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転生幼女くんは文章が上手くなりたい  作者: 果実夢想
三筆【内気龍族さんは強くなりたい】
21/50

✩いっぱい気持ちよくなりたい

 ――深夜。

 自分の部屋で眠っていたら、扉が開く音が聞こえて目が覚めた。


 寝ぼけ眼のまま、顔だけを扉のほうへ向ける。

 ひとつの人影が、ふらふらとした足取りで部屋に入ってくるのが見えた。


 訝しみつつも、眠気が勝って特に反応を示さずにいると。

 その人影は、今僕が寝ているベッドの上に乗ってきた。

 いや――正確には、僕の上に馬乗りになったのである。


「……っ!?」


 そこまでされると、さすがに驚かずにはいられない。

 電気を消していて暗くなっているとはいえ、顔が見えなくなるほどではない。

 ゆっくり目線を上へ移し、誰が僕の上に乗っているのかを確認する。


 シールだった。

 いつもの和服は胸元がはだけ、とろんと虚ろな瞳を僕に向けていた。


「し、シール……何して……っ」


 喫驚して叫ぶも、シールは僕の声が耳に入っていないのか、返事すらしない。

 それどころか、もぞもぞと動き出したかと思うと。

 いきなり、和服を脱ぎ始めたのである。


「ちょっ、シール……!」


 いくら名を呼んでも、いくら制止の声をあげても、シールは止まらない。

 やがて、あっという間に全裸になってしまった。


挿絵(By みてみん)


「ご主人ー……」


 ふと。何だかいつもより色っぽく感じる声色で、シールは僕を呼ぶ。

 そして、少しだけ前かがみになり――。


「……気持ちよく、なりたいかー?」


 僕の耳元で、そう囁いてきたのだった。

 夜中に、寝ているところに突然やってきて、全裸で馬乗りになる。

 今のこの状況は、明らかに夜這いというやつだ。


 だとしたら、シールの言う『気持ちよくなる』の意味なんて、もはやひとつしか思い浮かばない。

 いやいや。いやいやいや、有り得ないだろう。

 だって、あのシールだ。僕のことを慕ってくれているからといって、いくらなんでも突然そんなことあるわけが……。


 などと、心の中で必死に否定している間。

 シールは腕を動かし、僕の服をたくし上げてくる。

 指で腹部を撫でられ、くすぐったくて変な声が出てしまう。


「フーリーから聞いたぞー……好きな人とは、気持ちいいことをするものなんだろー? だったら、わたしはご主人といっぱい気持ちよくなりたいぞー」


 元凶はフーリーか。

 そう言えば、初めて会った広場で、シールに耳打ちをしていたが。

 もしかして、あのとき色々と変なことを吹き込んだせいで、今の状況になってしまっているのではなかろうか。


 本当にそうだったら、さすがの僕もフーリーにはあとできつく言っておかなくてはならなくなるわけだけど。

 とりあえず、今はシールを何とかしないと。


「ま、待って……っ、そんなことしなくても――」


「大丈夫だぞー、わたしに任せとけー」


 僕の言葉を遮り、シールは手を下へ移動させる。

 下。つまり、僕の下腹部に。

 僕だってもちろん興味がないといえば嘘になるが、それ以上はさすがにまずい。


「ほんとに、だめだから……っ!」


 慌てて、シールの腕を掴む。

 しかし、それでもシールの力が弱まることはなく、むしろ余計に力を加えてくる。

 必死に止めようとする僕と、執拗にその部分を弄ろうとするシール。

 両者のせめぎ合いは、一歩も退くことなく熾烈を極め――。



「リオンちゃん、起きてるー?」



 不意に、扉のほうから聞き慣れた声が響いてきた。

 腕を掴んだまま、再び顔だけを扉へ向けると。

 カウさんに貰ってから冷蔵庫に入れていたはずの酒瓶を持った、フーリーがそこに立っていた。


「……あれ? あ、ご、ごめんね? ま、まさか、二人がそういうことをしてるなんて思わなくて……本当にごめん。それじゃあ、あたしはこれで……」


「ちょっ、待って! 違う、違うから助けて!」


「……へ?」


 部屋から出ていこうとするフーリーを、必死に呼び止める。

 このまま出ていかれてしまうと、僕は本当に一線を越えてしまうかもしれない。

 それだけは、どうしても避けたかった。

 だから、せっかく来てくれた助けの一手を逃がすわけにはいかない。


「と、とにかく、シールを止めて……絶対これ、なんか様子がおかしいからっ」


「えっと……なんか面白いから、黙って見てちゃだめ?」


「絶対だめッ!」


「う、うん……分かった……」


 僕が相当必死なことを察してくれたのか、フーリーは酒瓶をそこら辺に置いてシールの背後に回り込む。

 そうして羽交い締めにすると、シールは糸が切れたように意識を失ってしまった。

 寝息をたてていることから、ただ眠っているだけだと分かってほっと胸を撫で下ろす。


 何とか、何事もなく済んでよかったが、さっきのは何だったのだろうか。

 最初から僕には好意的でいてくれたが、それでも夜這いとか……そういうのはするような子ではなかったはず。

 むしろ、そういった性知識は欠けているほうだと思っていたくらいなのに。


「……助かったけど、そういやフーリーは何で来たの?」


「ああ、そうそう。見てこれ」


 僕の問いに、フーリーは思い出したように酒瓶を手渡してくる。

 訝しみつつ酒瓶の中を覗いてみると、中身は空っぽになっていた。

 カウさんから貰ったときは、ほぼ満タンと言ってもいいほど酒が詰まっていたのにも関わらず。


「何でなくなってるのか分からなくてリオンちゃんに聞きに来たんだけど、そのおかげで分かっちゃった」


「……どういうこと?」


「たぶんシールちゃんでしょ。酔っ払ってたんだよ、さっきの」


 言われて、得心がいった。

 けど、まだ少し釈然としない。


 最初は苦いと言っていたし、あまり好みの味ではなかったんじゃないのか。

 どうして夜中に、一人でお酒を飲んでしまっていたのだろう。

 疑問は尽きないが、それは起きてから聞いてみるしかないか。


「酔ってあんな感じになるなら、絶対もうお酒は飲ませちゃだめだね……」


「あたしは、面白かったから全然アリだけどね。むしろ、あたしを襲ってくれないかなぁ……そしたら余裕で受け入れてあげるのにー」


「……フーリー」


「じょ、冗談だよ! そんなに睨まないでってばっ」


 どうしようもない変態発言に若干引きつつ、僕は眠っているシールに視線を向ける。

 また口元からは涎が垂れ、何事もなかったかのように心地よさそうに熟睡している。

 さっきのシールはいつもと印象が変わって、何だか少しエロかったが……結局僕はいつもの無邪気なシールがいい。


 うん、お酒は封印だな。

 そう、心の中で強く誓った。

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