第32話 夏休み突入
お昼過ぎに花奈から連絡が来た。
「久の家に行っていい?」
「別にいいけど」
ピンポーンとチャイムが鳴る。
「来たよー」と花奈。
「家の前から連絡してきたのかい」と僕が言う。
「じゃあ入るね」と言って家の中に入って来て、僕の部屋に向かう。
僕の部屋でくつろぎながら「今日は何作るの?」と花奈が聞いてくる。
「まだ決めていないんだ。料理教室用のにするか、それとも別のものにするか」と僕が言う。
「別のものって?」
「2学期って文化祭あるじゃん」
「うん」
「料理研究会として出店したい」
「それ、いい!」
「まだ聞いてみないとわからないけどね。出店するなら調理実習室は使えない。空いてる教室でやることになると思う。それに料理も限られると思うし」
「限られるって?」
「早い、安い、美味しい。そして他と違うことだね」
「というと?」
「早く提供出来て、値段も抑えて、他のクラスでもカレーや焼きそばなどはやるだろうから、それらとは差別化をしないといけない。そして美味しい」
「例えば、しょうがやき定食とか?」
「それはありだね」
「あとはなんだろう」
「ある程度は名前を知られてる方がいいかな。例えばウハーとか出しても何それってなっちゃうし」
「ウハーって何?」
「ロシアの魚のスープ」
「インパクトはありそうだけど」
「でもお客さんが味が想像できないのは躊躇すると思うんだ」
「なるほどねえ。文化祭の料理も考えなくちゃだね。料理教室はこの前言ってた……肉じゃがやオムライスだっけ。それらも覚えないとだしね」
「そして別の話になるけど、花奈がよければ夏休み中にどこかに行きたいな」
「行こう! 行きたい! どこへ行く? 泊まり?」
「いやそこまでは考えてないかな」
「えーいいじゃん」
「まあ近場でいいからどこかにね」
「夏休み中にやることいっぱいだね。なんか久、少し変わったね」
「僕が?」
「うん。いい意味で」
「だといいんだけどな」
「とりあえずは今日は何作ろうか?」
「そうだなあ親子丼は?」
「食べたい!」
「じゃあ決定だね。鶏肉買いに行こう」
「うん。夏休み、毎日久のところに来ないといけなくなっちゃったね」
「それは嫌だな」
「そんなあ……」
「だって僕も花奈の家に行きたいもん」
「来て来て。明日でもいいよ」
そして親子丼を作りながら、話し合う。
料理教室や文化祭や旅行のことを色々と。
やっぱり花奈と一緒にいると楽しいな。
僕は花奈の笑顔を見ながら思ったのだ。




