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くろねこの冒険~目指せ!異世界一周~  作者: 葉桜丸
第2章 ウェスリー王国あっちこっち
74/102

74話 モンスターテイマーって?(1)

ちょっと長くなりそうなので、2つに分けて更新させていただきます。

祭の準備をする村の皆を手伝っていたら、ものすごく大きな音が聞こえてきた。

思わず、水の樽を担いだまま駆けつけるとジャックとアルの傍に知らない奴等がいた。思わず警戒したオレをアルが止め、状況を教えてくれたのでやっと安心できた。


知らない奴にジャックが襲われたのを、アルが魔法で助けてくれたらしい。

ジャックが危なかったと聞いて、ぞっとした…彼女が一緒で本当に良かった、頭がいいしジャックの言葉を通訳してくれる、さらに魔法まで使えるなんて。なんの知恵もなく頼りない自分と比べてあまりにも万能すぎて羨ましくなる。

こんなオレがジャックを守っていくためには、出来るなら彼女のようなしっかり者にずっと一緒にいて欲しいものだ。


ジャックを襲ったという鎧の女達は、アルが言うには悪人ではなかったらしい。ヒルダがシスターとバリーを呼んできてくれて、弱りきった彼らのことを教会で保護すると言い出した。

オレに対してもそうだったが、得たいの知れない余所者相手だというのに、この国の人達はとても親切だ。むしろ、優しすぎると思う。

…これがオレの育ってきた場所であったなら、情けをかけて食事と寝床を与えてくれる者などいたかどうか。むしろ、ほぼ確実に身ぐるみをはがれて奴隷にされていたことだろう。

あの国とここ、ウェスリー王国がこんなにも違うのはなぜなんだろう。

まだこちらへ来て日が浅いから分からないけれど、住むのは普通の人間が多く、生活習慣なども変わらないように思える。食べる物も着る物も似たような感じ。なのに、ここまで違う。不思議だ。



そして、今。

教会の奥の一室、暖炉の前で痩せこけた二人の子供がうずくまって眠っている。

「ゴォー、ぴゅるるるる…」

その体の上には、大の字になっていびきをかく小さな黒猫。体の大きさに反して立派ないびきだ。

可愛い。目を閉じていると真っ黒なシルエットにしか見えない。猫も…いや魔物も、人間のようにいびきをかくものなんだな。


亀と遊んで疲れたのか、ジャックはいつものように突然パタリと倒れ眠ってしまったのだ。

自分の頭ほどの大きさの亀の回りをぴょんぴょんと跳ねる可愛らしい姿を思いだし、頬が緩む。

跳ねると言っても1センチ程しか体が浮いていなかったが、それでも跳び跳ねる事が出来るようになったんだな。短い足で這って動いていた頃を思うと感慨深い。


幸せそうな顔で眠るジャックの隣にはアルがちょこんと座り、小さい声で歌を口ずさんでいた。時折その細長い指先を伸ばしてジャックの腹を撫でている。

彼女は本当にジャックが好きなようだ、小さな彼らが仲良く並んでるのを見ると、オレも幸せな気分になる。


じゃれついてくるジャックから助け出された亀はというと、今ではすっかり大人しくなりシスターの膝の上で餌をもらっている。

最初はジャックの腹の上に載せられていたのだが、動いた拍子に転げ落ちたため移動させられた。こいつは足が四本あるわりに、バランスを取るのが苦手らしい。


そしてどうやらこの亀、肉類は食べないようだった。

シスターが持ってきた食べ物の内、興味を示したのは野菜のみ。中でも新鮮で柔らかい葉っぱが好きみたいだ。肉や果物、魚の干物も芋などにも見向きもしない。

動きの遅い亀がのんびり葉をかじるのを見ていると眠くなってくる。アルの優しい歌声と相まって、眺めていると不思議と胸の辺りが暖かくなるようだ。


「うーん、亀系の魔物はだいたい雑食なんだが…こいつホントに葉っぱしか食べないなぁ。それとも小さいから歯がたたないだけ?甲羅の形はシールドタートル?だが色が全然違う。でもさっき魔法を使ってた……ロックタートルにしちゃ足が短すぎるし甲羅も薄い、爪も丸いしなぁ。あー、悪いけどこの図鑑より詳しいのってないか?」

頭をばりばりと掻きつつ困ったように首をかしげるバリー。

「教会にはこれしかありませんが、ライアット様の書斎にならあるかもしれません。でも私、あの部屋に入る勇気が…バリーさん、もし入るのならついでにいくつか探していただきたい本が」

「あーパスパス、俺じゃ腹がひっかかって入れない」

言い終わる前にバリーがシスターに激しく首を振った。

シスターは不満そうに口を尖らせて「そうですか」と呟く。何か探し物があった、のかな。


…しょさい。

しょ、書……あ、ライアットが「自由に読んでいいぞ」と言っていた、本が壁みたいに積み上げられた広い部屋。嗅いだことのないような妙な臭いがして、埃がすごいこともあり一歩も入ったことがない。

あの中に魔物図鑑が。

うん、あの山の中から一冊の本を捜すのは骨が折れそうだな。


今バリーが手に持ってページをめくっている図鑑は本と呼べないくらいに薄く、あちこちほつれボロボロになっていた。

本か。字が読めたらきっと色々な知識が得られるんだろうな。

オレにも読めたらいいなぁ…


好奇心が顔に出ていたのかバリーに手招きされて、恐る恐る近づくと目の前に図鑑を出された。

開いたページの三分の一くらいは亀の絵が描いてあって、残りはびっしりと細かな文字で覆われている。

こ、これは…やっぱり全然わからない。でも絵があるから、亀の魔物について書いてあるのかな。

「お前、文字は?そうか。まーよその国じゃ貴族でもない限りだいたいの奴は読み書きなんざ出来ないもんだよな」

笑いながらわしわしと頭を撫でられた。


オレの隣に腰を降ろすと、膝に載せた図鑑を指で指し示していく。バリーの太く短い指先をじっと見つめ、やや黄ばんだページを目で追う。

「これが"魔物"、んでこれが"歩く"。これと、これが"食べる"。違う文字だが意味は一緒な物もあるんだ。一日ひとつでもいいから単語を覚えるようにすりゃ、なんとなく読むことは出来るようになるぜ。もっとも、俺はそれで二年かかったがな」

「バリーさん、未だに文字を書くのは苦手ですものね。村長が読みづらいって嘆いてましたよ?」

誇らしげに語るバリーだったが、続くシスターの言葉に顔をしかめた。

「教会の子供達にも時間がある時に教えてはいるんですが、人に教えるというのは難しいですね。ライアット様は最近忙しそうで頼めませんし」

「そうだなぁ、俺もそろそろ弟子でもとろうかと思ってるが、やっぱり最初から読み書き計算が出来たほうが仕事は教えやすい。やっぱり自分で教えるのはちょっとなぁー」

うっそりと天上を見上げた後、なんともいえない顔で苦笑するバリー。

教会の子供達が、文字を?大教会でもないのに。


二人が言うには、10年程前から国の方策として国民全体の識字率?というものを高める活動をしているらしい。

その関係で小さな村でも平民への「教育」が推奨されていて、今では子供らに勉強を教える際に必要な本や紙、チョークやペンなどが一定量安く買えるようになったそうだ。

いくつかの条件を満たす場合であれば、無償で提供すらされる。


オレの知る限り本はたいがいものすごく高価で、貴族や商人が読んでいるイメージがあった。

紙自体がそもそも貴重で、さらにそれを製本する技術も制限されているのだから当然だろう。見たことはないが、前いた国では国の許可を持つ製本所がいくつかあり、そこ以外では本を作れないよう厳重に管理されているようだった。

さらに、そこで作られる本は全て国の定める規格に添っているため同じサイズで、ただ厚みだけが異なっている。


でも、この村…いや、この国に入ってからはあちこちでたくさんの「本」を目にしている。それも、大きさや装丁がそれぞれ異なる本を。

賢者であるライアットがたくさん本を持っているのはなんとなく分かるが、教会の子供達が何冊も絵本を持っていたし、食堂で冒険者が分厚い本を読んでいるのも見かけた。雑貨屋にも大小のカラフルな本が並んでいたし、なんだかその扱いも雑だった。

どれも確かに古びてはいたが、オレが今まで暮らしていた国と比べて、あまりにもその数が多い気がする。無許可で作ったにしては堂々と置いてあるな、と思っていたら、まさかこの国でそんな事が行われていたとは。



感激する間もなく怒濤のように国の政策について語りだしたバリーの話についていけず、首を捻り呻いていたら、シスターがオレでも解るように説明してくれた。

平民が文字を読めるようになると、どれだけ便利になるか。王様がどんな国を造ろうとしているのか。

この国の王様は、一部の貴族階級だけが幸福な暮らしをするのではなく、みんなで幸福になりたいと考えているんだそうだ。それこそ、平民も貴族も、普通の人間も獣人やエルフといった亜人も、この国に住む全ての人が。

それは到底実現不可能な夢のような話で、王様も色んな人に反対されて最初は大変な思いをしたらしい。

でも、王様は誰に何を言われても諦めなかった。親である先王に馬鹿者呼ばわりされてさえ、一歩も引かなかったんだそうだ。


金も手間もかかるわりに目に見える成果がすぐに現れない、王の我儘とさえ言われた政策の数々。だが何年も粘り強く取り組み続けた甲斐があって、ここ最近やっとそれらの効果が現れてきて多国からも注目され初めているらしい。

ウェスリーでは、平民の半数以上が貴族のごとき教養とマナーを身につけている、と。


…文字の読み書きに計算、国の歴史や魔法についてなど、他の国であったならごく一部の者しか知識を持たないことを、基本的な部分だけとはいえそのへんの村人が苦もなく説明してのけるのだという。

なんだか、おかしな話である。オレにはちょっと想像がつかないが、確かにバリーもシスターも普通の平民のはずなのにここまでの教養があるのだ。これ以上ない説得力だろう。


「クルル君もその内お勉強会に参加するようになりますから、一緒に頑張りましょうね」

……オレも読み書き、出来るようになるんだろうか。が、頑張ろう。



そんな話をしている間にも、小さな亀はゆったりのんびりと葉を咀嚼している。

動きが遅いのもあるが、一口がとても小さい…食事に時間がかかりそうな生き物だな。

ふと気づくと、シスターとアルが亀をじっと観察していた。

「アルちゃんは森の奥から来たんですよね。タートル種は見たことありますか?」

「キキッ、キーキキッキーキキキ?(ありませんわ、でも亀ということは海の魔物ですの?)」

え、亀って海の生き物なのか?

でもそういえばこの国は海に面している、あの鎧の女達は海を渡ってきたというし、その途中で拾ったんだろうか。

「いいえ、この子は多分陸で暮らす種類ですよ。ね、バリーさん」

「おお、少なくともこの辞典で調べた限り海の魔物じゃない。それしかわからんとも言えるがな。しかしどうするかねぇーこいつ」

片手で頭を抱え、呻くバリー。


視線の先にはのほほんと葉を咀嚼する亀。

こちらの様子を気にするそぶりはなく、シスターに甲羅を撫でられても我関せずといった顔。子供とはいえ魔物なのに警戒心がなさすぎな気がしないでもない。


確かに、このままこの亀を村に置いておく訳には行かないだろう。

物を知らないオレでも知っているが、一部の例外を除き村や町へ魔物を入れることは禁止されている。


普通の生き物と違い、体内に魔石を持つ魔物は獰猛で血を好む習性があり、人間を襲う事が多いからだ。例え調教を施して大人しく人懐こくなった魔物でも、ふとした事で本来の獣性を取り戻してしまう。熟練の調教師が何年かけてしつけても、それは覆らない。

だが、モンスターテイマーが使い魔契約をした場合においてのみ、魔物は大人しく従順になるという。しかしこれも一概には言えず、強い魔物の中には契約を交わした主に牙をむく個体も存在する。

その辺りはよく知らなかったのだが、そういった不測の事態を防ぐために「モンスターテイマーギルド」という世界的な組織がテイマーと使い魔を厳しく管理している、らしい。聞いたことすらなかった、そんな物があるのか。


「ああ、知らないのも無理ない。テイマー自体の数が少ない上にテイマーギルドはでかい街にしかないから。そうだな、本登録は無理でも仮登録なら冒険者ギルドでも受け付けてるから…この近所だったらエスパノの町か?」

仮にもテイマーを目指しているというのにそんなことすら知らず顔を青くしていたら、さらに詳しく教えてくれた。


この冬はもふもふパジャマで寒さを乗り切るぜ!と思って購入しましたが、あれ着ると布がひっかかって寝返りが重くなりますね(笑)

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