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転生幼女くんは文章が上手くなりたい  作者: 果実夢想
五筆【戦友女子さんは訪れた平穏を嗜む】
38/50

しばらく共に行動してもよいか?

「ほら、もう一回だよ!」


「は、はい……っ! ふ、う……っ」


 街が襲撃され、あの三人の謎を残したまま何とか勝利を掴み、カウさんが自分の里へ帰っていった翌日。

 あの場で気を失っていたフーリーに、ククルが炎を吐けた事実を話すと、瞳を輝かせて「じゃあ、もう一回やってみて」などと言い出した。

 そうして、今外に出てククルが炎を吐こうとしているのだが……。


「で、できません……やっぱり、夢だったのでは……?」


 ククルが涙目になり、頭を垂れる。

 僕もシールも見ていたし、あれは間違いなく事実だったと思うんだけど。

 どうしてか、もう炎を吐けなくなっていたのである。


「火事場の馬鹿力ってやつじゃないのかー? あのときと同じくらいのいじめをしたら、もっかいできるようになるかもしれないぞー」


「ひぃ……や、やめてくださいよ……っ」


 シールのサイコパス発言に、ククルは再び泣きそうな顔になる。

 でも確かに、ハーティーに襲われた状況で火事場の馬鹿力が発動した可能性は高い。

 その場合は、また今すぐ炎を吐くなんてことはできないと思う。


 とはいえ、今まで一回もできなかったのだから、あの一回できただけでも大きな進歩だ。

 むしろそれは、かなり喜ばしいことだろう。


「むー、あたしも見たかったなぁ」


「す、すみません……無能でほんとにごめんなさい……」


「わーっ、そこまで言ってないよ! それどころか、助けてくれてありがとうだよ!」


「は、はい……ありがとうございます……」


「いや、だからお礼はこっちが言う側なんだってば」


 あれだけ大きな活躍をし、僕たちを助けてくれたというのに、ククルのネガティブは全く治る様子がない。

 まあ、しょうがないか。おかげで僕たちは一緒に暮らせるようになったんだし、これから少しずつ自信をつけていけばいいだけだ。


「ククル、あのときの感覚って覚えてたりしない?」


「そ、それが、必死だったもので、全く……」


 そうだとは思った。

 ただ、あの三人みたいな人がまたすぐ襲ってくるとは思えないし、しばらくは今のままでも大丈夫な気はする。

 もちろん一回襲ってきたのだから、また来る可能性も大いにあってあまり楽観的にはなれないが。


 とりあえず、火炎を吐けなくなっていることを確認したところで、仕方なく家の中へ戻ろうとしたとき。

 不意に、背後に足音が聞こえた。

 訝しみ、振り返る前に――その足音の主が、声を発する。


「――おぬしらか? この街を守ってくれたのは」


 幼く、とても可愛らしい声。それでいて、どこか重みのある、貫禄を感じさせる声。

 振り返ると、僕たちのすぐ近くに一人の少女が立っていた。


 僕と同じくらいか、少し高い程度の低身長。

 紺色のハーフアップに、黒曜石のような黒い瞳。

 僕たちを順に見やり、何やら驚いたように顎に手を当てた。


「ほう、これは予想外じゃの。てっきり屈強な大男かと思ったのじゃが、よもやこのような幼い女子(おなご)じゃとは」


 容姿は小学生くらいにしか見えないというのに、何とも老婆のような口調で話す子だ。

 それにしても、この口ぶりからすると、街が襲撃されたことも僕たちが戦っていたことも知っているのか。


 もちろんこの街に住んでいるなら、街が突然襲われたことくらいは知っていても当然だとは思うが、僕たちが戦っていた事実はあまり見られていなかった気がする。

 見られていたとしても、せいぜい空中戦を繰り広げていたリリアとカウさんくらいのものだろう。

 僕たちが気づかなかっただけで、近くに隠れながら戦っているのを目撃していたのだろうか。


 いや、それにしては僕たちの姿を知らなかったというのはおかしいような……。

 ……なんて、そんな邪推は無駄か。


「なんだー? わたしたちに、何か用なのかー?」


「用というほどのことでもないのじゃがな、おぬしらのことがちょっとばかり気になってしもうただけじゃ」


「気になったー?」


「そうじゃの。あれだけ派手に街を襲った者を無事に撃退したおぬしらを、もう少し見ていたくなった。よければ、監視……じゃない、しばらく共に行動してもよいか?」


 問われ、僕たちは顔を見合わせる。

 別に僕たち自身はそこまで大したことないと思うのだが、街中にコウモリが飛び回っていたり、そのコウモリによって多数の人々が眠らされていたのも事実。

 僕たちのことをよく知らず、その街が襲われた事実のみを把握している人の場合、どうやって撃退に成功したのか、どれくらい強いのか……といったことは多少なりとも気になってしまうかもしれない。


 だけど、相手は初対面の女の子だ。

 いきなり一緒に行動すると言っても、一体どうしたものか。


「あ、あの、それって、一緒に暮らすってことですか……?」


「そのつもりじゃが、だめなのか? こんなに大きな家に住んでおるのだ、わし一人くらい問題ないじゃろうに」


 確かにその通りだが、わりと厚かましいな。

 どう返事しようか迷っていると、フーリーが瞳を輝かせて身を乗り出してくる。


「ねえねえ、あたしは賛成だよ! こんなに可愛い子と一緒にいられるなんて、非の打ちどころがないくらい最高の申し出だと思うんだ!」


「そう思えるのはフーリーだけな気が……」


 家はもちろん問題ない。部屋も食事なども、全て一人増えた程度では今までと大して変わらないだろう。

 だけど、精神的な問題だ。

 特にお互いのことを知らないまま、単純に街を守った僕たちが気になったからという理由で行動を共にし続けるのは少し抵抗がある。


「あ、心配せずともよい。たとえ断ったとしても、ストーカーの如くつけ回すだけじゃからの」


「それが一番心配なんだけどっ!?」


 元々そんな心配はしてなかったというのに、最後の一言のせいで断りにくくなってしまったじゃないか。

 まあ、ストーカーされることに比べればマシではある……かもしれないが。


「はぁ……分かったよ。でも、気が済んだら帰ってよ」


「おお、もちろんじゃ! 恩に着るぞ」


 僕たちが思っていたほどの人物じゃないことを知れば、すぐに帰ってくれるだろうと思って渋々承諾すると、少女は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 どっちにしろ、いつも通りの日常を過ごすだけだし。


「わしは、クティノス・ディールじゃ。気軽にクティと呼んでくれてもよいぞっ!」


 こうして、僕たちに。

 クティノス・ディールという、謎の同行者が増えた。


 うーん、どうしてこうなったのかな。

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