「そう…ですか。でしたら…私の口からは、すみません」



えっ?なんで?


どうして言えないの?


言えないような仕事なの?



でもなんだかこれ以上聞くのは、お父さんを追い詰めてしまう気がして。



「…ごめんなさい。変なこと聞いてしまって」



「いえ、ではわたくしは失礼いたします」



もう一度深く頭を下げて歩いて行ったお父さんの後ろ姿を見送っていたら、



「カンナ!!部屋こっちだよ!!北の館だって!!」



逆側から聞こえてきたヒナタの声。



手を振りながらあたしの方へ駆け寄ってくるヒナタとモアと…


もう一人?



誰?



少し癖のありそうな茶色い髪をふわふわなびかせながら、


ヒナタたちと近寄ってくるきれいな男の人。



20歳くらいだろうか。


わからないけど、


あたしよりは少しだけ年上な気がする。




「君がカンナ?初めまして!!俺はシュンと言います」



意表をつかれた突然の自己紹介に戸惑ってしまって



「は、初めまして…」



つい、どもってしまった。



ふーん。


でも、この屋敷の人間にしては礼儀正しい。



「今日まで風邪をひいて寝込んでたんだけど、流白村から来た美女三人がどんな人たちなのか、早くお目にかかりたいと思ってたんだ」



そう言ってシュンはニコッと笑みを見せる。



美女?って…口がうまいな…この人。



でも、思えば、


キトにしろあの男にしろ、


この屋敷に来てからというもの、あたしたちに対してそんな笑顔を向けてくれる人なんかいなかったから、


なんだかこの場の空気が和んで嬉しい。


癒し系だな…


そんなことを心の中で思っていたら、



「彼もキトと同じ…一等級の側近らしいわよ」



小声でそうあたしに耳打ちしてきたヒナタ。



へぇ~じゃぁ結構、


格があるってこと?



「ねぇ?今夜みんなで、快気祝いも兼ねて俺の部屋で飲まない?」



「えっ?」



「カンナの意識も戻ったし、俺の風邪も治ったし!!」



突拍子もない話題と、一体なんの誘いかわからなくて面喰ってるあたしとモア。



だけどその横で、



「飲む飲む!!なんかそういうの楽しい♪あっ!!あたいお酒、結構強いよ?」



ヒナタはもうすでにめちゃ乗り気。



それからも、何が何だか…



ヒナタとシュンは、わいわいガヤガヤ盛り上がりっぱなしで。



あたしとモアがその場で終始ポカーンとしていたら、



「うるさいぞ!!」



突然、ドスの効いた声が降りかぶって来て、


あたしの背中には、ゾクッと悪寒が走った。




「おぉ~キトじゃないか!! お前も今夜一緒に飲もうぜ!!」



そう言って、ハイテンションでキトを飲みに誘っていたシュン。


だけど目の前にいるシュンの顔色が、なぜか青冷めていく。



「わ、若様も…いらしたんですね…」



シュンのその言葉に、えっ?って思い振り返ると、


長身の男が二人…。




「シュン、体調は治ったようだな。それにしても病み上がりでもう酒か?」



「い、いえ…しばらく自粛しようと思います…」



小さく縮こまったシュンに、呆れたような笑みを浮かべたあと、男はあたしを見降ろした。




「もう知っていると思うが、この二人は私の側近。キトとシュンだ」



相変わらずの無表情で二人の自己紹介をしてくる。



「この屋敷にいる限り、これからはこの二人の指示に従え。いいな?」



あぁ~。


なんだか鏡を待つ立場は同じだっていうのに、


衣食住を与えてもらっているせいか、

あたしの方が立場が下な気がするのが納得いかない。


「わかった。それと部屋ありがと。あんたたちの部屋も北の館なの?」



男に向かってそう尋ねたら



「“あんた”ではない。ここでは“若様”とお呼びしろ」



横から立ちはばかうように割入ってきたキト。


本当この男、いちいち口うるさくて苦手。



「わかりましたよ。若・様・!!たちも北の館なのでございますか?」



なんだか変な敬語になってしまったあたしの横で、


シュンは下を向いてニタニタしながら笑いをこらえてる。



「俺たちは東の館だ」



クソがつくほど真面目なキトと、


プレイボーイ系のシュン。



そんな2人に挟まれていると、中和でもされるんだろうか。



未だに性質の掴めない若様をチラッと見上げたら、


ふいに彼と視線が絡み合った。



「カンナ」



「なに?」



「ついて来い。少し話がある」



えっ?なに?



話って、


さっき十分したじゃない。



だけど若様は、あたしの疑問なんかに構うこともなく、


スタスタと東の館の方へ歩いて行く。



あの…あたし、


ついさっきまで生死を彷徨ってたんですけど…。



ちょっとくらい休ませてやる気持ちは微じんもないわけ?


だけど、もしかして


鏡の事だったら…と思い



「じゃぁ…ちょっと行ってくるね…」



「うん!!行っておいで」



ヒナタとモアにそう告げると、


キトがなぜかあたしを鋭い視線で睨みつけてくる。



な、なによ…


何なのよその目は。



言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ。



ただ無言のまま、睨みつけてくるキトをちらちら気にしながらも、


とりあえず若様の後を追ってその場から立ち去った。




なんか…あたし。


異常にキトに嫌われてる気がする。



気づかないうちに嫌われるようなことしたかな。



それじゃなくても理不尽な言いがかりで2回も殺されかけてるってのに…。



キトに不信感を抱きながらも、小走りで、若様のあとを追ってきたのに、


彼の姿がもう見えない。



あれ…


どの部屋に入ったんだろう。



長い廊下を見渡すと、

左右に並んでる扉。



えっと…



キョロキョロ迷いながら歩いていたら、



「こちらだ…」



えっ?



背後から聞こえてきた声に、びっくりして、パッと勢い欲振り返ると


あたしの真後ろに立っていたキト。



全く足音も気配も感じなかった。



チラッと足元に視線を移すと、


浮いてる…


あぁそっか。


この人青龍なんだっけ。




「女…」



「あたしの名前はカンナよ!!」



「っ…!!カンナ。妙なマネはするなよ?」



「え?」



言いたいことわかるよな?とでも言うかのように、


決まり切った表情で凝視してくるキト。



当然ポカーンとしてしまったあたしは、思わず首をかしげた。



「あのお方は、この組織に必要不可欠なお方だ。それはわかるな?」



「まぁ…」



なんとなくみんなの話し方やしゃべり方で…それは前々から思ってたけど。



「あの方のための組織であり、私たちはその枝葉にすぎない」



「はぁ…」



「あのお方のためならこの命、惜しいと思う者などここにはいない」



ようは、偉い人なわけね。



「…で?あたしになんでそんなこと…」



キトは、あたしが話し終わるよりも先に、


突然、威圧的に一歩踏み出して身を近づけてくる。



「例えば!!お前が若様に色目を使うことなどは絶対に許されない」



「は、はぁぁ?」



色目?って、一体どんな目よ。



なんかこの人、勘違いしてない?


なんであたしが若様に媚びる必要があるの?



一応、れっきとした彼氏持ちなんですけど…。



それに、例えばもし、何かの過ちがあったとしても、


あんな冷酷な人、ありえない。



「あのねぇ?」



「もう一度言っておく。若様に妙な感情など抱くな!!いいな?」



なっ!!


…だからそれはあなたの勘違いだって!!



「キト…くだらないことを言うな…」



ゴタゴタ言い合っていた声が聞こえてしまったのか、



カチャッと開いた扉から顔を出した若様。




「ですが…」



「お前が心配しているようなことは何も無い。カンナ…入れ」



「…う、うん」



もう一度、チラッとキトに視線を向けると、


相変わらず険しい眼差しであたしを見てくる。



なんだか散々言われっぱなしでムカついてたあたしは、


若様の部屋へ入る間際に振り返って、


べーって小さく舌を出してやった。



そんなあたしの態度を見てか、


あっけにとられた顔で、

おまけに眉間にもギュッとシワが寄ってるキトをかいま見れて、してやったりだ。




「今日はもう下がれ」



「……」



若様はキトにそれだけ言うと、

重たい大きなドアを閉めた。










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