第29話 料理教室
入り口に僕と花奈が立ち、お金の徴収と、手洗いをするよう指示をする。
席は自由ということで、みんな好きな席に座っていく。
調理実習室はあっという間に埋まっていった。
「なんか緊張してきた」と僕が言う。
「楽しそうじゃん」と花奈が言う。
予定人数が来たので、僕たちは壇上に向かう。
「ではみなさん、料理教室を始めます。調理台は基本4人で1つです。まずは鍋に水を入れて、お湯を沸かしましょう」と僕が言う。
みんなでお湯を沸かしていく。
「申し遅れましたが、今回料理を教えることになりました、1年の江利久と申します」
「同じく1年の織美亜花奈と申します」
「「よろしくお願いします」」
席の後ろでは、舞留先生もこちらを見ている。
見渡すと、松君と戸尾君、恵美理さんと理沙さんが同じ調理台に座っている。
さっそく材料の下ごしらえを指示する。
「今回の具材は、ミニトマトと茄子とピーマンとベーコンです。ちなみに茄子は外のプランターで育てたものです。いびつなのはその為です」と僕が言う。
少し笑いが起きる。
「ピーマンを具材に入れるか迷いましたが、一応調べたら1番人気の具材らしいので」と僕が言う。
「ピーマン抜きでもいいですか?」と質問が来る。
「それは4人で話し合ってください。好みがあるでしょうから」と僕が言う。
そしてお湯が沸いてきたのでスパゲッティを入れるよう指示。
4人分なので量が多い。
塩も少し入れるように指示した。
「なんで塩を入れるんですか?」と質問が来る。
「1つはスパゲッティに下味をつけること。もう1つはコシを出す為です。塩を入れることで麺が締まり、食感が良くなります」と僕が答える。
隣で花奈が驚く。
「そうだったんだ」
「なんで教える側が知らないんだい」と僕がツッコむ。
笑いが起きた。
そして具材を切るように指示。
ミニトマトは半分に。
茄子はヘタを切り落とし輪切り。
ピーマンもヘタを切り、種を取り縦に切っていく。
ベーコンは好みの大きさで。
そしてフライパンに油を入れ炒めていく。
僕と花奈が見て回る。
奥の調理台の4人組がずっと喋りながら野菜を切っていた。
手を叩いて笑ったりしている。
花奈がその調理台に行き「料理は楽しいですが危険な面もあります。火や刃物を扱ったりします。食べる時は構いませんが、調理中は真剣に火や怪我に気をつけてお願いします」
僕はその光景を見て、花奈に感心するとともに、成長と尊敬を感じた。
服装を見ると上級生だ。
しかし花奈は物おじせずに危険な行為を注意したのだ。
花奈の存在が、僕の中でまた少し大きくなった気がした。
スパゲッティが茹で上がるとザルにあけ、フライパンに入れる。
塩コショウとケチャップで味付けだが、バターも入れるように指示。
こうするとコクが出るのだ。
こうしてナポリタンは完成した。
みんなで食べることになった。
「簡単だし、美味しいね」
「好みの具材でまた作りたい」
「俺、肉入れて作る」
「お店で食べるより、自分で作った方が断然いい」
とかなり好評だ。
「夏休み前にもう1回やって欲しかった」と言う意見も出た。
夏休みに家で自分で料理を作りたいのだろう。
僕は舞留先生を見たが、首を横に振る。
「次回は2学期になってからです。ただし料理研究会次第ですが」と先生。
「次もやるんでしょ」
「今度作りたいもの記入させて」
と言った意見も出た。
僕が花奈を見る。
花奈は首を縦に振る。
「次回も開催できればと思っています。意見とかあれば言って下さい。参考にします。ただ、オーブンを使ったり、冷やしたりで時間がかかるのは難しいです」と僕が言う。
こうしてみんなで調理器具や皿を洗って終了となった。
調理実習室には僕と花奈と舞留先生と松君たち4人だけになった。
「花奈かっこよかった」と恵美理さん。
「花奈すごいね」と理沙さん。
2人は先ほどのことを褒める。
「とても良い料理教室でした。次回も期待しています。花奈さん。あなたの心構えは素晴らしいです」と舞留先生も花奈を褒めて、教室を出て行った。
この後も6人で今日のことを話す。
次回は何作ろうか。
そしてまた少し花奈のことが気になり始めた気がした。




