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転生幼女くんは文章が上手くなりたい  作者: 果実夢想
五筆【戦友女子さんは訪れた平穏を嗜む】
40/50

☆ここは呪われておったんじゃ

 外観は、何だか古びた洋館といった感じだった。

 血文字のような、おどろおどろしい文字で『お化け屋敷』と記されており、中から少し冷たい風まで吹いている気がする。

 外観だけで、かなりのクオリティだ。たかがお化け屋敷と侮っていたが、なかなかに怖そうである。


「ほ、本当に大丈夫なんじゃろうな……こ、これ、下手したら死人が出るぞ……」


 隣で、クティが顔を青ざめさせながら震え声を発する。

 あんなに大丈夫だと息巻いていたのに、今ではもう誤魔化す気すらなくなっている。


 まあクオリティは確かに凄まじいが、あくまでお化け屋敷。中で何かあったとしても、それらは全て作り物だろう。

 きっとそう怖がるほどのことでもない……と、一歩を踏み出そうとしたとき。

 左右から僕の袖が引っ張られる感覚に、思わず足を止めた。


 左ではクティが、右ではククルが。

 僕の袖をぎゅっと握り締め、青ざめた顔で僕を見ていた。

 ククルには怖ければ手を繋いでいいとは言ったけど、まさか入る前に、しかもクティまで一緒に袖を握ってくるとは。


「おおっ、リオンちゃん大人気だね……なんか妬けちゃうなあ。あたしも抱きつくっ!」


「定員オーバーだよっ!」


 僕の正面に抱きついてこようとするフーリーを、慌てて制止する。

 と。今度は背後で、僕のフードがぐいぐいと引っ張られていることに気づいた。


「ご主人の一番はわたしだぞー、わたしを忘れたら泣くぞー」


 その発言通り、シールが何だか涙目になっている。

 何だ、これ。お化け屋敷に入る前から、何でこんなことになっているのか。

 フーリーは……まあ少し悔しそうに唇を尖らせてはいるものの、怖いものとかは平気そうだ。


「あ、じゃあさ、じゃあさ。せっかくだから、二つのチームに分かれようよ。三人と二人でさ!」


「……チーム?」


「うんうんっ! ほら、全員で行っちゃうと怖さも半減しちゃうし、あとリオンちゃんが独り占めしちゃって悲しいし」


 人数が多いと怖さが半減するというのは分かるけど、もうひとつの理由はただの私怨じゃないか。しかもそれ、僕は悪くないよね。

 ククル、シール、クティの三人はどこか不安そうにしていたものの、特に反論意見も出なかったため、即興のくじで決めることにした。


 先端が黒い棒と、先端が赤い棒の二種類、計五本をフーリーが取り出す。

 そしてシャッフルし、先端だけを隠して全て握り締める。

 それぞれが選び、同じ色の棒を手に取った者同士がチームというわけだ。


 シンプルだが、実に分かりやすい。

 正直、僕は誰とでもいいから適当に選び、棒を一本引いた。

 各々一本ずつ棒を取ったのを確認したのち、一斉に先端の色を確認する。


 黒チームが、僕とクティ。

 赤チームが、シールとククルとフーリー。

 どうやら、僕は二人側だったらしい。


「えーっ、ご主人と別々なのかー? そんなの嫌だぞー、やり直しを要求するぞー」


「はう……リオンさぁん……っ」


「ちょっとちょっと、あたしもいるんだから大丈夫だってば。じゃあね、リオンちゃんたち、先に入ってるねー」


 抗議するシールと悲しそうに涙目になるククルを連れ、フーリーは僕たちに手を振りながらお化け屋敷に入っていった。

 シールと別れたのは、何気に初めてかもしれない。


「じゃあ、僕たちも行こっか」


「う、うぬ……おお、おぬし、わしから離れるでないぞっ? 別にわしが怖いわけではないが、おぬしがはぐれたり、万が一にでも物の怪に襲われてはいかんのでなっ!」


 万が一でも億が一でも、物の怪が出てくることは絶対にないと思うけど。

 どうせ、出てきたとしても従業員の変装とかだろうし。


 何はともあれ、体を小刻みに震わせるクティと一緒にお化け屋敷へと入る。

 かなり暗い。足元がよく見えないくらい闇に覆われ、所々に松明の炎が灯っているだけだった。


 二人で肩を並べながら、歩を進める。

 何かが倒れたり、近くで物音がする度に、びくっと体が震えるクティが何だか面白かった。


 と、数々の仕掛けにいちいち驚くクティを横目で見ながら歩くこと、およそ数分。

 突然、クティが僕の腕に抱きついてきた。


 何事かと思って、そちらを見てみれば。

 白い装束に身を纏った影が、地面から浮いていた。


挿絵(By みてみん)


 しかも。

 ゆっくりと、僕たちのほうへ迫ってきていた。


「おお、お、おにゅし、にに、にげ、逃げるじょ……っ」


「えっ? あ、ちょっ――」


 怯えるあまり呂律が回らなくなっているクティが、僕の腕を引っ張ってどこかへ走り去っていく。

 頑張って止めようとするも、よほど必死なのか僕の声は聞こえておらず、そして手の力も僕より強くて止まらせることすらできなかった。


 やがて、ひとつの部屋の中に入り、物陰に身を隠す。

 クティは頭を抱えて座り込み、ぶるぶると震えていた。


「や、やっぱりだめじゃあ……ここは呪われておったんじゃ……」


 凄まじいビビリっぷりである。

 確かに僕も驚きはしたが、あれだって作り物なのだろうし呪いとかではないと思う。


「大丈夫だよ、そんなに怖いものでもないから」


「わ、わしが怖がっておるかのような言い方はやめろっ!」


 ここまで来て、よくもまあそんな強がりを言えたものだ。

 これが怖がっているわけじゃなかったら、一体何だというのか。


 とはいえ、いつまでもここにいるわけにもいかないし。

 どう励まそうか、頭を悩ませていたら。

 不意に、この部屋の扉が開く音がした。


「ひぃぇ……っ!? だだ、誰か入ってきおったぞ!? 幽霊か? 妖怪か? 物の怪か? 宇宙人か!? 異世界人か!?」


「ちょっ、落ち着いて……。どうせ普通の人だから」


 またもや腕にしがみついてくるクティを、必死に宥める。

 異世界人なら、すぐここにいるんだけどな……なんてことを思いながら、扉のほうへ視線を移す。


 入ってきたのは、一人の少女だった。

 だけど、普通の少女ではなかった。


 オレンジ色のおさげに、水色の双眸。

 小学生くらいにしか見えない幼い顔立ちに、僕やクティより少し高い程度の低身長。

 何故か巫女装束のような服装に身を包み――頭部には狐耳が、臀部には狐の尻尾が生えていた。

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