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第12話 松賢治

「江利ってなんの部活入ってんだ?」とクラスメイトの松賢治(まつけんじ)が聞いてきた。


「料理研究会だよ」と僕が言う。


「そんなのあったっけ?」


「僕が立ち上げたんだ」


「お前すげえな。料理を作りまくってるのか?」


「そうだね。基本は毎日」


「今度見に行っていい?」


僕は一瞬躊躇(ちゅうちょ)した。


花奈との2人の時間が割かれる気がして。


「ああ。歓迎するよ」


本当は来るなと言いたかった。


でもそんなこと言えるはずもない。



松賢治とはたまに話す間柄だ。


きっかけは覚えていないが、気づけばちょくちょく話している。


松賢治はクラスでも人気がある方だ。


明るくて社交的なのが人気なのだろう。


今回の見に行っていいかというのも、社交辞令だと思っている。



放課後、花奈が張り切ってやって来た。


「今日はスパゲッティなんだよね」


「うん。そのつもり。ペペロンチーノにしようかと」


「やったあ」


大きめの鍋に水を入れてIHのボタンを押す。


「スパゲッティ色々あるね。違いはあるの?」と花奈が聞く。


「もちろん。ペペロンチーノは細い方が合うんだ。だから今日は1.4mmのを使う」


沸騰した鍋にスパゲッティを入れ、フライパンにオリーブオイル、にんにく、とうがらしを入れ軽く炒める。


「材料少ないし簡単そうだね」と花奈が言う。


「ペペロンチーノは意外と難しいよ」


フライパンから唐辛子を取り出し、そこへゆで汁を加える。


「なんか薄まりそうでもったいない」


「薄まりそうって。まあ気持ちはわかるけど」


するとドアの方から人の気配を感じた。


僕が振り向くと松賢治がジッと見ていた。


「早速見に来たよ。本当に料理作っているんだ」と松が言う。


「そりゃそうだよ。だから言ったじゃん」と僕が言う。


その後はスパゲッティをザルにあげ、ソースと和えて塩コショウで味を整える。


「ペペロンチーノか。ところでそちらは?」と松が花奈の方を見る。


「隣のクラスの織美亜さんだよ」と僕が言う。


「はじめまして。江利の友達の松賢治です」


「はじめまして織美亜花奈です」


ペペロンチーノをお皿に分けようとしたが「松君も食べる?」と僕が聞く。


「いいや。僕は見学に来ただけだから。それに、にんにくがね」


「なるほど」と僕が言う。


2人分を皿に盛り付けて、僕と花奈で食べることになった。


花奈が勢いよく食べ始めたと思ったら、急に食べるのを止めた。


「なんか微妙」と花奈が言う。


僕は急いで一口食べた。


「しまった。ゆで汁が少ない」


花奈と僕の手が止まってしまった。


失敗したのだ。


すると松君がフォークを持ってきて僕の皿を持ち失敗したペペロンチーノを食べ出す。


「松君どうしたの。それ失敗作だよ」と僕が言う。


「僕が料理してる最中に話しかけたのが悪かった。うん。このぐらいなら食べられるよ」


松君は塩などを足し、味付けを濃いめにして、食べていく。


「そちらもいいかな?それとも食べかけを食べられるのは嫌かな?」と松君が花奈に対して言う。


「それは大丈夫ですけど、自分で食べます」と花奈が言い再び食べ始める。


「よく食べる女の子は良いね」と松君。


「それはどうも」と花奈。


「部活は2人だけ?」と松君が僕に聞く。


「うんそうだよ」


「ふうん」


「何?」と僕が聞く。


「別に。また、たまに来るよ。今度は邪魔をしないように気をつけるから」


そういうと松君は去って行った。


「なんだったんだろう」と僕が言う。


「でも良い人そうだったよ」と花奈。


その言葉に僕はもやっとした感情を覚えた。


確かに松君は良い人だけど……

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