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第06話 同担拒否だけど、今日は感謝する!

「おにいの投稿プチバズってるじゃーん、同担として悔しい!」


おれのベッドでごろごろ転がりながら、秋穂はそんなことを言っていた。


「そんなこと言われても、おれとしては何も思いつかなかっただけなんだけどな」

「そうやって、素でエモいこと言えますアピールはいらない!」


こっちとしては、秋穂に何を言われるかヒヤヒヤしてたんだが……

運が良かったって言うのはこういうことを言うんだろうな。


「同担に負けてらんないからなんか考える!」


自分の部屋で考えればいいと思うんだが、なぜか部屋から出ていこうとしてくれない。

なぜか、おれの枕を抱きながら足をバタつかせている。


「そんなの、考えてどうにかできるようなもんでもないだろ?」

「そうなんだけど、悔しい!」

「そうだな、チェキの写真上げて、美人姉妹!とか言っとけばいいんじゃないか?」

「その手があったか!てか、いま私のこと美人って言った?」


口が滑ったせいで、めんどくさい絡みが始まってしまった……


「あー、言った言った、秋穂は可愛いよ」

「適当すぎる!もっと真面目に言って!」


適当な態度ではぐらかそうとするも、秋穂からの追従は激しい。

観念して、秋穂の傍に寄る。


「え?真面目な顔してどうしたの?」


できるだけ、真面目な顔をしながら、両手で秋穂の顔を包み込む。


「え、ちょ、おにい!近い!近いから!」


慌てる様子に笑いそうになるのを堪えながら、秋穂を見つめる。

おい、なぜ目を閉じる?


「秋穂、かわいいよ」


静かに告げる。

そして、デコピンをお見舞いする。


「ちょ!酷い!」


口では怒っていながらも、にやけた顔が隠せてない。


「もう、おにいなんて知らない!」


そう言って、部屋から逃げるように立ち去っていった。



夕食を食べてる最中、秋穂のスマホは頻繁に震えていた。

早く見たいのかソワソワしながら、それでもスマホは開かずに食事を続ける。


食事が終わると秋穂はおれの腕を掴んでソファーへ引っ張っていく。


「見て見て!通知すっごい!」

「バズったなら良かったじゃん」


そんなことを言ってる今も通知は飛んできている。


「開くよ」


おれの腕にしがみつきながら、恐る恐るアプリを立ち上げる。


«チユと並んでも遜色ない»

«女の子ファンは大歓迎»

«女神が並んでる»

«自分で美人とか笑える。が、否定できなくて悔しい»


そんなコメントが並んでバズっていた。

でも、これだけバズると好意的な意見だけじゃなく。


«いやチユの足元にも及ばないから»

«自分で美人とかやべえやつだ»

«ライブ中男とベタベタしてんのはキモイ»


単なる妬みなんだろうけど、酷い言葉をかけてくる奴らもいた。

そして、ひとつのコメントで秋穂の指が止まる。


«カップルで現場荒らしとか迷惑だからやめてください»


強い口調じゃなかった。

だからこそ、秋穂の心に刺さったんだろう。


「おにい、私…」


さっきまで嬉しそうにしていた分、反動もでかかったんだろう。

俯いたまま黙り込んでしまった。


「こんなの気にしてないし!ひがまれるのなんて慣れてるし!」


そう言って、部屋に戻って行った。


「気にしてんじゃねぇか……」


そう独りごちて、自分のSNSを開くと、案の定こちらにも飛び火していた。


«見つけなくていいです»

«リア充は別でやっといて»

«邪魔なので視界に入らないでください»


過去の投稿だからだろうか、否定的なコメントが積み上げられていた。

秋穂は兄の贔屓目抜きでも可愛いと思う。

だから、こんな言葉は本当に言われ慣れていた。


そっと、スマホを閉じ、秋穂の部屋に向かう。

ノックに反応はなかった。


「入るぞ」


返事はない。


「入るぞ」


もう一度、中に話しかける。


「……うん」


扉を開けて部屋に入ると、電気もつけずに真っ暗だった。

ベッドで膝を抱えて座り込む秋穂の顔だけが、スマホの淡い光に照らされている。

おれはその隣に座り、秋穂の頭に手を乗せる。


「秋穂ごめんな、おれがあんなこと言ったばっかりに」

「おにいのせいじゃない!」


それだけ言って、また黙り込んでしまう。

横からはすすり泣く声が聞こえてくる。


秋穂は普段の様子からメンタルが強いと思われがちだけど、実は打たれ弱いことをおれは知っている。

今回のことだって、ひがみと流せばいいだろうに、それが出来ないのが秋穂だった。


「気にするなって言っても、気にするんだろうけどさ」

「だって、おにいにも迷惑かけてる」

「おれは、秋穂と一緒にライブに行けるのが嬉しいよ」


秋穂の頭を撫でながら語りかける。

その声を聞いて、秋穂はおれにしがみついてくる。


「チユは、二人で来てくれたことを喜んでくれてただろ?」

「……うん、見つけてくれてありがとうって言ってくれた」

「ステージに上がったとき、観客の人たちはおめでとうって言ってくれたよな?」

「……うん、いっぱい聞こえた」


思い出すのはビギナーライブでステージに上がった時の風景。

たくさんの拍手、チユの笑顔。

あれが嘘だったと思いたくない。


「チユが嘘ついたと思うか?」

「そんなことない!」

「なら、それを信じろ」


縋り付いている秋穂を少し離し、目を合わせる。

涙がこぼれている。

自分のせいで泣かせたことに腹が立つ。


「たしかに二人でいることをねたむやつはいるかもしれないし、冷やかしって思う人もいるかもしれない。それでも、チユは喜んでくれたんだ」


まくし立てるように言うと、噛み締めるように数秒考えたあと、笑顔を浮かべた。

いつもの笑顔に比べると弱々しいものの、それは確かに笑顔だった。


「おにい、ありがと……」


出てくる言葉もか細い、まだ納得しきれてはいないんだろう。

おれから言えることはもうなかった。

あとは、秋穂が落ち着くまでただ頭を撫で続けた。


十分ほどだろうか。

無言の時間が流れ、秋穂がおれから離れる。


その顔にはいつもの秋穂の笑顔が戻っていた。


「同担拒否だけど、今日は感謝する!」




あとがき


ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きも読んでいただけたら嬉しいです。


読後に何か残るものがありましたら、リアクションやコメントで反応をいただけると励みになります。

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