✩なんて大胆な……
それぞれ二人ずつに別れて様々なコスプレ衣装を物色し、数十分が経った頃。
僕たちは、試着室の前に集まっていた。
フーリーとククルの服が入っているカゴはフーリーが、僕とシールの服が入っているカゴはシールが持っている。
今から、選んだ服の試着タイムというわけである。
ちなみに、僕が着る服はシールがいつの間にか選んでいたらしいのだが、どんな服なのかはまだ知らない。
あまり露出の多い服じゃないことを祈るばかりだ。
「それじゃ、まずは先輩のあたしから行くねー」
フーリーは楽しそうに言い、試着室の中に入る。
コスプレに先輩とかあるのかどうかは知らないけど、最初は嫌だったからむしろありがたい。
「そうだ、一緒に着替えよーよ」
カーテンを閉じて早速着替えるのかと思ったら、こちらを振り向いて手招きしてきた。
僕にではなく、ククルに。
「へっ? わ、私もですかっ?」
「うんうん。お互いの服が何なのかは分かってるわけだし、同時に着替えたほうが、その分早く済むでしょー?」
「じゃ、じゃあ……失礼、します……っ」
「あははー、そんなに固くならなくて大丈夫だよー」
赤面したククルが遠慮がちに試着室に入り、フーリーは笑いながらカーテンを閉じた。
中から衣擦れの音と、二人の会話が聞こえてきて少し恥ずかしくなってくる。
それを誤魔化すように顔を逸らすと、そこにはシールの顔があり、キョトンと訝しそうに笑顔で首を傾げた。
そんな大したことのない仕草ですら、まるで小動物みたいでちょっと可愛い。
「じゃっじゃーん!」
ふと、そんな甲高い叫び声に振り向くと。
カーテンが開け放たれた試着室に、ノリノリなフーリーと恥ずかしそうに顔を赤く染めたククルが立っていた。
ククルが着ているのは、白と黒に彩られたメイド服。
フーリーが着ているのは、三角帽子や大きなリボンなどが特徴的の、魔女服だった。
それぞれの性格などにピッタリで、端的に言えば、どちらもとても似合っていた。
「どっかなー? 可愛い?」
「う、うん、二人とも似合ってるよ」
「はう……あ、ありがとうございます……っ」
何だか、二人の反応が対照的だ。
どちらかと言うと内向的なククルは、ゆでダコみたいに真っ赤な顔で俯き、終始恥ずかしそうにしている。
無理もない。ここまでノリノリで楽しんでしまえるフーリーがすごいのだ。そうに違いない。
二人は再びカーテンを閉じ、元々の服に着替えたのち、試着室から出てきた。
次は僕たちの番か……妙に緊張してきた。
深い溜め息を漏らしながら、試着室に入る――と、カゴを持ったシールも一緒に入ってきた。
「い、一緒に着替えるの……?」
「だめなのかー? ククルとフーリーが同時に着替えてたから、わたしたちもそうなのかと思ったぞー」
「あ、いや……だめじゃない、けど」
シールは後ろ手でカーテンを閉め、カゴの中を漁る。
風呂のときもそうだったが、シールは唯一僕の中身が男であることを知っているのだから、もう少し恥じらいを持ったほうがいいと思う。
まあフーリーに胸を揉まれたりしたときは、それなりに恥じらいがあったような気はするが……せめて、着替えや入浴くらいは別々で……などと考えていてもシールには分かってくれないんだろうな。
僕が相手なら全く気にしないみたいなことを、言っていた気がするし。
再度、深い溜め息を漏らし、僕もカゴの中を見る。
そして、中に入っていた服などを広げてみて、絶句してしまう。
猫耳のカチューシャに、猫の尻尾。
両手に嵌める、猫の肉球がついた大きな手袋。
胸部と股間と臀部を申しわけ程度に隠すだけで、下着と言っても差し支えないレベルで露出度の高い服。
むしろ、これ服って言えるのか……?
「な、何で僕だけ、こんな露出多い服なの……っ!?」
「ご主人に、こういう服を着てほしいと思ったからだぞー。絶対に可愛いことは間違いないからなー」
「いや、だからって、これはさすがに恥ずかしいって!」
「嫌なのかー? せっかく選んだのになー……でも、ご主人が嫌ならしょうがないぞー……」
さすがに着るわけにはいかず、猛抗議する僕。
するとシールは表情を翳らせ、悲しそうに俯く。
よほど楽しみでウキウキして選んだんだろうなということが分かり、別に僕は悪くないはずなのに申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
「う……くう……んああ、分かった。着るよ、着るからっ!」
「ほんとかー!? やっぱりご主人、優しいから好きだぞー」
少し早まった気がしないでもないが、一度言ってしまったからには仕方ない。
小さく深呼吸をし、今の服を脱ぐ。
そして、意を決して着替えを始めた。
「お、おぉ……なんて大胆な……っ」
「はわっ、ななな何ですか、その服っ」
やがて着替えを完了し、試着室のカーテンを開けてみたら。
案の定、フーリーからは上から下まで舐るように眺められ、ククルは赤面して手で両目を覆いつつも人差し指の間からこっちを見ていた。
は、恥ずかしい。顔が熱くなっているのを感じる。
ちなみに、隣に立っているシールはドレスに身を包んでいる。
黒と赤を基調とした、ゴスロリ的なドレスである。
いつも和服だから、逆に洋風のドレスとかも似合うのではないかと思ったのだが、少し印象が変わって可愛かった。
「似合ってるよー、リオンちゃん。もう、その服を私服にしちゃう?」
「絶対やだ!」
「えー? そんなに可愛いのにー、つんつん」
「ちょ、ばっ……お腹を触るなぁっ!」
露出した僕の腹をニヤニヤしながら突かれ、僕の恥ずかしさが臨界点突破。
すぐさまカーテンを閉じ、元の服に着替えた。
シールもフーリーも残念そうに唇を尖らせていたが、さすがにこれ以上は無理だ。
あんなに露出度の高い服なんか、もう絶対に着ない。
二度と着ない。




