✩女の子たちの水着
「……で、何でプールなの?」
フーリーの意見に賛成し、とりあえずみんなで気分転換することに決まったあと。
僕は、まず真っ先に気になったことを問いかけてみた。
「えっ? そんなの決まってるっしょー、気分転換といえばプール! プールといえば水着! みんなの、それと他の女の子たちの水着も見放題! ね、プールしかないでしょ?」
「それが狙いか」
思わず半眼で突っ込んでしまう。
本来、女の子たちの水着が目当てでプールに行くのは男子な気もするが……フーリーの思考回路はどちらかと言うと男寄りなようだ。
しかも、その中に僕まで含まれていることに複雑な気分である。
「でも、僕は水着ないよ?」
「もちろんわたしも持ってないぞー。この服しかないからなー」
「あ……す、すいません、私も……」
僕とシールは当然だが、ククルも水着はないらしい。
水着がない以上、プールに行って泳ぐことなどできないだろう。
そう思っていたら、フーリーは近くに置いてあったカバンから何かを取り出す。
「だいじょーぶ、だいじょうぶ。ほら、みんなの分ちゃんとあるからっ!」
そう。
取り出したものは、三つの水着だったのである。
ワンピースタイプの水着が二着に、ビキニが一着。
何でそんなもの持ってるんだ……。
「へっへーん、こんなこともあろうかと運んできておいたんだよ。いつか、みんなでプールに行きたいと思ってたからね」
「用意周到すぎて怖い」
ただ、おかげで水着の問題は解決したことになる。
フーリーは僕とククルの前にワンピースタイプの水着を置き、シールの前にビキニを置いた。
わざわざ、僕たちに合いそうなものを選んできてくれたということだろうか。
それはありがたいが、ただ自分が見たいだけだろうから素直に感謝もできない。
「わたしはビキニなのかー?」
「うんっ! おっぱいを揉んだとき、意外とあるなーって思ったから。たぶんシールちゃんはそっちのほうがいいんじゃないかな」
「わ、分かったぞー……」
あのときのことを思い出したのか、少し頬を染めながらも承諾した。
僕は目の前に置かれた水着を広げ、僅かながらも安堵する。
水着の中でも、比較的露出が少なめなやつで本当によかった。
もう服屋のときみたいな、あんなに露出の多い服は着たくないのである。
まあ、水着である以上、それなりに恥ずかしさは伴うけど。
「でも、プールなんてどこにあるの?」
「この街に、大きな屋内プールがあるんだよ。今から行こうよっ!」
ククルは未だに少し浮かない顔をしているものの、小さく頷いて受け入れた。
よかった。
これで、少しは元気を取り戻してくれたらいいのだが。
僕たちは用意を整え、その屋内プールとやらに向かった。
§
徒歩で数十分の距離に、確かにそれはあった。
入口を潜るとすぐに下り階段があり、その階段を下りていくとかなり広い空間に出た。
巨大なプールだ。
もちろん普通のプールだけでなく、流れるプールやウォータースライダーなども設えられている。
カップルと思しき男女や、子供連れの家族、女友達だけだったり、男女複数人の集団など、様々な客で賑わっていた。
僕たちは、ひとまず水着に着替えるため更衣室へ向かう。
当然、女子更衣室へ。
更衣室の中は思ったより人は多くなかったが、それでも数人は着替え中の女性がいた。
僕はできるだけ見ないよう顔を逸らしつつ、急いで持ってきた水着に着替える。
正直ビキニの着方はあんまり分からないが、ワンピースタイプだからそこまで難しくない。
本当にこの水着でよかった……と再び安堵の吐息を漏らしていたら、不意に横から声をかけられた。
「着替え終わったー? お、似合ってるねー、リオンちゃん」
そんな声に振り向くと、ビキニを着たフーリーが笑顔で立っていた。
真ん中にリボンがついているだけの、わりとシンプルなビキニではあるのだが……。
いつもはゆったりとした服を着ていたから分からなかったけど、こうして水着になってみると、その意外な豊満さに少し驚いてしまう。
「ご主人ー、いつもよりもっと可愛いなー、それー」
笑顔で僕のところに歩み寄ってきたシールは、フーリーより少し明るい色をしたビキニを着ていた。
フーリーよりは少し控えめだとは思うが、それでもシールもなかなかに大きい。
僕の今の体は平坦だというのに、同じ女でもここまで差が生じるものなのか。
いや、別に大きくなりたいとは全く思わないし、むしろ男に戻りたいくらいだけど。
「す、すいません遅れました……っ」
慌ててこちらへ駆け寄ってきたのは、僕のより少し明るく清楚な印象を抱くワンピースタイプの水着を着用したククル。
フーリーとシールが色々とアレだったから目のやり場に困っていたところだが、ククルは小柄ということもあり、慎ましやかな体をしていた。
まあ、いくら慎ましやかであっても水着姿であることに変わりはないため、どっちにしろ目のやり場には困るわけだけども。
何はともあれ、僕たちは更衣室から出て。
四人で、プールの水に飛び込んだ。
シールは僕の隣に陣取り、楽しそうに水を掬ったりばしゃばしゃと水を払ったり、かなりはしゃいでいる。
フーリーは笑顔でククルを抱き寄せ、そのククルは恥ずかしそうに赤面していた。
ククルを一人にしてしまうと、また落ち込んでしまうかもしれないと、フーリーなりの気遣いなのかもしれない。
今は、とりあえず。
辛いことも、悲しいことも、悩みも、頭の中から追い出して。
久しぶりの水遊びを、みんなで目一杯楽しんだ。
最初は浮かない顔をしていたククルも、いつしか笑顔を見せるようになり。
やがて、僕たちと一緒に心の底から笑い、楽しんでくれるようになっていた。
当初は僕たちの水着姿を見たいという不純な目的だったのかもしれないけど。
結果的に、フーリーの考えは正しかったのだろう。
何だか、素直に認めるのはちょっと癪だけど。
僕は心の中で、密かに感謝を告げた。




