第8話 恵美理さん
昼休み、花奈のクラスの前を通ると、花奈がクラスの女子とお弁当を食べている。
「花奈のしょうが焼き弁当って言うんでしょ。手作り?」
「うん。朝、ちょっと早く起きて作ってる」
「昨日はぶりの照り焼きでしょ。それも?」
「うん。醤油やみりんで焼くだけだから簡単だよ」
僕はその会話をこっそり聞いて、少し嬉しくなった。
以前は1人で食べてたのに、今は友達と食べている。
これは僕の想像だけど、以前はふりかけだけのお弁当だったから、みんなに見せづらかったんじゃないかと思う。
お弁当に入れられるおかずを、しばらく教えてあげようと思った。
「ところで、花奈」
「うん、なに?」
「さっきから廊下で花奈のことじっと見ているの知り合い?」
2人が僕の方を見る。
しまった。
見てるのバレてた。
「ああ、友達だよ」と花奈がお弁当を一緒に食べてる友達に言う。
「彼氏……ではないの?」
「違う違う」
はっきり否定された……
すると花奈が手招きをする。
僕は花奈たちのところへ向かった。
「友達の久。一応幼馴染になるのかな」と花奈が僕を紹介する。
「はじめまして。久さん。恵美理です」
「はじめまして」と僕も言う。
「2人は幼馴染なだけなの?」と恵美理さん。
「部活っていうか、研究会だけど、それが一緒」と花奈。
「何の研究会?」
「料理研究会」
「何人でやってるの?」
「私たち2人だけ」
「ふ~ん。怪しすぎる。今度見学に行くね」
「いつでも来てね」
僕は2人のやり取りを聞いていた。
花奈の友達が来るのは良いことだけど、2人だけの時間に誰かが入ってくると思うと、少し複雑な気分になった。
そんな僕の表情を見たのか、恵美理さんが「大丈夫、ちらっと見てすぐ帰るから。2人の邪魔はしないから」
「そういうのじゃないから」と花奈が言う。
昼ご飯を食べていなかったことを思い出し、それを口実にこの場を去ったのだ。
放課後。
「今日は何作るの?」と花奈が言う。
「今日はミートボールと玉子焼き」と僕が言う。
「やったあ。しかも2品」
「玉子焼きは正直花奈にはまだ早いかなと思ったんだけどね」
「そんなに難しいの?」
「まあ、焼き加減がね」
「頑張ります」
そして2人でスーパーへ。
スーパーから戻ると、さっそく料理を始めた。
さっそく花奈が苦戦した。
「ミートボールの大きさが揃わない。なんで久のは大きさ一緒なの?」
「まあ経験の差だね」
「うう、悔しい」
「がんばれ~」
味付けはケチャップと中濃ソースを合わせる簡単ソースで。
次に玉子焼き。
玉子に砂糖を入れて混ぜ、小さめのフライパンに油を入れて……
「ぎゃああああああ! 玉子焼きが焦げた!」
「砂糖を入れすぎたり、火が強いとすぐ焦げるよ」
「それ先に言ってえ」
何か視線を感じる。
ふとドアの方を見ると恵美理さんがニヤニヤしながら見ている。
「久、助けて~」と花奈は気づいていない。
僕は火を止めて振り返った「恵美理さんなんで見てるの?」
花奈が驚く。
「やっぱ邪魔しちゃったみたいだね。もう帰るから。2人とも、ごちそうさま~」
うう……なんか変なとこ見られた。
花奈もしまったって顔をしている。
なんとなく気まずくなってしまった。
その後は2人で食べたけど、なんか気まずい。
「なんかずっと誤解してるみたいだね。明日はっきり言うから」と花奈が言う。
◆◆◆
翌日の昼。
恵美理は花奈と弁当を食べながら話していた。
「昨日来るなら言ってくれればよかったのに」と花奈。
「言ったら抜き打ちにならないでしょ」と恵美理。
「抜き打ちってなに?」
「まあまあ仲が良くて羨ましいことですわ」
「そういうのじゃないからね」
恵美理が花奈のお弁当を見ると、おかずはミートボールと玉子焼きだった。
「そういう関係ね。楽しそうでなによりですわ」
「だから違うって。ただの料理仲間」
そう言った花奈の頬は、ほんのり赤く染まっていた。




