第51話 クリスマス
もうすぐ2学期が終わろうとしているころ、僕と花奈が舞留先生に呼び出された。
なんだろうと職員室に行ってみると、全国お弁当コンクールの一次審査が通ったとの話だった。
僕と花奈は喜んだ。
舞留先生に「嬉しいのはわかるけど、職員室なので静かにしなさい」と言われるまで。
本選は2月の土曜日とのことだ。
場所は新宿。
当日は舞留先生も同行するということだった。
しばらくは、この話題が続いた。
松君たちに話すと、みんな祝福してくれたのが嬉しい。
本選はまだ先だけど、がんばろうという気持ちになった。
「そういえば2人はクリスマスどこかへ行くのか?」と松君。
僕と花奈は顔を見合わせ、「どこにも行かないけど」と言う。
僕が逆に「松君はどこかへ行くの?」と聞くと、「恵美理の家に行くだけだよ。店とか予約取れないし、2人でケーキでも食べることになると思う」と言う。
なんか聞いた僕が照れくさくなってしまった。
松君たちと別れると花奈が聞いてきた。
「私たちはクリスマスどうする?」
「どうするって言われても」
「ケーキ作って食べない?もちろんスポンジから」
「うん。わかった。じゃあうちで作ろう」
翌日。
「久、久の家でケーキ作るじゃない? そのあと、うちで食べない?お母さん、イヴの日は帰り夜中になっちゃうんだって」
僕は「わかった」と答えたあと、「でも、ケーキはどうやって持って行こうか?」
「100均で紙のケーキ持ち運びケースが売ってるよ」
「へえ。そういうの売ってるんだ。便利だね」
僕は、花奈の申し出に喜んだ。
久の家で昼間なり、夕方なりにケーキを作ったとして、夜に食べようとすると、両親が帰ってくる。
茶化されるのが嫌だと思っていた。
だから夜に花奈の家に行けるのはありがたい。
それから、スーパーではなくちょっと離れたショッピングセンターに行った。
100均でケーキ持ち運びケースを買って大きさを確認。
専門店街を通って食品売り場に。
アジが安かったので購入した。
学校の部室に戻り、アジの南蛮漬けを作って食べたのである。
クリスマスイヴの昼過ぎに花奈がやってきた。
僕の部屋のベッドの上でくつろいだ。
「それでケーキってどうやって作るの?」と花奈が聞いてきた。
「材料は、卵、薄力粉、グラニュー糖、無塩バター。卵を泡立ててオーブンで焼く」
「意外と簡単そう」
「泡立てがね。ハンドミキサーがあると楽。ないときつい」
「で久の家にはあるの?」
「あるよ」
「やったー」
「じゃあ作ろうか」
台所に行き、卵とグラニュー糖を混ぜてハンドミキサーで泡立てる。
その後薄力粉とバターを溶かし入れ混ぜた後に型に流し込み、オーブンで焼く。
焼き上がったら冷まして完成だ。
しっかり冷ましたら、生クリームを泡立て、ケーキにデコレーションした。
この作業が楽しい。
ケーキを持ち運びケースに入れて冷蔵庫へしまい、焼き上がるまで部屋でのんびり過ごした。
その後、花奈の家に行く。
花奈の家に着いたら、何か忘れてる気がした。
「しまった。チキン買うの忘れた」と僕が言う。
花奈も「あっ」と声を上げた。
忘れていたらしい。
「今から買いに行く?」
「いいよ。今日はケーキだけでも十分だよ」
「花奈が遠慮するなんて……」
「私をなんだと思っているんだ」
それからジュースをもらい、ケーキを2人で食べた。
僕は四分の一も食べられることに驚いた。
食べ終わると、2人とも会話がなくなった。
少し経ってから、僕はバッグからプレゼントを取り出し、花奈に渡した「メリークリスマス!」
「もらっていいの?」と花奈が言う。「開けていい?」
「もちろん」
花奈は僕があげたエプロンを喜んでいた。
すると花奈からも「メリークリスマス!」と言って僕に袋を渡す。
僕は「開けてもいい?」と聞き、袋を開けた。
マフラーであった。
僕はとてもうれしかった。
そうしていると花奈がエプロンをつける。
ピンクのエプロンは花奈によく似合っていて、とてもかわいく見える。
あげて良かったと心から思ったのである。




