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くろねこの冒険~目指せ!異世界一周~  作者: 葉桜丸
第2章 ウェスリー王国あっちこっち
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94話 冒険者パーティー、白銀の刃

ヒルダを苛めてた冒険者達は、つい前月ウェスリー国へ来たばかりの「白銀の刃」という名前のCランクパーティーだという。


ヒルダが「使い魔の首輪」をつけてて害のない魔物だと納得するやいなや、釣り目の娘リデアは顔色を変えてしきりに謝ってきた。

根は悪い子じゃないからって他のメンバーも庇ってたし、ヒルダも許すって言ってたから、あたしも渋々謝り返したわ。ちょっと言い方がきつかったのは自覚あるし。


そして彼らがあんなにも警戒した「首輪がない」という理由。

ヒルダは可愛い赤い首輪をつけてるんだけど、なんと首周りの長くてふわふわの毛に埋まってて彼らからは見えなかったらしい。

盲点だったわ、すぐ傍からだと見えるから考えてもいなかった。首輪の金具に大きめのリボンでも結んで、分かりやすくしておこうかしら。



なんやかやと話をする内に落ち着いた白銀の刃の人達は、ガルムとあたしにそれとなく案内されて、村を歩いていた。

ハンナさんは他の人達と持ち場へ戻っている。

また違うお客さんが村に来るかもしれないし、男衆がほぼ全滅状態だからわりと人手が足りなくて大変らしい。普段通りに生活してる予定だったんだけど、まさか村内の半数近くがお酒で倒れるとは思っていなかったのだ。


あたしは元々持ち場が決まってなくて「わざとらしくないよう村内を歩いてて、道を聞かれたら案内を頼む」という指示が出てたから、だいたい当初の計画通りに動けてほっとしてる。

ガルムははなから計画に入ってなかったから、役割らしいものがない。でもガルムだし、どこにいても違和感ないわよね。

つーか男衆がいないから、この「通行人」の役をやる人が全っ然足りないわ。なんて人気のない村なの、全くもう。



聞けば彼らはこの村の存在を知らなかったけど(こないだ設置したばかりの)看板を森で見かけて、好奇心をくすぐられて半信半疑で来てみたらしい。

ウェスリーに関する知識は本や新聞、人づてに聞いた内容だけらしいけど、けっこういろいろと詳しい事に驚いた。なんと観光ガイドブックとかいうのが出版されてるらしい。


「この国は名所が多いから、今くらいの時期になると新聞で特集組んだりするだろ?俺ら全員、小さい頃からここの王誕祭を見るのが目標だったんだ。でもやっぱウェスリーに行くならあちこち見て回りたいじゃん?だから一年前から頑張って貯金して計画たてて、今回早めに入国したんだよ」

「あんまり間近だと入国審査が混雑して大変だって聞いたの。まぁ、それでもわりと混みあってたけど。それに港から入ったせいか審査がやたら厳しかったわ、他の国と比べると法律も複雑だし、きれいなところだけどちょっと面倒な国ね」


ほうほう、お祭りの時期は外国からの観光客が増えるとは聞いたことあるけど、そんなに。

それに外国の新聞で特集とか組まれるなんてすごいわね。

横を歩いてるガルムも、頭の後ろで両手を組んでぶらぶら歩きながら関心してる。



「ヒルダちゃんは何歳?王誕祭って知ってるかなー」

すっかりヒルダの可愛さに骨抜きになってる弓師のリデアが、先程までとは別人みたいにニコニコしながら話しかけていた。吊り上がってた目も溶けるように垂れ下がってる。

彼女の横を歩いてたヒルダは、少しの間首を傾げて考えこむ。そのとぼけたしぐさがまたリデアの何かを直撃したらしく、彼女の顔はまたさらにふにゃりと崩れた。


「おーたんさい?えっと、たしか甘いものがたくさん食べられるお祭りだよねっ、あたしあれ大好き!」

「そっかー、大好きなのー」

「おねえさんの住んでるとこでは何食べてたの?バリーおじさんが、町ごとに名物があるって言ってたよ」

「んー、おねえさんの町ではね、おーたんさいなかったんだー」

「そうなのー?」


ヒルダが嬉しそうに応えるたび、リデアの顔がどんどん崩れていく。

あ、よだれ……


「……誰だ、こいつは。俺こいつとは付き合い長いけど、こんな緩んだ顔は初めて見た」

「別人だな」

「ヒルダちゃんが可愛いのは分かるけど、ちょーっとあの顔はないわ。女捨ててる」


お仲間達がボソボソ言ってるのに気づいたのか、リデアが一瞬こっちを振り向いて鋭い睨みを飛ばす。

お仲間の三人どころか、あまりの剣幕にあたしとガルムも思わずビクリと固まってしまう。が、その時にはすでに彼女はまたヒルダに顔を向けている。す、すごい、顔が二つにブレて見えた。


「おねえさんはねー、海の向こうからねー、おーたんさいを見に来たんだぁー」

「え、海わたってきたの!?海ってものすごく大っきい水たまりで、滅茶苦茶しょっぱいんでしょ!?いいなー、あたしも海行きたいっ」

「ヒルダちゃんっ可愛い!可愛すぎるぅ、もう食べちゃいたい!」

「お、おねえさん、お口からよだれが……」


辛抱たまらんとばかりに頬を薔薇色に染めてヒルダに抱きつき頬ずりし始めたリデア。唇の端がよだれでキラリと光る。


なんか近寄りがたいな、少し距離を取っておこう。こういうヒトだったんだ…

無言であたしと一緒に一歩離れたガルムは、なんか真顔になってぼやいた。


「すげぇなヒルダ。可愛いは最強だ」

確かに。あたしも同意だわ。



でれでれになってヒルダにしがみついてるリデアを生暖かく見守っていると、剣士のフューリーがフンと強い鼻息を吐いた。

「全く、みっともねぇ。仮にもCランクなんだから情けない姿は晒さないでほしいもんだ、一緒にいる俺らの品位が疑われるぜ」


苦々し気にリデアを睨むフューリー、でもその声は勇ましい内容の割にとても小さくて、本人には聞こえないように言ってるっぽい。彼は、今の彼女に直接文句を言うほどの強さはないようだ。

誰かが小さく吹き出す音がしたのでそっちを見ると、槍を背負った髪の長い女の子、ティアナが口を抑えて笑っていた。


「ふふふっ、妬いてるのね?フューリー」

「んが!?だ、誰が妬くか!」


あっという間に真っ赤になったフューリーがつっかえながら噛みつくけど、まーわかりやすい男ね。

へぇ、彼はリデアが好きなのか。女の子のヒルダにまで嫉妬するなんて、これが男だったら喧嘩になってそう。


あたしは我知らずニヨニヨとした笑みを浮かべてしまっていたらしく、フューリーが赤い顔のままギロリと睨んで……

あら、アルフィスもガルムも皆にやついてるじゃん。

この人、バレバレなのね。肝心のリデアだけはヒルダに夢中になってて気づいてないみたいだけど。



「そういえば、さっきの攻撃は見事だったな」

ローブを着た青年、アルフィスが思い出したようにあたしに顔を向けた。話題を変えようとしたのかな、優しい人だ。

攻撃、ってあれかしら?あたしが魔法の詠唱の邪魔をした体当たり。


「いくら私が非力な後衛職とはいえ、君みたいな華奢な女の子に押し飛ばされるとは思ってもいなかった。でもお陰で何の罪もないヒルダちゃんを攻撃せずにすんだよ、感謝する」

そう言って小さく頭を下げられた。

攻撃してお礼を言われるって変な感じね。


「そうそう!あれは中々の威力だったよな。身体強化の使い方が上手い、全身にかけないで肩周りだけなんて、器用なもんだ」

「どう考えてもキャシーちゃんのが体重軽いのに、完璧にアルフィスの足浮かされてたものね。あれじゃ、いくら詠唱短縮スキル持ってても魔法は使えないわ」


ティアナもうんうんと頷いて、アルフィスの頭から爪先までをじっとりと眺めた。

まるで値踏みするような視線に、アルフィスが戸惑う。対してティアナが顎に指を当て、片方の眉を上げてうーんと唸っている。


「な、なんだ?」

「いや、キャシーちゃんも魔法使いなんでしょ?しかも女の子……魔法以外に自衛手段がある後衛職っていいなーと。アルフィスも今後のために教えてもらったら?」

「…………」


すごく複雑そうな顔になっちゃったアルフィス。


年下の女の子に物を教えてもらうのは抵抗あるだろうけど、確かにあれ便利よ。

身体強化の魔法さえ使えれば、子供だって大人を怯ませるくらいの威力が出せるし。後衛職って敵に近接されると弱いからね。

よし、教えるってほど難しいものじゃないだろうけど、同じ魔法使いとして協力しましょ。


「あたしも人に教えてもらったのよ、魔法使い相手に打ち負けそうだったら、場合によってはこっちのが速い時があるって」


「奥の手だっつっただろ?相手が複数の場合は逆に危険が増すって教えたはずだぜ。今回は相手がまともだったからなんとかなったが」


「あ、そうだったっけ」

口を挟んできたガルムに呆れたようなため息と共に言われ、思い出す。


そうだ、そういやこれガルムに教えてもらったのよね。

魔法の詠唱スピードで負けちゃいそうな時、避けるか邪魔をするかよく考えた上で、相手が一人で至近距離だったらこれが一番だ、って。


えっと、相手側が複数だったら近づくのは逆に無茶苦茶危ない、んだったわね。

そりゃそうか、魔法使いが特攻したってせいぜい一瞬隙が出切るかもってだけで、近接武器でこっちが仕留められておしまいだろうし。魔法使いって体鍛えてる人ほとんどいないもん。


そっかー、じゃあやっぱり魔法使いでも何かしら身を守る物を……防具は身につけといたほうがいいのかな。

剣技は使えなくても、せめて厚めの皮の胸当か手甲でもつけてれば少しは身を守れる。


「うん、やっぱり防具も必要ね。でも重いと動けないし、やっぱり皮製のやつかな?軽めのやつ」

「なんか違うこと考えてないか?」


防具について考えを巡らせていたら、横でまたため息が聞こえた。横を見上げると何故か項垂れてるガルム。

なんか呆れられてる。なんで?

何か言いたげにジト目で見下ろされ、でも理由がわからないのでにらみ返す。


「あのー、ガルムさん」

「呼び捨てでいいぜー」

あたし達の様子を伺ってたらしいアルフィスが、そろりと声をかけてきた。

軽く返事をしたガルムに、彼は頼みたいことがあると切り出した。


やっぱりあの「詠唱妨害アタック」のやり方を教えてほしいらしく、ガルムが得意気に説明していた。

お礼をと言ってたけど、こんな基本の応用に金払ってたらきりがないぞと笑って断ってた。


あたしは前に同じことを教えてもらってたんだけど、気になったのでそれとなく横で聞いてた。

「軽々しく使うと逆に危険」「部分的な身体強化は体の他の部分に負担になるから、筋肉がついてない人にはお薦め出来ない」とか。


アルフィス以外の人達も気になるみたいで、聞き耳たててる。リデアはヒルダを撫でながら、耳だけそっち向けてるわ。


神父様に聞いたことあるけど、今ある技能で満足しないで自分にない新たな知識を求めていくのが、冒険者として巧くやっていくコツなんですって。だから、この人達はきっとこれからもっと成長していけるだろう。


あたしも早く「冒険者」になりたいな。それで、彼らみたいな仲の良いメンバー同士でパーティーを組んで、わくわくするような冒険をするんだ。はぁーいいなぁ。



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